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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第三十六話 運命

 富、名声、力ーー


 海○王ではないけれど、この世の全てを手に入れた私は、

まさに人生の頂点を極めていた。


 

 人間同士の戦争なんて、私にとっては稚児のお遊戯でしかない。

赤子の手を捻るように、他国を蹂躙、蹂躙、蹂躙ーー


 高い軍事顧問費用と、数々の戦でたてた武勲で、私はお金持ちになった。


 私は拝金主義者だ。金があれば幸せだと本気でそう信じている。


 金があれば何でも出来る。


「キューラ。先週、アローラ森林付近に妙な集落が形成され始めていてな。

彼ら彼女らは皆エルフとの情報が入った。しかし、たとえエルフであっても、

我が国の領地内で好き勝手にされては困る。だから、其方に集落の監視、

及び潜入調査をしてもらいたい」


 嫌だった。


「良いだろう。調査期間はどのくらいだ?」


「うーん..。『100年』でどうだ?」


 この瞬間、私はこれが、所謂”島流し”である事を理解した。


 理由はすぐに分かった。近年テロニカ王国では純血思想が高まっている。

他国を侵略し大量の移民が流れて来たから。彼らを下に位置付けるために

血統に付加価値を付けているのだ。


 つくづくどうでもいい、下等生物(人間)の浅知恵だ。

でも、彼らはそうでもしないと、自らの尊厳と誇りでさえ取り繕えない。

要は、才覚のない人間の虚勢だー実に愚かなりー


 して、この国の人間どもは、どうやら私たちエルフのような

他種族も下に見ているらしい。国がここまで勢力拡大したのは誰のおかげだ

と思っているのかも知れぬが、恩を仇で返すーーとんだ畜生の集まりだ


 こんな国にもう用はない。私は王の命に従ったフリをして、

どこか遠くにいるやもしれぬ同胞を探す旅を始めようとしていた。


 ♢


「ちょっと待って下さい..。これ、キューラさんの回想ですか..?

どうしていきなり。そして、俺が想像していたあなたのイメージと

大分違うんですけど。拝金主義者って本当ですか?」


「本当だ。金があれば何でも出来る」


「....、金の量と、人の感じる幸福量は比例しませんよ..。

確かに金があった方が選択の幅は広がりますが..。ってか、

どうして過去回想なんて始めたんですか?前回のヒキは?」


「あぁすまん。”エルフの森”は、スタンリューマの生み出した、

ユートピア(理想郷)だという件だな..。話すより、見れば分かる。

ツルギ!私についてこい!!」


 今日は何だか、キューラさんの言動やら行動が色々とおかしい。

いつもはもっと、頼れるおねーさんみたいなキャラなのに、、

 

