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第八話 消えたヒロイン

「あの..。メリッサはやっぱここに放置って感じで良いですかね..」


「そうじゃな。彼女が書庫に入れば、また<呪い>が反応してしまう。

本に記された<呪い>の流出を封印するための結界も、再び貼り直さなけれ

ばならぬからな」


「..ですよね」



「今度はモヤもないですね。さっきまでの陰湿な空気が嘘みたいだ..」


「当たり前!うーー!!やっぱりまだ信じられない。

視力が回復した事で、本に書かれた文字が前みたいにスラスラ読めるわ!!

本当に、本当にありがとう!!」


「....。そ、それは何より....」


メガネっ娘の彼女も良かったが、俺は今の裸眼状態の彼女の方が好きだ。

物がはっきり見えるようになったのが嬉しいのか、以前にも増して感情

表現が豊かになっているとことか..。何より、誰かに『ありがとう』と、

そう一言言ってもらえるのが嬉しかった。


「えっと、、<老化の呪い>は、、ここら辺かな〜〜」


「それにしても<呪い>って随分沢山あるんですね..」


「そう。<呪い>は魔女が扱うような高度な術式が編み込まれたものや、

一般人でも扱えるような簡易的なものまでかなり裾野が広いのよ」


「へー..。藁人形に釘打ちつける〜みたいなノリなんですかね?」


「藁人形?とかは分かんないけど、とにかく沢山あるんだ....。

無論発動する効果もマチマチなのだけど、悪いものばかりとは限らない」


「え?悪いものじゃない<呪い>とかあんの?」


「それはそう。有名どこだとやはり、<ボイスチェンジの呪い>

男性は女性の声に、女性は男性の声になる<呪い>なんだけど、持続時間は一日

だけだし、ガマガエルみたいな男声でも普通にソプラノを出せたり、

金切り声の女性でも渋い声を出せたりするから、意外に人気あるんだー」


ー<呪い>に人気とかあんだ..。


「うん!なるほど!!<老化の呪い>に関して記された本は計4冊。

魔女の<呪い>だし、発動方法は記載されてない....か....。

書いてあるのはやっぱり、<呪い>の解き方じゃな..」


「....。具体的に、どんなのがあります?」


「んと、、、、あれ?何だろうこの挿絵。裸の男女が何かしている??

白黒のイラストのせいで良く分からない..」


「あ....。出来ればそれじゃない奴でお願いします....」


「うーむ..。と言っても完全に<呪い>を解くにはこれしかないっぽいのだが..」


「....」


「あ!!!!」


その時だった。サーニャの顔はみるみる紅潮していき、気づけば肩を小刻みに

震わせながら、嘆息している。


「どうしました?」


「い、いけない..。これはダメな奴かもしれない..」


「ん?どれどれーーーー」


「なんだ。ただ男女がキスしてる写真じゃないですか?」


「だ、ダメだ!こんな本!!!!」


”メラ・ラスティング”


サーニャがそう詠唱すると、彼女の手から落ち、自由落下を始めたその本は、

中心部から波状に炎の輪を広げていき、とうとう燃え尽き無くなってしまった。


「な、なんて事を!!」


「こういうのは、まだ見ちゃいけない!!

最低でも200歳は超えないと....」


「へ???」


エルフの世界にもR18とかの概念は存在するのだろうか?

でも、さすがエルフ..。200歳なんて並の人間ならとうに死んでいる。

ん?つまり俺もエルフに生まれ変われば、

後190年くらいは合法童貞でいられるのか?

人間は30過ぎると魔法使いにジョブチェンジだしな..。


「とにかく!こういうのはまだ君みたいな子供が読んではいけません!」


「ははっ!とか言ってるサーニャさんが一番照れてるじゃないですか。

で?本には何て書いてあったんです?」


「....。<呪い>を完全に消し去る手段以外にも、一時的な解呪方法はいくつか

あってな..。あんなのがいきなり出てきたからびっくりして燃やしてしまったが、

あれには、<呪い>を1日解くための方法が載っていたわ..」


「ふーん..。どういう方法??」


まぁ..。さっきのイラストで想像をつくけど。

どうせキスだ。うん..、ただのキスだ....。唇と唇を重ね合わせるだけの..


接吻キス..。それも、互いの体液を交換しないといけないのじゃ..」


「え????」


浅い方じゃなくて、深い方かよ....。


「あの..。その、体液交換はどうしてもしなくちゃいけないんですかね..」


「別に、無理にしなくても構わないとは書いておったわ。ただし唇同士の接触は

一時間、間接キスは30分しか<呪い>は解けないけどな」


「へぇ..。随分と都合が良いシステムなんですね。

完全に解呪するのは無理でも、一時的にそう出来るのなら、俺としても

これ以上なく有難い話ですし」


「な、何言っておるのじゃ!!

ま、まさかあの娘とキスしようとか考えているんじゃないだろうな!?」


「ま、まぁ..。間接キスくらいだったら別に....」


「だ、ダメだ!!そ、そういうのは好きな人以外にはしちゃダメ!!

だって、あの娘とツルギ殿はただの知り合いだろ!!」


ー「そ..」

「そうかも..。ですね」


「あ!俺外にいるメリッサの様子を見てくるんで、引き続き解読お願いします!!」


「わ、分かったぞ!」


落ち着け落ち着け落ち着けーー


俺の心臓!!さっきから

ドクドクうるさいし苦しいし締め付けられるような感じがするー


メリッサはただの知り合い。


あれを好きになるわけがない!!


好きになるわけがない!!


「メリーーー」











「ツルギ殿?中々戻ってこぬがどうしたのじゃ?」





「サーニャ......」
























「メリッサが、、、、」











「消えた」










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