第三十九話 真実①
最初に疑問を抱いたのは、いつからだろう。
ただその前にひとまずは、俺の能力の説明をする。
俺の能力、この回復能力は、自分と、半径5m以内の他者を回復させられる。
その他にも、呪いを無効化させたりーー
そう。最初に疑問を抱いたのはこの点だ。王様の説明曰く、呪いは
完全に無効化出来る。それなのに一人だけ、それが出来ない奴がいた。
彼女にかけられた呪いは、<老化の呪い>
放置すると、加速度的に歳を取り続け、最終的には老衰で死に至る。
だから、俺はそいつの呪いを解こうとした。でも出来なかった。
俺が常に回復能力をかけていないと、呪いは解除されない。かといって、
呪いを永久に解くためには、性行為しなければならない。
これは、俺の能力の欠陥のように思えたーー
だが、すぐにこの結論に至った。魔女は彼女で、彼女は自作自演で、
<老化の呪い>にかかったフリをしている。
だから崖から突き落とし、本性を知ろうとした。
もし彼女が魔女ではなく、仮に死傷を負っても、俺の力で回復させられる。
あとは、彼女の性格に漬け込んだ適当な言い訳を考えればーー
しかし、予想は外れた。彼女が本性を現すことはなく、
むしろ偶然下を歩いていたキューラさんに受け止めて貰えなければ、
彼女は本当に死んでいた。そして、彼女の呪いはかかったままだった。
俺は絶句した。軽率な判断で、本当に殺してしまう所だったー
いや、多分余程落ち方が悪くなければあの程度の高さから落ちても死なない
だろうけど、この時の俺は、彼女が本当に魔女だと思い込んでいたから。
もう、疑うのはやめよう..。
ーー「魔女は死んだ」
しかしキューラさんにこう言われ、疑念は確証に変わった。
魔女を殺したら呪いは解けるはず。でも、魔女が死んでも彼女の呪いは解けない。
ここまで来たら、誰でも分かる。彼女が魔女だから、彼女の呪いは解けない。
エルフの奴らがどうやって安否確認をしているかは不明だが、嘘の気配はない。
そうして俺は、二度、彼女を殺そうとした。
♢
そして二度目も、彼女が本性を現すことはなかった。
俺はついに、発狂した。俺の目の前にはたった今首を絞め、気絶させた彼女がいる。
魔女だと思っていた彼女は、魔女ではなかった。
そんな時に現れたのが、彼女だった。
「つ、剣....」
初めて会った時、彼女は泣いていた。
「君は..?どうして俺の名前知ってんの..?」
俺は気になったから質問した。それなのに、彼女は全然泣き止まなかった。
それどころか、俺の方に近づき、俺の事を抱きしめてきた。
「ごめん..。ごめんなさい」
彼女は謝った。意味が分からなかった。
俺は初対面の女性のエルフに、泣きつかれる理由も、まして謝られるような事をされた
記憶も存在しない。だから、、、いや....
顔も声も、全然違うーーでもどこかで..
♢
「私はエルフの王、スタンリューマだ」
次に目が覚めた時、俺の目の前にはそいつがいた。”初”対面だった。
♢
おかしい..。一瞬優しくなったかに見えた彼女が、また毒舌になった..。
王立図書館の階段がこんなにも長いだなんて....。
♢
そして、彼女は”死んだ”ーー
文字通りだ。俺は彼女の身体に回復をかけ続けたが、治る事はなかった。
いや、肉体は再生できた。しかし、意識は戻らなかった。
そんな折、スタンリューマがこんな提案をしてきた。
ー「だったら、彼女の意識が戻るまで、私と一緒に生活しようと」
スタンリューマとの共同生活が始まったのは、今から一年前の、ちょうどこの日
♢
「あれ..。俺確か..、彼女を殺そうとして..」
「剣!今日からよろしくね!」
「ん?いやちょっと待てどうしてお前がここにいる..?
ってあれ、そうか..、一応俺、お前と共同生活する事になったんだよな..」
「うん!だからよろしく!」
「あはは..。今更、『よろしく』だなんてさ..。はは..、やっぱ信じらんねーよ..。
こんな世界で、また君に会えるだなんて..」
「えへへ..。まさか私も死んじゃって、前世の記憶を持ったまま転生するなんて
思ってもなかったよ。それどころか、こうして剣ともう一度会えるなんて....」
彼女の顔が曇った。
「でも..、私にさ、君と会えて嬉しいだなんて言える権利はないよね..。
だって私は君に、とても酷い事しちゃったから..」
「..いや....。酷いのは俺の方だろ..。あんな形で、思ってもない事口にして、
君の事、傷付けちゃったんだから..。だから俺、ずっと君と仲直りしたっかったんだ..」
「....剣..。私と仲直り、してくれるの?」
「勿論だよ。逆にこっちがお願いしてるんだけど..」
♢
「ねぇ。筍料理の作り方教えてあげようか?」
ある日、彼女がそう提案してきた。
「是非とも..」
その日のスタンリューマとの食卓には、俺が作った筍料理が並んだ。
♢
ある日の事だった。もう、スタンリューマとの共同生活を初めて一年になる
というそんな折。彼女の意識は未だに戻らず、スタンリューマでさえも、彼女を
殺した方が良いとそう提言した。
♢
「彼女は百パー魔女ね。はい。3枚レイズ..」
「そうだね。第一、書庫内で彼女の呪いに反応した他の呪いを、
時間のラグはあるといえ、俺の回復能力は全部無効化した。コール..」
「そーそー。それを見せるために、わざわざ君達を書庫に連れてったんだよ」
「え?見せるって..?」
「あぁ言ってなかったっけ..。彼女に老化の呪いをかけたのは私..。いいえ、正確に
言うなら、私は彼女に、自分の身体に老化の呪いを常時かけ続ける事、そして、人格
も多少なりとも調節させてもらったわ....。うん!フォーカード!」
「はぁ..。マジでお前の能力強いよな..。精神操作だっけ..。
最強じゃん..。それで、彼女を操ってんだろ」
「うん..。そうだよ....」
「ってかフォーカード?残念!俺ロイヤルストレートフラッシュ!」
「うわ!強い....。あのさ....」
「え?」
♢
翌日、エルフの森から行方不明者が出るようになった。
♢
「そろそろさ〜..。偽魔女さんを炙り出したいんだよね..」
「え?偽魔女?」
「そう..。魔女の模倣犯みたいな奴よ..。最近この森で悪さしてるみたいなの..」
「ちょっと待て..。すげー人聞き悪いんだが..」
「安心して。攫うといっても、フリよ..。ただ、とある呪いに偽装したね..。
その呪いの名は、<気化の呪い>!そしてターゲットは”彼女”!
彼女を崇拝する偽魔女は、真っ先に私を疑いにかかるでしょうね!でもそれは、
自分が偽魔女ですと公言しているようなもの!!」
「ほへー..。偽魔女か..。でも悪さって具体的に..」
「なんか、私の事殺す計画を練ってるんだって〜..」
「え??」
「テロニカ王国の王様から聞いた噂だから大丈夫!!モーマンタイ!
あんな雑魚に私を殺せるわけないんだから!!」
「でも..」
「じゃあ剣..。ごめんね..。『あなたはここでの会話を忘れる』」
作者が忘れていた設定
スタンリューマは僕っ娘の予定だった。
四話の最初の台詞だけ、主語が僕になっています。




