表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/44

第三話 魔女の行方

「なぁ、エルフの森まで後どのくらい?」


「........」


「てかお腹すいてない?どこかで休憩しようぜ!」


「....。うるさい、死ね」


城を出た俺とメリッサは、

魔女の情報を収集するために、エルフの森

へと向かって歩いている。

道はメリッサが知っているから問題ないとの事だが、

こんな碌に道も整備されておらず、片側は断崖絶壁。

そんな道をかれこれ一時間以上は歩いている

から、流石に心配になってくる。


でもなぁ。何言っても基本無視だし。歩くペース早すぎだし..。

水も食料も一切摂ろうとしない..。


「自己中..(ボソっ)」


ドカ


「い、痛い!!いきなり殴るなよ!!」


「........」


そもそも、何故メリッサは、やたらと俺を邪険に扱うんだ?

何か悪い事をした覚えもないんだよなー..。


「あーあ..。せめて馬とかがいれば、移動も楽なんだろうけどなー」


「......」


「な、何か言ってよ!」


「あー..。今の私に話しかけてたんだ..。独り言だと思った。

じゃあ、そこら辺の馬でも探してくれば?私は歩くけど」


「いや、でもさーーそれじゃあ半径5mのルールが..」


「あぁもう一々分かりきった事でうるさいわね!!私は!馬より

速いのに、あなたがトロイからあなたに合わせて歩いてあげてるの!

それくらい察してよ!使えない!!」


「はは..。察せとか、理解しろ。とか、そういうの本当面倒臭いわ..。

言いたい事あるなら初めから言えば良いのに..」


「ーーあなたねぇ!!」


「チッ..。また殴ったら加護の力解くからな....」


しかしその瞬間、メリッサは俺の腹を思い切りぶん殴り、

腰にぶら下げてある剣を鞘から抜き、剣先を喉元に突き立てた。


「変な考えは持たない事ね。私はいつでもあなたを殺せる」


「はいはいそうですか..」


「分かった!?」


「まず剣をどけろよ。危ないだろ」


「お前の意見など求めてない!!殺すぞ!!!!」


ーひ、ヒェ..。


俺が死んだらお前も死ぬんだぞと反論しようとしたが、

今の彼女は、目が完全にキマッている。

後先考えず躊躇なく人を殺しそうな、狂人の目だ。

白目は怒りで毛細血管が強調され、顔も赤く染め上がっている。


「ご、ごめん冗談だ..」


「分かったならいい。立場の違いが分かったなら、地を這ってでも

私に着いてきなさい」


「はい..」


何だろう。僕が想像していた異世界生活と全然違う。

ヒロインはもっとこう..、優しくて可愛くて、そんで

しょーもない理由で主人公の事好きになって、以降は常時発情状態也!

みたいなご都合展開じゃないのか!?でも..、俺も

チートスキル持ってるんだし、道中襲ってくる魔物を倒したら

メリッサだって少しは惚れ直すんじゃ..。


ーアアアアァァァ


その時、前方からアンデッドが近づいてきた。それも三体..。


「キタキタ異世界!!これよこれ!メリッサ!下がっていろ!」


ズバン


「ちっ..。雑魚が群れてきやがって..」


ーえ??


一瞬だった。メリッサが剣に手を触れた次の瞬間、

アンデッドの首が宙を舞った


そして同時に、この世界で俺が活躍する出番などない事を悟った。


「それよりお前..。今私に下がっていろって言った?

何様..?気色悪い......」


「あなたの剣は何のためにあるの?」


「め、メリッサを守るためだ..。悪いかよ....」


「ぷっ..。あはははははは!!私を守る!?!?

あんたみたいなキモい奴が私を??あははははは!!」



ー「あははははは!」


メリッサの笑い声が、まるで頭の中で木霊するみたいに、

何重にも反響して聞こえてきた。理由は分からない。

今までだって、メリッサは俺をずっとぞんざいに扱ってきた。

初対面の時からずっとずっとずっとずっとずっと


「第一あなた、剣とか使った事あるわけ?

