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第九話 二度目の死

〜前回のあらすじ〜


メリッサが消えた

「め、メリッサがいない..。まさか落ちたんじゃ..」


「うむ..。残念じゃが、その可能性は十二分にある。

ここは高度も高く、時折突風が発生するからな......」


「....。だ、だったら何であいつを外に寝かせておいたんだよ!!

それを知っていたならどうしてもっと安全な場所に移動させなかった!!

お前ここの司書だろ!!どうにかしろよ!!!」


あれーーどうして俺はこんなに感情的になっているんだ..?

サーニャは、、彼女は別に、何も悪くはないだろう..。


「すまない。落ちてしまえばどうにもならない..。

王立図書館は年に数度、そのような落下事故が起きるというのを、

もっと早く説明しておくべきじゃった....」


「くっ....。っふざけんな!!」




あいつが死んだら..。俺はもう、この世界で何をすればいい?

魔王も魔女も、みんな死んで、最後に被害を喰らったメリッサも死んでしまえば..。

俺は、、、、


そうだーー


俺はメリッサに、過去の<人間>を重ねて、常に消極的な態度を取っていた。

でも、彼女がいない今、俺はこの世界で生きる意味すら失うことになった。


死ぬ時に後悔する事は何もなかったのに..、死な”せて”後悔するんだな....。


「つ、ツルギ殿..」


「サーニャ..。ひとまず下に降りよう..。彼女の遺体をいつまでも放置

しておくわけにはいかないだろう......」


「だ、だが今は心を落ち着かせて..」


「その必要はないよ。もう落ち着いたから」


ー嘘だ。俺はサーニャに、虚勢をはった。


本当はひたすらに苦しくて、吐きそうなのを必死に抑え込んでいる。

彼女をおぶって登った階段を今は、眩暈がし、足元がふらつくのを

感じながら、一歩一歩下っている。こういう時不思議なもので、

身体機能は明らかな異常を訴えているのに、五感だけが妙に冴え渡っていた。


あまりの負荷で頭の中が真っ白になっているからだろうか?

そんな自分を、頭上あたりで客観視しているもう一人の自分の存在をひしひしと

感じる。後ろを歩くサーニャが、俺に何か話しかけている声はするが、

ただの音声記号を処理する余裕は今の俺にはなかった。


メリッサは生きている、生きている、生きている生きている生きている


彼女は死んでない死んでない死んでないーー


「ツルギ殿..」


「うるさい!!黙れよ!!!!」


「も、もうすぐ下に着く..。ほ、本当に行くのか..」


「あいつは死んでないきっとそうに決まっている!!だから死んだ前提で

話を進めるんじゃねぇよ!!!!」


そうだそうだ、、そうだ..。あそこの、彼女が寝ていた側の木の外縁に周り

こんだら、、きっと、少し血を流しただけのメリッサが、気怠げな顔して

出てくるんだ。いつもみたいに暴言吐きながらーーーー



「つ、ツルギ....」


「....。め、メリッサ....」


「私、どうなって、、、、あれ..?なんか背中が少し痛い..」


「あぁ..今、回復魔法かけるから!!」


「はぁ..。スッキリした!!ありがとうツルギ..」


「そういやメリッサ..?どうしてお婆ちゃんになっていな、、」


「そんなの今はどうでも良いのよ。状況を端的に述べなさい」


「はは!!そうだった!!お前めっちゃ高いとこから落ちたんだぜ!!

それで無事とか、、やっぱお前タフだわ..」


「う〜ん?もしかして私が死んじゃうと思ってた?ザーンねん!

私はそう簡単には死なないから、もし<呪い>が解けなくても、

あんたが死ぬまで私に能力をかけ続けていれば問題ないじゃない!

一生こき使ってやるから覚悟してよね!!」


「....。」


「ちょっとどうして泣いてんの?キモイからやめて....」


「うん、、うん!!俺....。俺!!君の事を2回も殺そうとしたんだ!!

俺は昔..、話すと長くなるからしないけど、、君は俺が前の世界にいたときの、

俺がこの世界で一番嫌いな奴とそっくりだったから....」


「は?要するに私のこと、嫌いなの??まぁ別に良いけど..」


「違う!!君は、、その人とは、、全然違ったんだ....。

むしろ、、俺は君の事が、、メリッサの事が、、、、」



「なに....?」
































「メリッサの事が、、、、、」


ー好きじゃなくもない。そして、嫌いじゃない。



















「メリッサ..。今からやって意味あるかどうか分かんねぇけど、、

一時的なら<呪い>を解ける方法がいくつかありそうなんだ!!!

また上に戻って本集めてくるからさ!ここで待っていてよ!!」


「ツルギ殿..」


「あぁ!紹介忘れてたわ!!こちらにいるお方は王立図書館3階司書の

サーニャさん!俺たちには読めない文字でも彼女なら読めるんだぜ!

それで本の内容も理解できるんだ!凄いだろ!!!!」


「ツルギ!!!!」


「うるさいうるさいうるさい!!俺の回復能力で、バラバラだった彼女の肉体は

全部元通りになった!歳だってちゃんと若返っている!!!!メリッサは

死んでない!!!!」


「でも!!心臓が止まって..。それに意識も....」


「そ、そんなはずはないんだ!!」


「ツルギ殿..。ワシが今から話す事、落ち着いて聞いてはくれまいか..。

彼女..、メリッサ殿は、、落ちる前から既に死んでいた可能性が高い....」


「は....??」


「あの時、本の中の<呪い>が、メリッサ殿に集まった時じゃ..。

ワシが見た時、、彼女の身体からは既に、<呪い>は消え掛かっていたが、

その中のうちのいくつかは、もう既に効果が発動されていたのじゃ..」


「おい..何言ってんだ..??」


「つまり、お前の回復能力は万能ではないという事じゃ。複数の<呪い>

を瞬時に無効化する事などは出来んし、高度な<呪い>の解除も発動中に限る。

つまり、メリッサは、<呪い>の効果で死んだのであって、大樹から落ちて死んだ

わけではない。というのも可能性の一つではある..」



ーーーーーーーーーーあ....。










ーつまり、、俺のせい、、、?

俺の不出来な能力と、魔女の<呪い>がかかった彼女を安易に書庫に立ち入らせた俺のー


「こ、これはあくまで可能性の話じゃ!!あまり真に受けすぎるな!!!」


俺は、、、、、、俺は、、、ついに殺してしまった!!!!


三度目の正直って奴か....!!メリッサを二度殺そうとし、そして今回、、

俺は明確な殺意を持っていない、、にも関わらずメリッサは死んだ!!


死んだ!???メリッサは死んだのか!?息もしていない!身体が冷たい!!


「あ、、、、、、、あああああああァァァァァアアアアアァァあ!!!!!!!!!!」


死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ俺のせいで俺のせいで死んだ死んだ死んだ


俺のせいで!!!!!



「な、何するんじゃ!!」


俺は大樹に頭を何度も打ちつけた。


「あははははははは!!!!そうだ!!仮に木から落っこちて死んだとしても、

鎧を着ていればそれが緩衝材になって助かったかもしれない!!それをおぶって

行きやすいように脱がせたのも俺だ!!!全部俺のせいだ!!あはははははははは!!」


死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!


この世界で、、俺はまた死んだ!!」」」


「落ち着くのじゃ!!」


「うわぁああああああっああ!!メリッサ!!メリッサ!!ごめん!!ごめん!!

俺を殴ってくれ、、蹴ってくれ!!殺してくれても構わない!!!!

だからいつまで目を閉じて寝ているんだよ!!誰でも良いから俺を殺せ!!!」





















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