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第四話 エルフの森

※前回の♢以降の話は本編とは何の関連性もありません。

「魔女が、、死んだ??」


「ええそうね。魔女の濃い気配は、どれだけ離れていても感じ取れるもの。

でも、つい先日....。その気配は完全に消失したーーーー

ひとまず村へ案内するわ..。詳細は追って説明する」


エルフの森ー


まるでゲームの世界に訪れたかのような幻想的な空間だ。

森の中である事に違いはないのだが、どこか浮世離れしたイメージを受ける。

やはり住む者の違いだろうか?エルフは美男美女揃いという噂は本当で、

皆耳が長く、綺麗な金色の髪をしているから一眼で分かる。


そして案外、彼らは人間に対し高慢な立ち居振る舞いをする事もなく、

こちらの挨拶にもきちんと応じてくれるのだが、表情の少なさ故か、

どこか達観した印象を受ける。


「さて、席に着いたわね。ハーブティーを入れてくるから少し待ってて」


「はい..」


ー気が重い。罪悪感で潰されそうだ..。なぜって

隣に座るメリッサは、俺がさっき崖から突き落とし殺そうとした。


「ツルギ」


「は、はい..。魔女を倒して城に戻ったら、俺は自首します」


「どうしてそうなるの?」


「だって、俺はあの時..。本気でメリッサを殺そうとしたから..。

今日訪れたばかりの異世界で、心の中で、まだどこか非現実感覚でいたんだと思う..。

正直今でも信じられないよ..。だから、ゲームの敵を殺すみたいな気分で..、

俺は平気で人の命を奪おうとしたんだ..。ははっーーマジでやばいな俺....。

前いた世界じゃ、殺人未遂で今頃は刑務所にぶち込まれてる..。あははっ....」


「チッ..。ゴチャゴチャ考えないでよ..!こっちが困る!!」


「か、考えないわけにはいかないだろ!君と俺の問題なんだから..。

まぁ百パー俺が悪いけど....」


「ふん!まぁ、私も私の発言に少し非があった事は認めるわ」


「........」


「何で無反応!?なんか言いなさいよ!!」


「い、いや..。ここに来るまでは、俺が何言っても無反応だったのに、

今にして随分積極的だなぁと思って....」


「そうね。あなたにほんの少しだけ、興味が湧いたから。教えて、

異世界に来る前、あなたが何をーーー」



「ごめん!待たせちゃったかしら?」


「いえいえ、全然大丈夫ですよ。どうぞお構いなく」

「待たされた!!」


俺の手元に、湯気の立つハーブティーが置かれた。

正直熱い飲み物はあまり好みではないが、渡されたものだし断れない..。


「えっと、どこからだっけ..。魔女が死んだ事よね?」


「はい、詳しく..」


「原則として、<呪い>の術式は、術師が死んだ場合、

いやでも解除されるはずなの..」


「でも、メリッサの<呪い>は消えていない..」

つまり!<老化の呪い>をかけたのは、別の人物って事ですか!?」


「....。違う。彼女の<呪い>は、もう消えている....」




『え?』




「お、可笑しいわ!だって私、ツルギから離れるとお婆ちゃんに

なっちゃうのよ!!」

「そ、そうです!さっきだって、そうだったじゃないですか!」


「まぁ、落ち着いて..。<老化の呪い>で、もう新たに歳を重ねる事はない。

ただ、一度呪いの影響で重ねてしまった歳は..二度と戻らない..」


「じ、じゃあ..。何で俺と一緒にいると、彼女は若返るんですか!?

俺の能力は自他の回復と、呪いの無効化です!<老化の呪い>には

まだ別の要素が絡み合っているんだ!!」

「....。そうかい?呪いの無効化なんて理屈はよく分からないけど、

まだ納得できないなら、性行為でもしてみるといい。もしかすると、

彼女は元の、若返った姿に、君の手助けがなくとも戻れるかもしれない」


「そ、それは..」


「じゃあ、もう用は済んだかな?あまり長居されると、今からの

狩猟に支障をきたす。夕飯の食材を調達せねばならないんだ..」


「いや!まだーー」


「ツルギ!!!!」

「め、メリッサ....」


「もう良い..。もう、良いのよ....」



結局、エルフの森に行って分かった事は、彼女の肉体はもう、

お婆ちゃんのままで元には戻らないという事。

若返った状態になるには、これから先、常に俺と共に行動

せねばならないという事。


ー万策尽きたとは、今のような状況を指すのだろうか?


