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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第四十二話 裏切り

「あはははははは!!」



ー「可哀想に..。精神が壊れてしまったのね..。

貴方はただでさえ人よりも脆く壊れやすいのに、そこまでいったらもう戻れないでしょ?」



「あ、あはは..。あははは..」


「私の声も聞こえていないのね..。ところで、サーニャ。

いつまで瓦礫に埋もれているの?ここはもう焼失する。

二人を始末して、早く離れましょう」


「........」



 サーニャは瓦礫の直撃により、重傷を負っている。


 右肩鎖骨、肩甲骨完全骨折ー及び上腕骨複雑骨折

上腕三頭筋、二頭筋に重度の打撲、瓦礫の破片によって出来た擦過傷多数ー


 左眼球破裂、歯(上顎左から2,3,4,5右1,3下顎左1,2,6右3,5)の亀裂及び破損


 

 しかし、彼女は歩を進めた。彼女にとって、魔女の命令は絶対であるからーー



「さぁ..。貴方の手で、ツルギとスタンリューマにトドメをさしなさい..」


「........」


 サーニャの手には、メリッサから手渡された刀が握られている。

今、自分の目の前にいるつるぎのうなじを目掛けてそれを2,3度打ち付ければ、

たとえ片腕であっても彼の首を切断できる腕力が、今の彼女にはあった。


ーそして、首を切断すれば、後は魔法で頭部を灰にしてしまう。

そうすれば、もう回復は出来ない。


 剣は抵抗していない。スタンリューマも瀕死ーー

気化の呪いは、呪い発動後20分で、対象の肉体は完全に消滅するのだーー

だから、殺せ。魔女の、私の崇拝する魔女の命令にーー



 サーニャがこれほどまでに魔女を畏怖し、敬うのには理由があった。

それは、サーニャが孤児になり、キューラの家に預けられた時だった。


 キューラの家の本棚は、数々の書物で埋め尽くされており、留守をしている

最中は、それらを片っ端から読み漁った。小説、随筆、論説、詩、古典文学ーー

しかしその中でも最も彼女の気を引き、知的好奇心を刺激したのは、


 禁忌とされる呪いが記された、魔導書ーー


 かつて天変地異に甚大な被害をもたらしたとされる魔女の生み出した呪いー

その術式が記された、いわくつきの書物の数々ー

現代戦闘における源流ともいえる、美しい論理の数々に、彼女は魅了された。

こんなに美しいものを作った人に、いつかあってみたい


 憧憬は、いつしか崇拝へと変わったーー

人間に抑圧され、混沌とした日々を送っていた私に、一筋の光を差してくれた。

夢中になるものをくれた、憧れの人。魔女は悪いと、世間では言われている。

でも、私は彼女に救われた。


 彼女のおかげで私はーー


 人類を大量殺戮するための術が身につけられそうだーーー



「サーニャ。早く殺しなさい?何をしているの?」


 そうだ。何故ボーッとしてるんだろう私は?

痛みにはもう慣れてきた、というより、右腕の感覚は無いけれど、

それでも、私はまだ、人殺しをする余裕くらいはある..。


 いや、でも私が手を下す必要はあるのかな?

放置しても、もうこのツリーハウスは燃えてなくなる。

ふふっ..。なんだ..。私の手で、ツルギを殺める必要無いじゃんか..。


 それにスタンリューマだってそろそろ死ぬし..。後どのくらいかしら?


 気になったので、私は左手を使って、スカートの内ポケットを探り、

その中から丸い懐中時計を取り出した。


 確か、スタンリューマに呪いがかかった時、針は真上をさしていた..。

でも今は、もう既に5分ほど経過している。


ーーにしても..。よく無事だったよねこの懐中時計..。

メリッサの攻撃で、ガラスは溶けて歪曲してしまっているけれど....。


「サーニャ..。何をしている?」


「あ..。ま、魔女様....。ここはもう燃えてなくなります!だ、だからわざわざ

直接手を下す必要は....」


 歯が欠けていて、そこから空気が漏れ出るせいで、上手く話せず、

舌足らずのような口調になってしまった。


ーけど


「サーニャ。なぜ、そんな勿体無い事をするの??」


「え....?」


「だって、今貴方の目の前には、もう廃人になった人間の雄がいて、貴方の手には

凶器が握られている。もう分かるでしょ?たった一振りで全て終わりなのよ?