 とにかく、

俺はキューラと森の中を10分ほど歩き続けた。道中、会話はない。

ひたすら前へ前へと歩を進める彼女の後ろをついていくだけだった。


「うん..。君で良いかな?」


 ようやくキューラは立ち止まったかと思えば、彼女は前から歩いてきた

若い男のエルフにこう話しかけた。


「ど..。どうかしましたか?キューラさん..」


 向こうの男エルフは困惑している。金髪の髪を後ろにまとめ、

白いカチューシャをつけたそのエルフは、少し警戒の色を強めた。

何か、キューラから殺気のようなものを感じたのだろう。

スタンリューマ曰く、エルフには人間には捉えられない第六感が存在するという。

俺にはまるで分からないのだが、その直後の出来事は、一瞬

思考を停止させる程に、疑問符を超えた驚愕の念を禁じ得ないものだった。


「ごめんね..」


 そう言って、キューラは背中の剣を振り下ろす。

次の瞬間、肘から上にかけての腕を切断されたエルフの男の右腕の断面から、

真っ赤な血飛沫が空中をまった。


「な....」


 エルフの男も、俺と同様、思考停止のままだった。

きっと自分がまだ、何をされたかを理解できていないようだった。

そして彼女の蛮行に反応したのは、俺の方が数秒早かったようだ。


 俺はすぐさま、彼の元に駆け寄り、回復を発動した。


 男のエルフは苦悶の表情を浮かべ、目の端には涙が溜まっている。

剥き出しになった骨と血管からとめどなく流れる血。


 しかし、回復によりまずは出血がおさまり、まるで

某玉探し漫画の、緑色の人みたいに、新たな腕がニョキっと生えてきた。


「き、キューラさん!!あんた何やってんだ!!??」


「....」


「おい!そこのエルフ!どうだ!?私が憎いか?私は日々のストレスの

憂さ晴らしに、お前の腕を故意に切断したんだぞ!」


「ちょ..、何言ってんですか!?」


 キューラの発言に、俺は衝撃を受けた。しかしその後の男のエルフの

発言には、さらに衝撃を受ける結果となった。というのも..


「大丈夫です!怒ってはいませんから!」


 と、彼はさも当然のように、淡々と語ったからだ。俺は面食らった。

普通は怒るだろに..。ストレスの捌け口に右腕切断なんて、少なくとも

俺の常識に照らし合わせるならば、まず、あり得ないだろう。


 これが、エルフの価値観..。ただ、何かが違う気がした..。

いくらエルフの寿命が長いからといって、ここまで寛容になるのは不気味だ。


 ん..?待て..?

俺たちは先日、スタンリューマが、この森のエルフの、人間に対する怨嗟を

無くすような、極めて特殊な能力を発動しているのではないかと考察した..。


 そして、今の事例を見るに....


「勘が鋭いようだね..」


「やっぱり、この森では、エルフの何かしらの感情が抑制されている..」


「正解だ」


 仮説が事実へと変わった今、湧き上がるものは”驚き”ではなく、”納得”だった。

そしてここで、新たな疑問が生じる。仮に、感情の抑制が可能であったとして、

問題になるのはスタンリューマがそうする目的、そして手段の2点ーー


 ただ、後者は何となく想像がつく。問題は前者ーー


「スタンリューマは、誰も傷つけない、争わない。そんな平和に満ち溢れた、

桃源郷を作りたかったのだと、今までずっと、そう思っていた..」


「でも、実際は違ったんだ..。彼女はただ、作りたかっただけなんだ..」


 




ー「自分の身を守れる..。そんな場所がね..。それがここ、エルフの森だよ..」






 自己防衛本能


 



「ツルギは多分、もう気づいてるんじゃないかな?

そうだよ..。ここにいるエルフ達はみんな、過去に人間の手によって、

己の自由と尊厳を破壊された..。ここは、そんなエルフ達の唯一の居場所。

そして、この森に住まう328人のエルフ..。ふふっ..」


「キューラさん..。どうして笑って..」


「あははっ!!たった3桁..。そうだよ..。エルフの”総数”は、今やたった3桁..。

エルフはもう、この森にしかいないって事よ..」


「..。そんなに少ないだなんて..」


「うん。そうでしょ..。元々繁殖力は弱いし、発情期だって

百年に一度しか来ない..。それに発情期が来たって、子供をなせるか

そうでないかは体質によるのよ..。私は4回やってもダメだったから..」


「....」


「ごめんね。辛気臭い話になってしまって..。でも、これは話しておく

べきだったんだ..。エルフの森の謎と、エルフの希少性..。

そして最後に..、スタンリューマ。彼女に関して、私が知っている事の全て..」


「そう、なんですね..」


「......」


「あ..」


「何?」


「え..。あ......」


「だからなに....」





















「”最後”って......」


「うふふ。こればっかりは、抗えないみたいだ..。さて、ツルギ..。

まだ私が動けるうちに、星空の見える、見晴らしのいい丘に移動しよう..。

そこで、私の知っている全てを、君に話そうと思う..」








「泣かないでよ..。今日、エルフの”総数”が、327になっちゃうだけだから....」





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