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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第三十五話 森の真実

 5日目の朝になった。


 早朝、朝ごはん用に、メリッサはガレットを作ってくれた。


 中には半熟の卵と、狩りで余った肉を加工したベーコンが入っている。


「美味しいです」


 と、そう一言付け加えたら。咀嚼中の彼女は口元を隠し上品に笑った。


「....」


 問題なのは、先日以来、サーニャとの関係が気まずくなってしまった事。

昨日あんな事があったのだから当たり前だが、このままではいけないと思う..。


 かといって、言うべき言葉は思い至らない。


 沈黙の中、俺は皿の上に広がる卵黄をじっと見つめた。

何か考えている様な風を装い、実際は何も考えていない今の俺は、

俗に言う『時間潰し』を敢行していた。だって、食べ終わったのに、

誰も食器を片しに行かないからだ。


 お通夜みたいな空気感の中、俺はやっと立ち上がった。

二人の目線が、じっとこちらへと注がれる。


 しかし、そんな視線を振り払い、殺伐とした空気から逃げるように、

俺は扉を開け、ツリーハウスの外に飛び出した。


「あ。キューラさん!」


 そして出迎えるかのように、扉の外には熟年戦士キューラの姿があった。


「昨日ぶりです。良い天気ですね」


 本日は晴天。微風が吹き抜ける爽やかな1日である。


「そうだな..。えっと..」


 彼女は、いつも誰かといる俺が、一人でこの森をほっつき歩いてる事に

疑問を抱いたようだった。自主行動を始めた瞬間にこの動揺である。

要介護の老人ではあるまいし、実に不服だ。


「今日はスタンリューマとか、メリッサと一緒ではないのか?」


 一緒じゃない。スタンリューマは魔女探しの旅に出かけ、

メリッサとは少しばかし気まずくなってしまったところだ。


「はい。キューラさんも一人なんですね」


「ははっ..。そうだね」


 キューラは寂しげな顔を作って笑った。ぼっちが嫌なのだろうか?


「なぁ、暇だし、何なら一緒に散歩でもしないか?」


 やはり、

ぼっちが嫌だったようだ。こんな提案を急にしてくるのだから..。

適当な雑談と歓談で時間を潰せば良いか..。


 ♢


「さぁ!私が相手だ!!その木剣でかかってこい!」


「へ?」


 さて、どうしてこうなったのだろう?

