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  作者: Yonohitomi
一章
1/182

0.鬼


「なぜ助けない! お前の子だろ!」


 赤髪の鬼が叫んだ。声が山を揺らした。

 だが、鬼の親は動かない。


 遠くの篝火の中に、息子がいる。鎖で繋がれ、人間どもに囲まれている。

死ぬ気があれば、あの子はとっくに死んでいる。


「……あれは、自ら囚われている」


「何が言いたい」


「助けるな、ということだ」


 赤髪が殴りかかった。青髪がそれを羽交い締めにして、泣いていた。

誰よりも走り出したいのは、青髪も同じはずだった。


 騒がしさの中で、親はただ遠くを見ている。


 人を信じると言った馬鹿な息子。

 話せば分かり合えると言った、鬼の中の異端。


 あの子は鬼でありながら、人を愛したのだ。


 だからこそ、最強に育てた。

 二度と誰かに踏みにじられぬよう。

 だからこそ、助けない。


 その夜、ひとつだけ問いかけた。


 ――お前は、親を許したのか、と。


 



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