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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第二十話 嫌われ者

〜キューラ、魔女と接敵・同時刻〜


「スタンリューマさん..。暇だしポーカーでもやりません?」


「そ、そうだな!!やろうやろう!!」


 異世界に来て、俺はこのエルフの森に、地球で良く遊んでいたゲームを

普及させた。


 狩りや釣り、石並べや読書以外には、娯楽はあまり存在しないこの世界で、

俺が教えたゲームの数々は意外にもウけ、今では森中のエルフ達が、空き時間は

将棋やら麻雀やらをして時間を潰している。


「にしれも、ツルギの世界のゲームは、本当に面白いものだな..」


「じゃあ、レイズ..3枚....」


※レイズ 直前の相手が出したチップ額に、上乗せする事

    例えば、前の人がチップを3枚出し、次の人が6枚出せば、

    その人は3枚レイズしたという事になる。


「私はコールだ..」


※コール 前の人同じ額のチップを出す事


「ま..マジ..」


「では、手札開示だ。私はフルハウス..」


「ちょっ......。ワンペア..」


※役柄によって勝敗が決まる。今回は剣の負け


「い、嫌だ!!俺はまだ負けてない!!」


「いいや、君の負けだよ」


「はぁ..。レイズかけまくってどうしてドロップしないんですか..」


※ドロップ ネットで調べれば出てくる。


「そうだな..。ツルギは、本当に強いヤクが出た時は、少し頬が緩み、

目線はトランプに注がれるのだが、今回のようにブラフを貼る場合には、

相手の顔を一瞬見て、出来るだけ平然を取り繕おうとする。多分

無意識にやっているのだろうが。私の目は誤魔化せないぞ」


※ブラフ 弱い役柄のくせに、さも強い役柄が出たかのような振る舞いをする事


「対して..、スタンリューマの顔は常に真顔..。ポーカーフェイスですからね。

感情を読もうにも、何を考えているかさっぱり..。本当に、頭良いですよね..」


「そ、そんなに褒めるな!!また撫で撫でして欲しくなるだろ!!」


あ..。喜んでいる..。


「そうだ。ところで、話は変わるのだが、、

この森のエルフは発情期になると特殊な液体を飲む文化があるらしくてな。

先月、この森のある夫婦から分けて頂いたものがあるのだが....、、」


「何ですと?」


「透明で、普通の水と遜色ないように見えるし、怪しいものではないはずだ。

だが、もし体に違和感を覚えれば、回復持ちのツルギが側にいてくれると助かるのでな」


「あ、はい」


「差し支えなければ、ここで飲んでみても構わないか?」


「あ、どうぞ」


 そう言ってスタンリューマさんは台所の奥の方に行き、

その大きな液体入りの瓶を取り出してきた。


「あ、コップ用意しました。

もしかしたら何かで割って飲むものかもしれないので、

水も入れておきました」


「そうなのか?随分と用意がいいな..」


 スタンリューマは両手を使い大きな瓶を傾け、円柱型のグラスの中に、

中の液体をほんの少し注いだ。


「....。本当に大丈夫かな..。少し怖いのだが....」


「大丈夫ですよ。グッといきましょう!俺の元いた世界では、一気飲みって文化

があってですね。与えられた飲料は一気に飲み干さないと、ノリの悪い奴だと

みなされて集団リンチを喰らうんですよ。タンクトップのマッチョ軍団に」


「そ、そうなのか?それは怖い話だな。お前のいた世界の住民は、

蛮族か何かなのか?」


「....。まぁ、とにかく飲んでみましょうよ!」


『ちょっとツルギ!!スタンリューマに媚○飲ませる気なの?

やめなさいよ!!このど変態!!』


(うるさいぞ脳内メリッサ!!これはエロ目的じゃなく知的好奇心さ!

普段お高くとまってるエルフが、あの液体を飲んだらどうなってしまうのかというね..)


※脳内メリッサ 剣の妄想が生み出した、エロい事に対する自制反応。要は理性


ーゴクリ


『あぁ!!飲んじゃった飲んじゃった!!』


(ワクワク)


