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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第三十一話 片思い

「それで..。サーニャはどうなったの?」


「......」


 スタンリューマのいたツリーハウスの戸を開けると、中にはメリッサが、

両腕を胸のところで組み待ち構えていた。最初に彼女と目が合ったのは俺、

そして一番最初に入ったのも俺だから、彼女は俺に話しかけてきた。


「それが..」


 俺はわざと、深刻そうな顔を作る。


ーゴクリ


 と、メリッサが固唾を飲んだ。


「実は..、上手く説得出来ずに、途中で魔法で焼かれ..。逃げ出されてしまいました..」


「そう....。でも、あなたが無事で何よりよ..。それに、もうこんな時間..。

夕飯の支度は私がやるから....」


「....」


 気まずい沈黙が流れる。しかし、今日は、メリッサが夕飯を作ってくれるらしい。

なら、"3”人前でお願いしないとなーー


「ウッソピョーン!!仲直り出来ました!!」


「うぉおおおおお!!」


 俺の下手な種明かしに、戸の裏の死角にずっと隠れていたサーニャが、

オーバーなリアクションで顔を覗かしてきた。


「......」


 気まずい沈黙が、三人の間に流れる。


「あの..。そういうの..、良いから....」


「はい....」


 以上 茶番終了



「はいお待たせ。氷魔法で冷凍保存されていた獣肉が沢山あったから、

ジビエにしてみたわ。外側の茶色く型取られたドーム状の物体はパン生地よ。

中にミンチが入ってるから、ナイフで切って食べてね。あ..後ソースは

赤ワイン入ってるけど、アルコールは飛ばしてあるから」


 メリッサが、俺とサーニャのために夕飯を作ってくれた。

にしてもだ..。いつの間にか、一枚板の簡素なダイニングのテーブルの上には、

どこから調達したのか、お洒落な白のテーブルクロスがかかっていて、

グラスもUのような形をしたものが、

ガラス製のワイングラスに変わっている(注がれているのは水だけど)。


 それに一番はやはり彼女の作ったこのジビエ。作る前に、料理の腕には自信

があるとは言っていたが、まさかここまでとは想像もしていなかった。


「なぁ..。メリッサ。お前ってやっぱ凄いんだな..」


「別に凄くはないよ。練習すれば、誰でも簡単に作れるようになるから..」


 メリッサは少し顔を上げ、満面の笑みで言った。


「いや、少なくとも俺にはこんな芸当出来ないよ」


「えへへ..。そっかな..」


 良かった。謙遜には謙遜を。彼女も喜んでくれている。


「チョロっ(ボソ)」


 しかし、ここでサーニャが、そんな平穏な会話に水を差してきた。


「ねぇ。何か言った?」


 案の定、メリッサは不機嫌になる。


「別に??じゃあ!!いただきま〜す!」


 そんな彼女を無視し、サーニャは飯にありついた。


「美味しい!」


 どうやら、味も相当なものらしい。

ジビエを口にした瞬間、彼女は目を見開き、頬は蕩けたように緩くなった。

肉汁が口の中を駆け巡り、上質な脂質が喉を通る。肉を食べると、幸せホルモン

が分泌されるというがなるほど..。これは確かにそうだ..。


「はぁ..。肉硬すぎ..。焼く時間を後2秒短縮しようかしら..」


 しかしこんなに美味しいのに、メリッサはまだ自分の作った料理の味に満足が

いかないらしく、隣の席で何やらぶつくさと唱えている。


「美味しいよ。メリッサ」


「いいや..。まだ全然....」


「ストイックだね〜」


 こんな感じで、各々が食事をし、20分もすれば三人とも完食していた。


 そして、メリッサが料理を作ってくれたから、

皿洗いは勿論、俺とサーニャさんの二人でやる。


(そういえば..、スタンリューマは、料理も作らないし、皿洗いもしないしで..、

家事全般を押し付けてきてたな..。それはつい昨日までの事なのに、何故か

妙に懐かしさを感じる)