俺はまだ他人事でいられるが、今、当事者のメリッサがどんな気持ちなのか。

想像はつくが..、考えたくはない..。苔の生えた石の上で、

ほぼ放心状態で小川を見つめる彼女は、もうこれ以上見ていられない。


「な、なぁメリッサ..」


「ねぇツルギ。今から性行為しましょう」


「........は..?おい!!いくら何でも..、

それがお前の口から出てくるなんて..」


「やる?やらない??」


「や..やらない..。まだ、全部終わったわけじゃ....」


「うるさい!!もうするしかないのよ!!!それでも戻るか分からない

今の私の気持ちがあなたに分かる!?ただ能力のおかげで私の側にいるだけの

人間が、私の気持ちを理解出来るわけがない!!」


「....。もう良い..」


「え?」


「正直、俺はお前と性行為なんて死んでもしたくない。

口が悪くて、全然可愛げなくて、いっつも童貞童貞って馬鹿にしてくる

ような相手にそれを頼るとか、、いくら何でも虫が良すぎるだろ....。

それなのに、否定されると、また私の気持ちを理解しろとかさ!!

だから人間は嫌いなんだ!!!お前も、お前以外の奴もみんな嫌いだ!

悪意なしで、無自覚で傷つけてくるようなクズの集合体....。

気色悪い。俺はもう、お前を殺したくて仕方がなーーー」


ー何言ってんだ俺!!これじゃあまたさっきみたいに....。


「ほら。それがあなたの、本心じゃない。

口ではいくら取り繕って謝罪した体を見せても、根っこに抱いてる感情は同じ。

ツルギ、あなた、”醜い”ね」


ーは?


「醜いだと!!この俺が!!!!

俺が見知った人間の中で一番醜いお前がそれを言うのか!」


「あはは!そんなに首を..し、めるな、、って..」


「殺す殺す殺す殺す殺す!!!!」



「はっ....」


「ツルギ..。どうしたの?」


「仕方ないよ。彼には僕の幻術をかけて寝てもらったんだ」


「お前..誰だ....。そしてここは....」


「ツルギ..。覚えてないの..?私がアンデッドを倒したら、

どういうわけか..。あなたは気絶していて....」


どうなっている..?そして、俺の目の前にいるこの女。

メリッサの顔はしているが物腰が随分柔らかい。

本当にメリッサか..?


「こ、怖い顔しないで..」


「ふふ、ツルギとやら..。

君が君の隣にいる少女の何を見てきたかは想像に難くない。

どこまでも口が悪く、愛想も可愛げもない。そして面倒で横柄でかつ

融通が効かない....」


「そ、そうだ!それがメリッサだ!!」


ー「違う。君はメリッサの本当の姿を、まだ一度も受け入れていない」


「つ、ツルギ..君....」


「く、君..?あいつはいつも俺の事を呼び捨てに!」


「ツルギ..。君はどうやら、

過去のトラウマかは知らないが、無意識下にメリッサに君が想像し得る

最悪の人間像を重ね合わせていたようだ。メリッサは初めから一度も、

君に酷い事など言っていない..」


「は....??」


「君の妄想癖は、もはや病気に近い。だから治療してやった。感謝しろ..。

まさか幻想の中で、君が二度メリッサを殺すとは思いもしなかったがな」


「........」


「は..。だからお前は??」


「おっと申し遅れた。私はエルフの王。スタンリューマだ..」


エルフのーー王??確かに、エルフ特有の長耳..。

しかし、瞳は赤く..、髪は黒色..。エルフのイメージとは少しずれる。


「そして私の名前はメリッサ..」


「め、メリッサ....」


「あ!やっと目を合わしてくれた..。もう!私が話しかけても

いっつも何かボソボソ呟いて無視して勝手に変な妄想膨らませないでよね!

私、そんなに口悪くないから!!」


「お、俺....、、何で、、お前の事を酷い奴だって....」


「さあな?君が望んでいたからじゃないか?」


「の、望んでない..。じ、じゃあ..。ここまでは、全部俺の妄想だった..って事..」


「そうなるね」


「あぁ..。良かった....。じゃあ<呪い>の話も」


「いや、残念ながら彼女にかかった<老化の呪い>は、君の妄想ではなく現実だ。

そして、魔女が死んだのも現実。でも安心したまえ!呪いは解けるよ!!」


「ほ、本当ですか!?」


「あぁ勿論だとも!ただし、性行為する必要はあるけどね!」


「..........え?」



















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