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第一話:魔王誕生

西暦2010年。日本国で、ある計画が実行されようとしていた。


俺の名前は神武じんむ空真あくま。20歳になったところ。しかし、バイトもせず、大学にも通っていない。しかし、ニートではない。かと言って、フリーターでもない。中途半端なのだ。俺は今、人探しをしている。俺の計画を手伝ってくれる人間を…。

 

俺は兵庫県で生まれ育った。一般的な一軒家で両親と3人で幸せに暮らしていた。しかし、幸せというものは長く続かない。


俺が15歳のある日、父親の会社が倒産し、路頭に迷うことになった。それでも両親は、必死に頑張っていた…ように見えた。しかし、見えていただけなのだ。実際、両親は様々なところからお金を借り、それをギャンブルに注ぎ込んでいた。そうなると、結果は見えてくる。


両親は、俺を置き去りにして逃げた。俺は純粋だったため、いつまでも親の帰りを待った。しかし、2日、3日と過ぎていくうちに、気付いた。俺は捨てられたのだと。

俺は、親戚もいなかったので、ある所に行った。そこは施設。親のいない子ばかりが生活しているところ。施設の人間は優しく迎え入れてくれた。そして俺は、何の抵抗もなく、受け入れた。実際俺に帰るところは無いのだから。


そこから、俺の第二の人生がスタートした。しかし、そこでの生活は酷いものだった。施設の仲間に虐められた。その原因は、暗い雰囲気と『あくま』という名前らしい。虐めた奴が言っていた。あくま=悪魔と結びつけたのだろう。なんて幼稚なんだ。施設の人は、見て見ぬ振りをする。なぜ助けてくれない?といつも思っていた。そこから、俺は純粋ではなくなった。しかし、純粋でなくなることで力を手に入れた。元々、不思議な力は持っていた。物を念で動かしたり、予知夢を見たり。魔的な能力へと変化したといた方がしっくりくるかもしれない。内なる力が開花したのだろう。だが、あまりにも力が強すぎたため、コントロールがうまくいかない。いじめにきた生徒を能力で壁に叩きつけたりした。


もちろん初めは自分の意志だが、一旦力を解放してしまうと抑えることができなかった。そんな俺の能力を怖がり、誰も近づくことはしなかった。施設側も追い出したいのだが、殺されるかもしれないという危惧があるのか、不干渉でいる。まぁ1ヶ月も経つ頃には能力を自分のものとしていたが…。

初めは俺を頂点にした組織(いじめの集団)が作られたが、俺が興味がないことを知ると1人また1人と減っていき、最終的には俺は孤独になっていた。


施設に住んで、半年が過ぎたある日、1人の少女が入ってきた。名前は影宮かげみや真澄ますみ。年は確か、俺より2つ年下だったと思う。つまり13歳か?髪は透き通るような黒で、前髪が眉毛の上辺りで揃っている。肌は白色で、陶器のようだ。口は一文字に結ばれ、話せないのかと思わせる。しかし、目だけは力強く、そして美しかった。


やはり、この子も虐めにあった。虐めが、通過儀礼のように思えてきた。しかし、俺は無関心でいつもいじめられる真澄を見ていた。真澄はどれほどいじめられても力強い目だけは変わらなかった。俺は段々真澄に惹かれるようになった。なぜかは分からない。自分と重ねてしまったのだろうか?俺は、いじめられている真澄を助けることにした。力は使わずに。なぜ、力を使わないのかって?あんな虫けらに神聖な力を使うのはもったいない。それに自分のものにした力を使う相手はもう決めてある。


中庭のベンチに腰掛、俺は自分の掌を見つめる。


「有難う御座いました」


「いや、別に。俺も虐められたから良く分かる。もう虐められないだろう」


「………」


真澄はジッと俺を見つめる。綺麗な瞳だと思ってしまう。


「どうした?俺何か変なことを言ったか?」


「いえ…」


「何かあるならはっきり言え」


「あなた様は、強大なお力をお持ちですね?」


「……いつ気付いた?」


「初めから」


「…そうか。俺の力のことがわかるということはお前も何か能力を?」


「えぇ、あなた様程では御座いませんが。刀さえあれば、一瞬で切り倒すことが出来ます。これが私の刀です」


真澄は真っ赤な鞘の刀を見せた。この国では帯刀が許可されている。街を歩く人のほとんどが帯刀している。変な社会だと思うか?総理大臣が大の刀好きで帯刀してもいいという法律を作ってしまったのだ。そういうわけで、刀は必須アイテムになった。子供のお小遣いでも買えるものもある。だが、真澄の刀はかなり値が張りそうだ。


「へぇ〜。どうして施設に入るほどの者が、そんな高そうな刀を?」


「これは父の形見です。父は会社の社長だったのですが、連帯保証人になってしまい一文無しなってしまいました。それで父は自殺し、もともと母親のいない家庭でしたので、この施設に来ました。今思えば、あなた様に会うためにここに来たような気がします」


俺はじっと真澄の話に耳を傾けていた。春のにおいを告げる風が優しく頬をなでる。


「もう春か…。なぁ、一緒にこの日本を潰さないか?」


これはずっと俺の心の奥底にあったことだ。いつやろうかとずっと考えていたが、今しかないと思う。


「私はあなた様の下僕となりましょう。そして、あなた様の夢を実現できるよう、命を懸けて御手伝いさせて頂きます」


真澄は予期してたかのように即答した。


「いいいだろう、日本の潰れる様を一番近くで見せてやる」


「はい!」


真澄はこの施設に来て初めて笑った。


「これから、俺のことは魔王様と呼べ。名前が『あくま』だからな」


「仰せのままに」


こうして、運命の歯車がゆっくりと回転しだした。


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