「ねぇ..ツルギ....」


 と、ここでサーニャが俺に話しかけてきた。


「何?」


「わ、私ね..。何だか今凄く不思議な気持ちなんだ。何て言うんだろう..」


 まぁ..、あんな事があったんだ..。


「自分が今まで当たり前のように享受していた日常に、物凄く違和感を感じるというか..」


 無理もなーー



 え..。



「ど、どういう事!?それはいつから!?」


 テンションが上がり、思わず声が荒ぶってしまった。そんな俺をみて、サーニャは少し、

手を前に掲げ俺を静止させるポーズを取りながら、一度深い深呼吸をついた。


「はぁ..。落ち着いて..」


「ご..ごめん....でも、どういう意味..」


「うん..。わ、私ね。当然だけど、以前の記憶もちゃんと残ってるんだよ。

君と初めて出会って、悪かった視力を良くしてくれたのも未だに覚えている。

でもね、あの時、私は貴方達を襲おうとはしなかったの..。だからそれが変だって..」


「ち、ちょっと待って下さいよ!!」


 ジビエのあった平皿に溜まった水が、こぼれ落ちる音がした。


「さ、サーニャは俺たち人間の事をずっと恨んでいたけど..、それでも、

その本心を隠して、俺たちに優しく接してくれたわけじゃないんですか!?」


「ふふっ..。私がそんなに器用な人間に見える?私はそこまで、出来た人間

じゃないし....、買い被りすぎよ..。とにかく、私が言いたいのはね。

私は初めて君に会った時、演技でも何でもなく、本心から、人間に何の嫌悪感

も抱いていなかったとそう言っているのよ!」


「じゃあ、嫌悪感を抱くようになったのは..いつから....?」
























 そして、彼女は驚愕の事実を打ち明けた。



















「頭を打っちゃって..。貴方に回復させてもらった後よ」


「本当に?」


「ええ!はっきり覚えているもの!あの時、回復される過程で、

私の腹の中に眠っていた怒りの感情が徐々に込み上げてくるような感覚があった!

人間を殺す。その思いに支配されて、理性ではもう、自分を制御出来なくなってしまった!」


「今も..?」


「ううん..。ツルギに諭されて、全ての人間が絶対悪じゃないって気づけたから、

もう大丈夫。でも、あの恐ろしい殺意の芽生えた瞬間だけは、まだ鮮明に覚えてるわ..」


 俺は今すぐにでも、発狂したい衝動に駆られた。


 全ての疑問が、最悪の形で解消された。


ーつまり、


 この森のエルフ、そして俺も、何らかの形で、何者かに精神を操られていた。という事だ


 エルフ達は、自らの意思で、人間への負の感情を制しているのではなく、

常に復讐心と殺意を煮えたぎらせつつも、それを誰かに、それも”強制的”に、

そう感じさせないよう抑制させられているだけーー


 その精神操作術が、この国では、<呪い>か<加護>に該当するのかは不明だが、

恐らく俺の加護が対象の頭に触れた事で、今まで掛けられていた術が解けた..。そう考えるのが妥当。


 とするなら、俺が現状に疑問を抱いたのは、メリッサに全身を火だるまにされた時、

自身の”頭”を含め全身を回復させてからだから、これも、サーニャの分も、全て辻褄があう。


「ねぇ。戻ってくるの遅くない?」


「ごめんメリッサ..」


 俺は彼女の頭の上に手を乗せ、回復能力を発動させた。



ー「あれ..」


「メリッサ。君はどうして、まだこの森に留まっているの?」


 もし、今までの彼女なら、間髪入れずに、『だって、ツルギに剣術を教えるため』と

答える。ただ..、もし、、メリッサも操られていたとしたら..。


















「え..。本当だ。どうして私、まだここに..。<老化の呪い>が解けたなら、

いる意味はないじゃない..」















 あぁ..







