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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第二十三話 エルフの王





 その日の夜は、スタンリューマのツリーハウス内にて、盛大な宴があ

とりおこなわれた。無論、宴の席の主役は、渡良瀬剣。そして死の窮地から無事

生還したメリッサとキューラの計三名であり、森に住まうエルフのほとんどは、

各々が狩りでとった新鮮な生肉を持ち合い、焼肉として彼らにそれを振る舞った。


 石の平板の下に薪で火を起こし、伝播した熱でこんがりと焼き上がり、僅かな

焦げ目と、隙間に点在する赤身から、一口頬張るだけで旨味が発散され、

幸福感と充足感はピークに達する。


 これは良い安心材料だ。


 近頃森の中では、緊張感が高まりつつあると危惧していた剣も、今日の宴で、

少しは余裕を取り戻して欲しいものだと願った。


 しかし、その願望は無惨にも打ち砕かれる事となる。


 宴の熱も徐々に冷め、終わりへと向かっていた矢先、

何とあの、キューラの一番弟子であるビーストがいなくなったとの報告が入った。


「..。そうか....。それは本当か?」と、キューラ


「はい..。彼のツリーハウスはもぬけの殻でして..」


 伝令係がその後もなにかをキューラの近くで伝えた後、彼女は『席を外す』

とだけ言い残し、どこかに行ってしまった。


「また..。行方不明が出たのか..。くそ..。警備隊もやられるようじゃ。

もはや配置するだけで格好の餌食ではないか..」


 スタンリューマは嘆息した。


「そうですね。ていうかそもそも、警備隊は何故行方不明が出ているのか

知っているんですか?」


「勿論だ。今回の首謀者がおそらく魔女である事も含め全てな..。

ただ、<呪い>に関する事だけは伝えていない..。不用意な混乱を

避けるという目的と、後はメリッサに関してだ....」


「彼女のせいで、森に被害が及んでいるとなれば、当然彼女への心象を

悪くするエルフも出てくる。ですよね..」


「そうだね..。ただ....」


 チラリと、メリッサの方へと目をやる。

彼女は他のエルフと混ざり、何やら酒のようなものを一気飲みしている。

確か彼女は未成年ではなかっただろうか?飲んで良いものなのだろうか?


「もう、彼女は意識を取り戻したし、もし魔女が彼女に<呪い>をかけるに

しても、発動条件が何にせよ、それが被呪者への接触を要する場合、あまり

現実的な策ではなくなったな..」


「..。それに、仮に呪いが発動し絶命したとしても、俺の能力があれば

また蘇生出来ますしね..」


「そうかな..。でも、魔女がやろうとしているのは、相手を気化..。つまり消滅

させようというのだ。肝心の肉体がなければ、回復もクソもあったものではない。

となると、一番最悪なパターンは、

魔女の<呪い>の発動条件が、対象者への接触を要さず、

7人を生贄に捧げる事で遠隔的に発動される場合か..」


「だったら、どこに潜伏しているのかを特定するべきでしょう!」


 感情的になり、思わず、声が荒ぶってしまった。


「それはもう既に手を回している。しかし見つからないのだ..。

私も可笑しいとは思っている。これだけ広大な森の中で、エルフの

第六感を掻い潜りどうやって攫うのかがずっと!でもどうにもならないんだ!」


 ※第六感 エルフには他者のオーラを読み取る。簡単な情報を遠くにいる相手にも

伝えることが出来る、特殊な器官が備わっている。


「な、泣かないで下さいよ..。とにかく、一刻も早く魔女を見つけ出さないと..」


「う..うん..。そうだよねツルギ。こんなとこでめげてちゃ王様失格だ。

明日からは私も魔女を探しに行くとしよう」


「そうですか?だったら俺も行った方が良いですよね」


「いや..。ツルギは森に残ってメリッサとかサーニャに稽古をつけて貰え。

回復はするし最低限でいいと思うが、第一ツルギは、まだ<魔法>とか

<呪い>の扱い方も知らないだろう?それに弓は扱えるが、剣はまだからっきしだ。

その点、二人は指導者として適任だと思うのだが..」


「確かにそうですね。分かりました!そうさせて貰います。

ただ、くれぐれも気をつけて下さいね。キューラさんの時みたいに、

向こうから出向いて攻撃してくる事例もありますから」


「あぁ。それは十分に気をつけるよツルギ..。私の腕にかかれば、魔女なんて

チョチョイのちょいだ!だからツルギは..、もうこの森を出る準備でもしててくれ!

