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  作者: Yonohitomi
一章
1/150

1.痛みの理由



 ——熱い。


 焼けつくような痛みが、容赦なく全身を貫く。

 意識が霞み、朦朧としたまま何度も地に叩きつけられる。体が砕け、血が広がり、骨が裂ける音が響いた。


 これは罰なのか、それとも試練なのか——


 何度目の拷問だろう。

 数えることすら無意味になった頃には、痛みと再生を繰り返すことにすら慣れつつあった。


 それでも、終わりは来ない。


 目の前に、巨大な鬼が立っている。


 ——暗く、深い憎悪を纏って。


 その鬼は冷たく蓮次を見下ろしていた。顔が見えない。ただそこにいる。

 圧倒的な威圧感とともに、じわりと手を伸ばしてくる。


 再び、胸の奥が灼かれるような痛みが走った。


「ッ……!!」


 呻きが喉でせき止められ、息すら奪われる。

 毎度見る、意味の分からない夢。

 

 ただひとつ、確信を持てることは――


「助けに……来ないでください……」


 父上がここに来ることだけは、絶対に望まない。

これは、自分だけの戦い。ひとりで耐え抜かなければならない。


 何度も何度も意識が砕け散りそうになる中、蓮次は暗闇の中で、必死にそれを自分に言い聞かせた。


 ——グシャッ!


 次の瞬間、視界が真っ赤に染まり、すべてが闇に落ちた。



___




 目が覚めた。


「はぁっ……はぁっ……」


 天井を見つめ、肩で息をする。


 重たい空気がまだ体にまとわりついていた。汗が額から滴り落ちるのを感じる。

 胸の奥には、今も拷問の痛みの余韻がくすぶっていた。


 ——夢、か。


 小窓から外を見ると、朝の光が庭の緑を照らしていた。眩しすぎるほどに。


 剣が交わる音が微かに届いてくる。

 兄の低く鋭い息遣い。

 弟の焦ったような動き。

 そして、父の重みのある声。


 自分だけが、この薄暗い影の中にいる。

 窓の外は、別世界のように輝いているのに。


 ふと、自分の手を見た。

 指先はどこか冷たく、血の気が引いている。


 蓮次は静かに目を伏せる。


 ——自分には、この暗がりがお似合いだ。





これは

  まだ何も知らぬ少年が


やがて逃れられぬ運命へと

  引き込まれていく物語——


この夢は

  静かに忍び寄る運命の影だった


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