「ふぅ..。何だか少しばかり、身体がポカポカするような..。まぁ気のせいか..」


ー「気のせいじゃないですよ」


「ん?今何か言ったか?」


「いいえ?何も?」


「そうか..。じゃあポーカーも終わったとこだし。私はそろそろ仕事に..」



         ー「報告です!!!!!!!!」


 彼女が一枚板のダイニングテーブルの席から立ち上がり、いつもの執務室へ

向かおうと一日目を踏み出した時だった。直線距離にしておよそ3m。

施錠もなにも付いていないセキュリティシステムがガバガバの、

古めかしい(ぼろっちい)扉を開けて、一人のエルフの女性が入ってきた。


「あ!オリトスさんじゃん!!」


 彼女の名前はオリトス。エルフェンズの一人で、伝令係のようなもの

をしている。金髪のロングヘアを三つ編みにしており、目はやや吊り目。

エルフに似つかわしくない八重歯が特徴的な女性だ。


 そんな彼女が、血相抱えて入ってきた。呼吸も荒く、顔面は蒼白..。

何だろう....。嫌な予感がする......。


「なんだオリトス?」


「はぁ..スタンリューマさん!!あ、あと、ツルギさんも急いで!!早く!!」


「だからどうしたってんだ!?」


 しかし、彼女は俺の質問に答える代わりに、

口を紡ぎ、少し目線を逸らしながら、

部屋の外へ駆け出して行ってしまった。


「事情は分からないが..。とにかく彼女を追うぞ!!」


「は、はい!!」
















 その現場には、ここに案内してきたオリトス以外にも、既に4,5人の

エルフ達が集まっていた。





「え....」





 信じられないもの。というより、俺の眼下に転がるその肉塊が何なのか

理解出来なかった。



「くそ!!くそくそくそ!!どこのどいつだ!!

俺の師匠をこんな酷い目に遭わせやがった奴は!?ぶち殺してやる!!

ぶち殺す....。ああああっぁああああああああああああああ!!!!」


 俺がそこに着くよりも先に、そこにはビーストもいた。

そして何故か彼は、何者かに凄まじい程の殺意を向けながら、半狂乱になって

泣き叫んでいる。


  あれ..、今こいつ..。”誰”を酷い目に合わせたって....。




             「あぁ!!」


 戦慄し、狼狽した。いや、、そんなはずはないとそう思いたかった。。


「え...。いや、、ちょっと待て..。嘘だ嘘だ..。そんなはずは無いって..」


「ツルギさん!!」 「あ..あぁ..」 「ツルギさん!!!」


ーそうだ。回復させなきゃ..。


 俺が回復すれば、どんな怪我だって立ち所に良くなるんだ..。

だから俺は..、回復させて回復させて回復させて回復させてーー


「何でやられてんだよ!!!キューラさん!!!

強いんじゃなかったのかよ畜生!!治れ治れ治れ治れ治れ!!」


 どうして、、だよ....。


「治れ!!治れ治れ!!!治れ治れ治れ!!!!」


「おいツルギ..。テメェ死んだ人間でも肉体修繕くらいは出来んだろ!

メリッサがそうだっただろ!じゃあ何で俺の師匠は治せねぇんだ!?」


「黙れ!!お前には何も出来ないくせに!!

それにメリッサはまだ死んでいない!!」


「は..。意識もねぇ人間が、どうして生きてる事になんだよ!?

お前しらねぇようだけど、この森のエルフはみんな、お前を気味悪

がってんだよ..。死体をいつまでも散歩させる狂人だってな!!」


「は....」


 そっか..。この世界も、善人だと思ってた人間はみんな悪人なんだ..。


「ビースト!!お前!!ツルギへの発言を訂正しろ!!」


「しねぇよスタンリューマ!!おいツルギ、この回復とは名ばかりの

ペテン師野郎が!!!お前はその能力があるから、この森に住まわせ

てもらってるんだよ!!スタンリューマ!!テメェもツルギの事をよく、

能力以外に利用価値のない人間ってバカにしていたよなぁ??」


「私はそんな事一度も....」


「あはは!分かったかツルギ!?この森の人間はな!お前なんか1ミリ

も信用しちゃいねぇ!!この部外者が!!お前はただ言われた通り

負傷したエルフを治しておけば良いんだよ!!」


「ビースト!!!!」


 そうだ。種族も関係なく、生きているものはどこに行っても同じか..。


「ツルギ..」


 腹の奥から醜い怒りが湧き上がってきた。

この世界に転移し、罵詈雑言を浴びせられた俺が、メリッサを殺そうと

した時と同じような感情が湧き上がってきた。


「ビースト..」


 俺は立ち上がり、彼を殴ろうとした。


 しかしこの時、脳裏に思い浮かんだ光景は、メリッサのあの、四肢が断裂し、

冷え切った身体。流れ出て止まらない血。そして今もなお意識の戻らない、

あの、俺の人生史上最も鮮烈な光景だった。


ーそうだ..。俺はあの時決めたんだ..。もう、衝動的に行動しないって、、

怒りに任せて我を失い、後で後悔しても遅い..。


 俺が今、やるべき事は何だ?なぁ、、メリッサ..。


「おい!!聞いてんのかツルギテメェ!!ぶち殺すって言ってるだろ!!」


ードガッ


 その時、俺の背後から、強烈な殴打が炸裂し、

ビーストはその場から数m先に

位置する太い木の幹まで吹っ飛ばされ、背中を強く打ち付けた。


「い、いてぇ..。おいスタンリューマ..。テメェまでツルギの味方か!??」


「そうだ」

「わ、私もよ!!」

「私も!!」

「僕も!!」


ー「み、みんな..」


「ビースト..。お前には見えないのか?お前に挑発されて尚、

自らの目的を見失わずに、淡々と回復作業を続けるこの男の姿が?」


「し、知るか!!そうやって森のエルフの好感度を上げようってんだろ?

無駄な事をいつまでも続けやがって..。師匠はもう死んだんだ!!

