4話 出会い
ー歩いて数分が経った頃ー
「飲める水探して歩いてただけなんだけどなぁ…」
距離は多少あるが、目の前にはクマともライオンとも言える、そんなモンスターが池に佇んでいる。
(こちらに気づいている…いや判断できないな。距離はある…が逃げられないだろう。戦うしかない。一か八か魔法を使ってみるか?いやダメだ。出し方も分からないのに出せるわけがない。ということは…)
「不意打ちしかないか…」
そんな時だった。
『貫け/雷槍』
「え?」
見えなかった。ただ眼前のモンスターが貫かれているのだけは確認できた。
(あぁ…あれが魔法か。)
不思議と冷静で居られたのは耐性ができていたからだろう。昨日まで色々あったし。ただ新たな問題が増えた。
"あの人が敵か否か"
敵だと非常にまずい。先程の魔法が見えなかったのだ。勝利はないだろう。
(まぁ魔法の存在が分かっただけでもかなりの収穫だな。)
そう自分を納得させ、
「逃げるか…」
そう呟いた。その時だ。
『…!』
なんとそいつはこちらに気づいた様子で杖を構えたのだ。
『誰だ!返答がなければ打つ!!』
(…気づかれた?何故?気配…いや耳か?何にしろもうこちらに選択権はないな。)
「あ、え、えーと…すみません。敵意はありません。あのモンスターを観察していただけです。」
『…』
「あの…なにか返答をくれると…」
『あ、あぁ…すまない。ここにヒトがいるのが珍しくてな。つい警戒してしまった。私は"ルカ"だ。この辺りで狩りをしている。君の名前は?』
「あ〜…僕の名前は…」
…名前、か。あまり教えたくないのだが…
「レイです。えと…実は記憶がなくて…ここら辺を彷徨っていたんです。」
よし、設定としては在り来りだが、これなら敵意がないことを示せただろう。我ながら良い作戦だ。そう自分を褒めていると、急にルカが慌てはじめた。
『すまない!そ、それは悪いことをした!そ、そうだ!食料はあるか!?飲水は大丈夫か!?寝床はあるのか!?』
「えーと…」
(あ〜…やらかしたっぽい)
それからルカが慌てまくって泣き始めて大変だったが、近くにあるルカの家で1泊することで手打ちにした。
(うん。今度からこの設定は禁止だ。)
僕はそう固く誓った。