7話 "ヒト"の限界値
しばらく談笑しながら歩くと、1つの小屋らしきものが見えてくる。
『あれだよ。あれが私の家。ようこそ!レイ!』
ルカが楽しそうに笑いながら語りかけてくる。
つられて僕も笑ってしまう。
「あれがルカの家か。綺麗だね。」
『え!?…あぁ…い、家ね!そうなの!綺麗なの!アハハ…』
そう言ってルカはまた笑う。
高揚で赤くなった顔を手でパタパタと扇いでいる。僕は懐かしい気分になる。
それから家の中を案内してもらった。1番驚いたのは風呂がなかったことだ。ルカに聞くと、どうやら体の汚れは池や川で流すらしい…。風呂にはしっかりと入りたい派だがまぁ仕方ない。慣れるしかだろう。
『それじゃあレイの部屋はここね!今はもう誰も使ってないから自由に使って!』
「分かった。ありがとうルカ。」
"今はもう誰も使ってない"ということは元は誰かの部屋だったのだろう。ただこれ以上はただの憶測だ。様々なケースを考えるが口には出さない。きっと良い話では無いだろうから。
『じゃあ私は体を洗ってくるから!レイは好きにしてていいからね!それじゃ!』
「あ、うん。いってら…」
僕の声はルカに届かなかった。
(魔法…だろうか?いや詠唱が聞こえなかったということはきっと違うのだろう。ということは…)
「この世界ではこの速さがデフォルトなのか…」
そんなことを呟きながら僕も家を出る。
家を出て少ししたところに複数の的がある場所に辿り着いた。恐らくルカの練習場所なのだろう。ちょうどいいからここで試そう。
僕がするべきことは早急に魔法を理解すること、
そしてエルフの固有能力について考えることだ。
魔法には詠唱が必要なはずだ。ならば何故ルカは気配察知が出来る?
理由は簡単だ。
"あれは魔法ではない"
まぁ簡単な答えだ。ただ問題はここから。
発動方法について。
きっとルカは分かってないのだろう。ならば身体構造が関係してる線が濃厚だろう。僕と違う場所…
「耳か…」
初めて会った時はじっくり見る暇はなかったが、家までの間にそれには気づいていた。エルフは耳が尖っている。きっと耳に答えがある。
…違っていたらいても知らない。あくまで仮説だ。後で確かめる時間はあるしな。
次に魔法について。
魔法に関してはルカに全て聞いた。一般に流出してる魔法は、
「火焔・氷華・雷槍・黒夜」
これ以上にあるらしいのだが、その他の魔法は各国の王に語り継がれていて基本的に秘匿なのだとか。
(的があるんだとりあえず全て試そう。)
時間は迫っている。