そうだろ!?テメェも無駄だって分かってんだろ!ツルギ!?」


ー「無駄じゃない」


「ちっ....。そうかよ..。もう知るか....」


「お前は少し頭を冷やしてこいビースト」


 俺はこの時、

とにかく必死になってキューラの身体を回復させ続けていた。

だから、ビーストとスタンリューマとのやり取りは聞こえるだけで、

二人の表情までは見えなかったけど、ビーストがいなくなった事だけは分かった。


「頑張れツルギ!!」

「お前ならやれるさ!!」


 そうだ..。俺はやれる!!回復のイメージを広げろ!!


「ツルギ..」


「スタンリューマ、、さん..?」


 あれ、あれれ?俺いま絶賛回復中なのに....、、顔近くない?

気が散るのと、そう耳元で囁かれるとゾワゾワするっていうか..。


「くそぅ..。こんな緊迫した状況下で我慢できないなんて私は

最低な人間だ..。ツルギ....、さっきから身体が火照ってどうにか

なってしまいそうなの.。だから、その..、、、」


     ー「あなたのそばにいさせて..」


 >一♡ーー→ 「はい..」 「うん..ありがと..」


 あれ....、何だろうこの胸のざわめきは......。

いや、いかんいかん..。彼女は発情期だから仕方がないんだ..。

それにさっき媚○入りの水も飲んじゃったし..、とにかく今は回復回復..。


ー回復....


 ブワッ


「おい....あれ....」


 どうしたんだ?何があったんだ?さっき胸が一瞬ざわついた後..、

俺の周囲が緑色に発光して、強烈な光を放って、、、


「つ、ツルギ..」


 横を見たら、スタンリューマさんが驚愕の顔を浮かべていた。

後ろを振り向くと、俺を囲っていたエルフ達は皆、ある一点を凝視している。


「え..、みんな何が....」


「ツルギ....。前!!前を見ろ!!」


「へ....」


 土から煙のようなモヤが上がっていて、何が起きているのか

分からない..。ん?煙の中で何か動いて......




ー「あれ....。私....」





ーあ....。


『生き返ったああああああああああ!!!!』





 その後はもうお祭り騒ぎ。まだ状況を上手く飲み込めず、

呆然としている彼女を、あるエルフは抱きしめたり、あるエルフは

泣きじゃくったりでもう大騒ぎだった..。


「で、出来た....」


「ツルギ..。君はやっぱり凄いや....」


 俺もまだ、自分がした事を上手く把握しきれていない。

ただ、スタンリューマと共に、歓喜をあげるエルフの群を見ながら、気づけば、

というより無意識に、彼女の手を繋いでいた。


「ツルギ..」


「はい..」


         


       ー「これはご褒美だ」 「え..」


 手に、丸めてある一枚の紙を手渡された。


「すまない..。私は先に執務室に戻る。それで、場の熱も冷めたら、

キューラと共に私の所へ来て欲しい。絶対に”すぐに”来たりするなよ!」


 早口でそう言い終えたスタンリューマは、足早にその場を後にした。


 さて、紙には何て書いてあるのだろう..。








『この変態が!!あの液体が何なのかくらい、私でも知っている!!』







 いつ、書いたのだろう?殴り書きのような、汚い字で、そう書かれていた。

とにかく、この書き置きに対して、俺が言える事は一つだけ、、


ーすみません。だ。



「みんな。とりあえず、

スタンリューマがキューラさんとお話ししたいようなので..」


 気まずいなぁ..。だってこいつら、俺の事を気味悪がっているんだろ..。

スタンリューマもバカにしてたのは流石に傷ついたけどさ..。


「ツルギ..」


「あはは、オリトスさん..」


「あの!!勘違いしないで下さいね!!私たちみんな、ツルギが

この森に来てくれて感謝しているんですよ!!面白いゲームを沢山

教えてくれたり、料理の調理法を改良してくれたり....」


「え...」


「そうだ!俺なんてツルギにNTRという素晴らしい

概念を教えてもらえなければ今頃、創作活動も行き詰まっていた!!」


「僕もツルギさんにマルチ商法を教えて貰えなければ、

きっとこれからも貧乏商人として生涯を終えていましたよ!!」


「おい!最後二つは教えた覚えがないぞ!!でも、皆んなありがとう..」


「ツルギ..」


 ここで俺は、復活したキューラと初めてご対面した。

自分の成し遂げた偉業に、少し現実味が帯びてくる。さっきまでは、個人の

見分けが付かないほどぐちゃぐちゃだった彼女の顔が、今ではすっかり元通りだ。


「私は今日、あなたにこの命を、一度失った命を救われた。あなたは恩人だ..。

この森の、誰があなたを嫌おうか..」


「あはは..」


 俺は泣いた。悲しさじゃなく、嬉しさで泣いた。


「あれ、どうしたんだ?何か辛い事でもあったのか?」


「ふふっ..」



       ー「全然チゲーじゃん..」


 結局、ビーストが戻ってくる事はなかった。




















 




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