まず、俺は彼女に、散歩しようと提案され、稽古場に連れて行かれた。

そこで何故か木剣を渡される。そして、今に至る。


「どうしたんだ?さっさと来い!!」


「あ..。はい!!」


 俺は彼女のいる所目掛けてかけ出して行った。手にした木剣を、

地面と擦らないように両手でしっかりと掴み、胸の前に掲げながら、


「メン!!」


 と言って、俺は木剣を振り上げた。


「遅いね」


 しかし、俺の木剣は空ぶった。当たったのはキューラの頭蓋骨ではなく、

何もない地面だった。直後、俺は素早く横に回避したキューラに、脇腹を打たれた。

あまりの激痛で悶絶し、回復をかけた。しかしキューラはその隙を見逃さず、

更に5,6発連続でお見舞いして来やがったのだ。


「君の回復能力にはいくつか弱点があるのが今ので分かった。

一つは、君は自分に回復をかける時、頭の中でそう念じなければならない。

だから他の事への注意が散漫となる。そして、回復の暇を与えぬような

連撃には弱いという点もそうだな..。魔女と戦うんだろ。そんなんじゃ即死だ」


 キューラの指摘は全て的をいていた。だからイラついた俺は、

何度も、何度も、彼女に一撃でも良いから、攻撃を当てようとした。

でも、何発打てど、剣筋は逸らされるかかわされるかで一向に当たらない。


 そして、俺の攻撃が不発に終わるたび、彼女は手痛いカウンターを食らわせ、

その都度俺に的確なアドバイスをしてきた。


「クソ..。何で当たんないんだ....」


 生前は、剣道なるものとはまるで縁がなかったとはいえ、

アニメに出てくるキャラみたいに、

何となくかっこよく振り回せば大丈夫だと思っていた。


 でも、こんなに避けられるものなのだろうか..。


「剣戟を、剣で受ける。お互いに刃を交えるのは、接近戦の基本だ。

しかし、長期戦になればなるほど、積み重なるダメージの蓄積で、剣の

強度は下がり、切りにくくなる。だから私は、攻撃を受けるのではなく、

避けるという戦法を取ったんだ..」


「へぇ。でも結局魔女の攻撃は喰らってるわけだし、避けれてな」


「減らず口が無くならんようだな..」


「すみません....」


 キューラが物凄い顔で睨みつけてきたから、俺は小便を漏らしそうになった。


「じゃあ..。戦闘時、相手が魔法を撃って来た場合は?」


「あぁ..。魔法か..?魔法対策は一番手っ取り早い方法がある!」


「え?どんなんですか?」














「相手の喉を指圧し潰して、詠唱出来なくさせる!詠唱した魔法が出力される

手を切断するのもアリだろう!実に合理的だな!!」


「あ、あはははははは..」


 俺は乾いた笑いをするしかなかった。やり方がまさに蛮族のそれだったからだ。

こんな夢のない話はあるだろうか?魔法は詠唱を唱えるのがロマンなのに、

そもそも唱えられない状態にすれば良いという発想は、戦隊モノとかで、

ヒーローが変身する前に攻撃するのと同じ理屈だ。確かに俺も昔は、あんな長尺

な変身シーンを、わざわざ待ってあげる敵はバカなのでは?とか思ってたけど、

あれはそういうツッコミ所満載な部分含めて、初めて成り立つものだと..。


 おっと、熱く語りすぎてしまった。


「だから、今の人間は戦闘中に魔法を詠唱しながら戦うらしいが、あれは二流のやり方だ。

戦いに魔法なんかいらない!まずは敵の喉を狙え!あ..、腕でも良いぞ!」


「でも..。相手がゴリゴリの武闘派で、超フィジカル特化だったら..」


「あぁ..。それなら、体を溶かす薬品をぶっかければいい!」


「......」


「あ!ガ○リンを撒いて、火を放つのもアリだ!!」


「もう良いです..」


 この世界に来て、薄々感じていた。敵の使う攻撃手段がやたら物騒なのだ。

力技で勝てないなら薬品をぶっかけるとか、火を撒くとか、、

互いに剣を交えるような、手に汗握るような展開は、この世界にはない。


 ”見せる”のではなく、とにかく”勝つ”事を重視すると、戦いはここまで

醜くなるのか??創作物におけるかっこいい戦闘描写は、儚くも砕け散った。


「じゃあ。剣術を体得した上で、剣には酸性物質の作り方と..」


「嫌だ!!俺は剣と魔法だけでのし上がるんだよ!!どうせあれだろ!?

この世界はドラゴンとかみたいな最強モンスターが出て来ても、

飲んだら即死するような毒物を口の中に放り込んで終わりだろ!?」


「えへへ..」


 全く..。こいつは最強を自称してたけど、こんな世界にそもそも、

最強という概念は存在するのか..??


「なーんてな..」


 しかしここで、キューラは明後日の方向を向き、何故か悲しそうな表情を作った。


「私が教えられるのは..、”旧”時代の枠組みの、魔法の論理体系の対処法で、

今の時代ではもう、ちっとも役に立たないんだ..」


「え..。その薬品とか、毒とか放火は....」


「ツルギ..」


 途端に、キューラの顔つきが真剣そのもになった。きっと、後に続く言葉が

大事なのだろう..。ただ、何となく予想はついた。




「大地でさえ、永遠には存在し得ないように、人も時代も、

その”時”を永遠に留めているわけではない..」


「....」


 人よりも何倍も生きた彼女の、言葉の重みは違った。


「時が経つと共に、既成のものは刷新され、新たな論理へと置き換わる..。

だから、絶対に過去の常識には囚われるなよ。過去に囚われた結果、私たちの

同胞は皆人間に利用され死んだが、私は人間と共生する道を見出した事で、

何とか時代に適応する事ができた..」


「でも、キューラさんは今....」


「そうだね。私は今、旧時代的なこの森に留まっている..。おかげで、私は

ここ百年、時が止まったまま..。きっと疑問に感じるよね。人間と生きていた

私が、どうしてこの森にいるのか?そもそも、どうしてエルフの森は作られたのか?」


「はい..」


「良いよ。人間のあなただから教えてあげる..。この森はね....」

























「スタンリューマが人為的に生み出した、エルフのための、ユートピア..。

そして私は、彼女の動向を監視するために、王国から派遣されたのよ..」






 





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