人間は憎くないの?殺さなくていいの?第一、ここで殺さないなんて、死んでいった貴方の

同胞への無念は、いつ晴らされると言うの?」


ーそ、そうだ..。なんで私は殺さないで放置しようとしたんだろう..。


 いくら御託を並べたとて、彼は所詮、一塊の人間に過ぎないーー


            


                  私は、、





 思い返してみれば、私の人生、自分で決めた事なんて一度もなかった。


 幼い時、私がラマーヌ人の兵士の言に従い、お母様を死に追いやった。


 その後、キューラの家に引き取られてもそう。私は、彼女の言いなりだった。


 エルフの森に入っても、私の深層心理は、ずっとスタンリューマに操られていた。


 そして今でも、私は魔女の言葉に従っている。



 だから私は、これからもずっと、誰かの言いなりになって....。

















「嫌よ..」



 そんな人生でーー



「何を言ってるの、サーニャ?これは私が命令したのではない。貴方の意志ーー」



「嫌、嫌、嫌、全部、もう沢山!!私は今まで、いつも誰かの言いなりになってきて、

自分で物事を決めてこなかった。だから、私はまんまと騙されて、大切な家族、

そして心、、最後には、自分自身さえも失った!!そんな私から、あんたはまた、

ここにいる、私の初めて出来た大切な..。大切な、友達さえも奪うと言うの??」



「....」



「ふざけないでよ!私はもう、貴方の言いなりにはならない!!ツルギは私が守る。

だからーー!魔女..。私はあんたを殺す!!」



「そう....?でも、貴方一人では無理でしょ?

それも、役立たずな人間一人を守りながらなんて..」



「くっ........」



























「一人じゃないよ」



「つ、ツルギ..。え?どうして..。君はさっきまで、、」



「あぁ..。あれ全部演技だよ..。大丈夫..。俺は平気だから....」



 嘘だーーツルギは嘘をついている。

彼と距離の近い私だから分かるけど、彼の唇、そして今握った手は、小刻みに震えている。

きっと、、スタンリューマが死んでしまうのがーー



「ツルギ..。ごめんなさい....。私、貴方の大切な人の命をーー」


「....。謝んなら、俺じゃなくてスタンリューマにしろ..。それに、

今感情が昂るのはあまり良くないと思うぜ..。

魔女様はそういう心の隙をつくの、すげーうまそーだからな..」



「でも....」



「サーニャ。君はとりあえず何でも良いから、スタンリューマの治療をしてやってくれ。

彼女は後何分持ちそうだ?」


「じ、、15分....」


「了解....。俺は今から、15分で魔女を倒せば良いんだな..」


「そ、そんなの無茶だよ!」


「大丈夫..。だって、ウ○トラマンの5倍はあんだぜ..」


「え..。ウ○トラマン??」


「そう..。赤と銀色の衣装を身に纏った背の高いおっさんだよ」


「ふ、不審者じゃないか!?」


「まぁな..。あんなのが出て街を破壊するたびに生じる尋常じゃない被害総額は、

ウ○トラマンが払っているのか?はたまた国民の血税によって賄われているのか?

なんて妄想したもんだぜ。でもさ、あれは全部セットなのに対し、これは現実だ..。

多分、相当な被害が見込まれるから、、請求は全部俺じゃなくて、今から俺が

殺す魔女につけとけよ!懸賞金と生命保険料でまかなわせてやる!!」


「お、おぉ..」


「後さ..」


「な、なに..?」


「ありがとう。最後に、俺の事を信じてくれてーー

....あんたがした事は許せないけど、それでもさ、憎んじゃいないよ..。

過去のお前は、過去のお前。だから、これからはもう、誰かに、良いように使われるな..。

でも、だ、だからと言って、自分は全部正しいって、偏屈にもなりすぎんなよ..。

そうやって孤立した、過去の俺からのアドバイス....?」


「うん..。じゃあさ。”人生”の先輩として私かたも一つ、アドバイスして良い?」


「あ..うん....」




















魔女メリッサの加護は、三次元造形ーー

視認した物体のコピーを作れる能力よ。でも、形とか大きさ、

諸々の条件は独自でブレンド出来るらしいの!」



「了解!!」












文中に歪んだ懐中時計が出てきますが、

サルバトール・ダリの『記憶の固執』がモチーフになってます。

物語の場面と、絵の解釈が偶然一致したため、借用させて頂きました。

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