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0.鬼
「なぜ助けない! お前の子だろ!」
赤髪の鬼が叫んだ。声が山を揺らした。
だが、鬼の親は動かない。
遠くの篝火の中に、息子がいる。鎖で繋がれ、人間どもに囲まれている。
死ぬ気があれば、あの子はとっくに死んでいる。
「……あれは、自ら囚われている」
「何が言いたい」
「助けるな、ということだ」
赤髪が殴りかかった。青髪がそれを羽交い締めにして、泣いていた。
誰よりも走り出したいのは、青髪も同じはずだった。
騒がしさの中で、親はただ遠くを見ている。
人を信じると言った馬鹿な息子。
話せば分かり合えると言った、鬼の中の異端。
あの子は鬼でありながら、人を愛したのだ。
だからこそ、最強に育てた。
二度と誰かに踏みにじられぬよう。
だからこそ、助けない。
その夜、ひとつだけ問いかけた。
――お前は、親を許したのか、と。