メリッサと一緒に..な......」


 そう言う彼女の口調は、どこか儚げだった。


「ねぇツルギ!!あなたも一緒にあっちで飲まない?」


 するとここに来て、足早にこちらへ近づき、飲酒を勧める者が一人。


「嫌だ。お酒は肝臓に悪いって保健体育の授業で教わったんだ。

あんな真っ黒い肝臓で糖尿病にでもなってみろ!早死にするだけだ!」


「でも、ツルギは回復能力があるじゃない」


「それでもだ!

ああいうアルコールでしか幸福を得られないような悲しい大人にはなりたくないね」


「何!?私が悲しい大人だって言いたいわけ?」


「違う!だって君はまだ子供じゃないか!?俺とほとんど年変わらないだろ!

俺が前いた世界ではな!お酒が飲めるのは20歳からだ!!」


「うるさい!つべこべ言わない!!エルフのお兄さん!

こっちに大ジョッキ一つ追加!!」


「やめろ!!俺の中の未知の扉を開けようとするな!!俺はアルコールなんて飲みたくない!

アルコールランプだぞ!!理科の実験で燃えるあのくっさい奴と同じなんだぞ!!」


「はい!!飲んで飲んで!!」


「嫌だ嫌だ!!これは良く大学の新歓コンパとかで一気飲みを強制されて

急性アルコール中毒になって運ばれる奴だ!!やめろ!メリッサ!!おい!!

他のエルフ共も俺の手足を押さえつけるな!!やめろやめろぉ!!」


ーゴクリ


 まずいまずい。何でこいつらはこんな不味い飲み物を飲めるんだ..。

しかも笑いながら..。畜生、メリッサの奴、俺に一気飲みさせて笑ってやがる。

あいつはサイコパスだ..。同じ人間じゃ....。


ーゴクリ


〜3分後〜


「うぇ〜〜い!!こっちに三本追加ぁ!!カァー!!五臓六腑に染み渡るぅ!!」


「ね!だから飲みなって言ったでしょ!」


「まさか..。お酒がこんなに美味いだなんて..。これは自らの肝臓を犠牲にしてでも

飲みたくなるわけだ..。恐るべき酒の魔力....」


「そうでしょ!!はぁ..。今日は最高の一日ね〜..。

やっと戻って来れたし..、初めてお酒も飲んだ....。忌々しかった<老化の呪い>

も、もう解けてるみたいで..」


「だよね..。でもどうして解けたのかな..。やっぱり一度死んだから?」


「多分そうでしょうね。だから本当に、ツルギ。ありがとう。

あなたのおかげで、私は元に戻る事ができた」


「それは何よりです。てかさ〜..。メリッサも今日が飲酒初体験なんじゃないか!

それなのにどうしてあんな経験者ぶったりしたのさ!!」


「別に知ったかぶりはしていないわよ!私はただ、一緒にお酒を飲まないか

提案しただけ」


「それもそうだね。ところでさ!明日、俺の剣術稽古に付き合ってくれないかな..。

俺この一年で弓は扱えるようにはなったんだけど、剣の腕は全くだから..」


「ふふっ、仕方ないわね!良いよ!でも私はスパルタだから覚悟しなさいよ!