何の取り柄もなさそうだし、本当に役に立たない..」


「....」


「ねぇ?聞いてる?童貞クン??」


「死ね」


そしてその動作は、ほぼ無意識下で行われた。

反射で伸びた僕の両手、そして触れた先にある断崖絶壁。

メリッサの身体は抵抗するも間に合わず、崖下へと降っていった。


「え?」


瞬きし、次に目を開けると、そこにはさっきまでそこに

いたはずのメリッサがいなくなっている。

しかし、手にはまだ、さっきの彼女の鎧を押した時の、

硬い質感がはっきりと残っている。


「ち..違う。今のは、お、俺じゃない!!メリッサ!!」


十分くらい..。恐怖でその場から動けなかった、その時だった。


「全く..。人間は随分と酷いことをするんですね..」


「は?」



話しかけられるまで、俺の背後の気配に気が付かなかった。

後ろを振り向くと、そこには長身で、片手に弓を携えた

金髪の女性が立っている。そして何より特徴的なのは、

彼女の耳が、異様に長い事だった。


「え、エルフ、でーーーー」


「あなた、さっきこの女性を突き落としましたよね?どういうわけか、

今は老人の姿をしていますが..」


気絶ーーしている..。


目の前の長身の女性が、もう片方の手で抱え込んでいるのは、

さっき俺が突き落としたメリッサ。


偶然居合わせた彼女が、救出したのだろう。


俺は、、、、、、、、クズだ....。


「ふふっ。人間は面白いですね..。あなた今、”良かった”と、

思っているでしょう。彼女を殺そうとしたのはあなたなのに」


「............!」


「そしてこうも思っている。このまま、目覚めないで欲しいと、」


「ち、違う!!」


「残念ながら、彼女は気絶しているだけですから直に目を覚ますでしょう。

ふふっ..。その時の彼女の反応が、楽しみで仕方がありません..」


「クッ..。だから、俺はそんな事!」


「何も違いありません。私はエルフ..。もう何千年も生きてますから、

数十年程の命しかない人間の思考、感情など、単純すぎて、

手に取るように分かりますわ」


「....そうかよ!!じゃあこれは分かるか?」


俺は回復能力を発動した。どうやら気絶している人間にも効果はあるらしい。

枯れ果てた彼女の肉体が、徐々に若返っていった。


「これは、魔女の呪い!?」


「正解..。俺は、彼女の呪いを解くために、魔女を殺す旅をしている。

でも、そいつがどこにいるか分からないんだ..。でも、お前ら

エルフなら分かるんだろ!!教えてくれ頼む!!」


俺はその場で土下座し、額を擦り付けた。半分はお願いーー

もう半分はーーー


「ふふ、さっき殺そうとしてたくせに助ける??人間はよく分からない。

だから面白いーーー」


「じゃあ教えて!!」


「う..うーん......」


あ....。


「ふふ、お目覚めのようね」


「あれ、私....。ツルギ!?何があったの!?」


あまりの恐怖で、俺は目を瞑った。しかし、今の彼女の質問..。

もしかして覚えていない?だとすれば、エルフが何も言わなけれ..。


いや、違うだろ..。

俺が土下座した。もう半分は彼女への贖罪の念を込めてだ。

それなのに、ここで有耶無耶にするのは、もっとクソだ..。


「ごめん」


「え?何が??」


「俺、、、お前の悪口に苛立って、お前を殺そうとしたんだ!!

崖から突き落とせば、殺せると思ってやった!隣にいるエルフのお姉さんが

お前を助けなければ、俺は人殺し、お前は死んでた....」


「で!?」


「うふふ!白状するのね!面白い子だわ!」


「メリッサ..。本当にごめん。謝って許されるような事じゃない。

死ねと言われたら死ぬし、とにかく、何でも言う事を聞くから!!」


「ふーん?何でも言う事を聞く、ね..」


殴られる..?いや、それだけじゃ済まない。半殺しにされる..。

いや、3分の2殺しくらい......。


「じゃあ、私はあなたを許す。だからこれからの旅にも着いて

来て欲しい。それがお願い」


「え......」


「そもそも、あなたなしで私は生きられないし..。

仕方なく、そう..仕方なくよ!」


ーつ、ツンデレ??


「あっはははは!なーんだ許すのね!まぁ、それが一番よ..」


「..........じゃあエルフのお姉さん!

早速だが魔女の居場所を教えてくれ!!」


「あらそうだったわね..」



ー「居場所はない、とでも言うべきかしら?」


「どういう事だ!?」


「だって魔女はもう、死んだもの......」




♢(ここから先は読まなくても構いません。第四話に続いて下さい)



























突き落とされた。

でもどうして........。


崖はそこまで高くはなかった。せいぜい5mにも満たない..。

良かった..。<呪い>は解除されたまま..。


「ち..違う。今のは、お、俺じゃない!!メリッサ!!」


頭上からツルギの悲痛な叫びが聞こえる。


ー泣いてる..。私、そんな酷い事しちゃった??

ど、どうしよう....。


「あら人間の女性じゃない..」


「エ、エルフ....?」


「少し、泣いている?どうしたの?」


「........」


(別に言っても構わない..)


「あらまぁ..。酷い事するのね彼」


「どうして彼がそんな事するのか..、分からなくて....」


「でも泣いてるのなら、多少は罪悪感を持ってるはずでしょ?」


「そう..です....」


「ふーん?どちらにも非はありそうね?

だって、あなた。よく彼に酷い事を言っていたんじゃない?」


ーど、どうしてこの人は分かるんだろう..?


「はい..。ただ私のお友達が、男は皆んな罵倒されたり暴力を

振るわれると喜ぶって言うから..」


「え?」


「違うんですか?」


「あ..あはは..。で、でも、と、とにかく仲直りはしないとよね」


「でも..どうすれば....」


「安心して!私に良い策があるから!!

あなたは、突き落とされた事も、最初は知らないふりをしてればいい。

それでしらばっくれるようなら、彼もその程度の人間よ..」
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