 俺はその場で、倒れ込んだ







「ツルギ!!ねぇ!!どうしたの!!」


 視界が、ぼやける..。


「ーーーーー!!ーー!!」


 メリッサの声が、耳に届かない..。















『君の事がーー


 あれ、スタンリューマさんの声が..する。

これは、いつの記憶だ..。どうして思い出せない..。どうしてどうしてどうしてどうして..



 パシャっ!


 

 錯乱し、意識を失いかけた俺の顔には、サーニャの水魔法によって冷水がかけられた。


「大丈夫!!????」


「あぁ..、問題ない......」


 よろめきながらも、俺はかろうじて立ち上がる事が出来た。

まだ少し、耳鳴りがするし、足元もおぼつかないけど..。何とか話す事ができた。


「そう..。なら良かった。多分、軽度の貧血よ。安静に..、いや、貴方には必要ないね..」


「はい..。でも一応、頭に回復をかけて....」


 俺は、自分の頭に回復をかけるよう、自分の頭で念じた。

自分でも、何を言っているのやら..。でも、回復能力はオートではなく、

回復しろと念じる必要があるから、仕方がない。


「ツルギ。本当に大丈夫だよね..?」


「はい..」


「無理はダメだよ!!ツルギ!!」


「はい..」


 幸せだな..。俺は今、幸せなんだ。


 しかし、改めて今、自分の脳をリフレッシュさせて見ると、俺はーー


 こんな、綺麗な女剣士と、創作の中でしか見た事のなかった美しいエルフに、

たかが貧血如きでこんなにも心配されている..。


 こんなの、誰が考えられるだろうか..。


 俺みたいな人間が、人並みに幸せになる権利なんて..、ないと思っていた。




 ー中二の時、当時片思いだった子の財布を盗んだ俺なんかに..



 いじめっ子達に命令されたとはいえ、拒否する権利はあった。でも、当時の俺には、

財布を盗むより自分よりも身体が大きな奴に、

集団リンチを受けるのが怖くてたまらなかった。


 だから俺は、”逃げ”を選んだ。


 誰にも見つからないよう、

六限の体育の授業を抜け出し、彼女の鞄から、財布を抜き取るだけ。

いじめっ子は、俺に度胸試しでもさせているのかと思った。


 

 そうだ..。あの子の..、彼女の名前..。


 俺の初恋の人..。幼馴染で、小さい時から良く遊んでいたあの子..。

そして、俺が初めて裏切った人。


 『あなたの事なんて大嫌い!』


 そして、初めて嫌いだと、明確に、そう言われた人



 クラスの窃盗犯として扱われ、みんなに虐められるようになって、自暴自棄になって

学校に行かなくなった。自分のせいなのに、俺は誰かのせいにして、誰かにやられたと

被害妄想まで膨らませて、自殺までしたクズが俺だ。


 そんな俺が、幸せを得る権利なんて..。


 それどころか、誰かに好きと..、そう言って貰えるわけ....。




「ツルギ..。どうして泣いているの..?」



「思い..出せないんだ..。俺の人生で、たった一度、俺の事が好きだったと..

そう言ってくれた人がいたんだ....」



 無意識に泣いていた俺を抱き締めて、メリッサは耳元で優しく囁いた。



「あのね。実は私..、”それ”を見ていたの..。ツルギ。あなたの事を、好きと言ったその人は..」





「スタンリューマ様!!あれ....」


 その時だった。血相を変え、慌てた様子で、エルフェンズの一人、伝令係の

オリトスさんが、ボロい戸をぶち破り、部屋の中へと足を踏み入れた。


「彼女は今、外出中ですが..」


「そ、そうなのか?ど、どうしようどうしよう!!」


 まぁ、ここまで来ると..大体予想はつく..。


「エルフがまた一人!!」





『行方不明になった!!』


 



 4人の声が、初めてシンクロした..。






























 



 




















 







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