5話 エルフとの会話
ルカに連れられ森にある家へと向かう。
その道中に僕らは色々話した。
まず、僕の記憶のこと。
前世のことは一つも話さず、森で目覚めたということにしておいた。…まぁ話したらまた泣かれそうになったのだが。
次にルカのこと。
ルカはエルフらしい。僕のことがバレたのはエルフという種族の特有の気配察知能力とのこと。ヒトは使えないらしい。欲しいな。
その次は魔法のこと。
この世界の魔法についてはかなり曖昧なことが多いらしい。誰が作ったのか、どうやって発動させているのか、それは歴史にないらしい。
分かっているのは、魔法の出し方と出せる回数は個人の器の容量によるということくらいだ。
使い方は簡単。
まず命令を出す。ルカがモンスターを倒すために使ったやつを例にすると"貫け"がこれに該当する。
次にどの魔法を出すかを選択する。これは"雷槍"が該当する。これで終わり。
「つまり今の僕にも使えるってこと?」
『もちろん出来るよ。今やろう!見ててあげるよ!楽しみだし!』
そう言ってルカは距離をとる。ルカが楽しそうだと僕もつい笑ってしまう。まぁ今は集中しよう。なんてったって初めての魔法だ。慢心や油断は命に関わってくるだろう。そして僕は息を吐く。
(木までの距離は5m程度…狙いは枝1本。…集中。)
"命中しろ/雷槍"
そうして僕の初めての魔法が発射された。
…と思ったが何故だか出なかった。
何故だ…?もしかして転生したからか?それとも命令が不適切だったのか?何にしてもこれはまずい。ルカに不審に思われるのは良くない。ここはなにか言い訳を…と僕が思考を巡らせていると…。
『あ〜やっぱりね。はいこれ。』
ルカが自分の持ってた杖を渡してきた。
「え?どういうこと?」
困惑する僕にルカは告げる。
『この世界の魔法使用者にはね。2種類いるの。
そのままで出せる人と私たちみたいに杖による補助がないと出せない人と。』
(なるほど…良かった。つまり僕が悪い訳では無いのか…。安心した。)
『ささっ!これでもう1回打ってみて!』
「うん。」
僕は再度集中する。
"命中しろ/雷槍"
詠唱を終えたその瞬間。
杖から細いカミナリが出現し、狙いの枝に命中した。
『出せた出せた!やったねレイ!おめでとう!』
「あ、うん。そうだね…」
僕は気を引き締める。僕はまだ喜ばない。
この程度の成功は何度も見たのだから。