あなたは回復持ちだからちょっと斬られたくらい大丈夫でしょ!剣の上達には、

実践形式が一番だからね」


「了解。是非厳しめでお願いするよ!」


「あはは..。それで良いの?」


 魔女ーーという話題には、あまり触れないようにした。

彼女はまだ、自分が狙われている事、そして最悪の場合、それが防ぎようのない

ものだという事をまだ知らない。ただ、いずれ話そうと思う。


 やがて宴は終わり、各自が持ち寄った道具類を片しながら、別れの挨拶と共に

去っていく。剣とメリッサは手を振り、笑顔で彼らを見送った。

そしてそれは、スタンリューマもまた同様だった。


「そういえばさ。私が死んでいた一年、あなたはどこで生活していたの?」


「ぷっ。死んでいたに期間が付くなんて何か不思議な気分だな。

っと話が逸れてしまった。俺は一年、彼女のツリーハウスで寝食を共にしたんだ。

今では同じ釜の飯を食った仲間っていうか..、とにかく色々と世話して貰ってさ。

感謝しているんだ!!」


ー世話をして貰う。

 

 剣はここで、家事はほぼ全て自分が担当している事には触れないでおいた。

それに、彼女の発情期の事についても、話しておくには気が引けた。


「メリッサ。まずは心から、おめでとう。君の復活を心から待ち侘びていたよ。

本当はサカヅキを酌み交わし、君との親睦も深めたかったのだけれど、君は

もう、今日は沢山飲んでいるし、明日から私は、ある人物の捜索に向かう。

だから、ひとまずは口頭での挨拶だけになってしまった事を、申し訳なく思うよ」


「ううん!あなた。ツルギと初めて森に来た時に、彼に”殺されかけた”

私を介抱してくれた人でしょ!覚えてるし、あの時はありがとう!

だからそんなに畏まらないでよ!!」


「殺そうとしてごめん..」


「そうか?では、これからもよろしく。とでも言った方が、良かったかな..」


 スタンリューマはこの時、少し顔を綻ばせた。ただ次の瞬間、

彼女の表情は再び、曇り空に包まれる事となる。


「いやぁ..。でも、私たちもう、ここには用もないし、これ以上居座って

迷惑かけるわけにはいかないから、もうすぐ出て行こうと思ってるの」


「あ!メリッサ!もうすぐ君の生誕祭だろ!だからその時まではここに

いるって、彼女と話もつけたんだ!門出のお祝いって奴だよ!!」


 危ない。一大戦力が抜ける所だった。


「ツルギ。確かにそうだけど。別に私が生まれた日だからと言って、

あなたにとっては特別な日でも何でもないじゃない?それに、彼女にも

私が何かして貰うような義理もないし....」


「いや違う違うメリッサ!!無償の愛って奴だよ!そういう貸し借りとか

利権とか抜きにして、相手を喜ばせたくてやるだけだから!」


「....」


「それなら、また二人でお酒でも飲めば良いじゃない。それで私は今日、

十分楽しかったから。第一ツルギ。あなた異世界人だから行く当てないでしょう!

私も魔王を倒したしやる事もない。浮浪者同士、退廃的な生活を送りながら、

この世界の各地を巡礼するってのも悪くはないかもね〜。思い立ったら吉日!

別に私は、いつ出発しても構わないわ!」


「そ、そんな焦んなよ!4,5日はゆっくりしてこーぜ!」






「もう良いんだ!!!!」





 スタンリューマが、今までに一度も聞いた事がない声量の大きな声を発したのは、

ちょうどその時だった。


「後は私が何とかする..」


「でもそれじゃあ俺たちは森を離れる事に....」


「ちょうど良かったじゃない。彼女も同意してくれたみたいだし..」


 彼女の顔を見た。無表情で、相変わらず感情が読みにくい。

ポーカーフェイスで、何を考えているのかも良く分からない。


ーただ、”その時”の彼女の表情は違った。それは見た事のない顔だった。


 無表情。それなのに、目には一筋の涙を流している。

まるで、お人形の顔の目元に目薬を滴下したかのように、涙以外には何もないのだ。

感情の揺らぎ、空気の揺らぎ、一切が感じられない。そう、






 まるで、”操られている”機械みたいにーー





「良いかい」



     『君たちは今後4日間。この森から出るという思考には至らない。

      メリッサはここで、ツルギに剣術を教える。分かったか?』



















 スタンリューマの加護

 

      精神操作マインドコントロール

 

        自身、そして他者の思考を、思うがままに操る能力






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