第十三話 魔女の刻印
「全く、、午後の巡回が終わったかと思えば、その足で王立図書館へーー
君には疲れという概念が存在しないのかい??」
「はい。<回復能力>がありますから..」
「そうだね。ところで、今日はどんな本を探しているんだい?
ここ(3階書庫)の本に記載されている、<呪い>に関する本は、
もうひと月前に全て朗読してやったろ?」
午後の森の巡回を終え、バカのビーストとキューラさんに別れを
つげた俺は、今いる例の図書館で、司書のサーニャとお話し中だ。
「いや、今日は雑談をしたいな〜と思って..」
「うふふ。それは嬉しい。それは君が私という人間に、多少なりとも関心をーー
いいや、”知りたい”という欲求が生じたという事だから。
だから私は、ツルギのその欲求に応えるという選択を取ろう。
私は長い間委嘱されたこの書庫で惰眠を貪るしか務めがないし、どうせ暇だから」
「それはつまり、雑談の相手になってくれると??」
「まぁ、究極に要約するとそういう事になるね。それで?君は今日、この瞬間、
一体全体この私に何を求めているのかな??」
サーニャは自身の胸元辺りに手を交差させ、腰をくねらせ、
少し甘えるような、切ない声を出した。
「君は、話を求めているのかい?それとも私をーー」
「は、話を求めています!!」
「アハハ!!君は素直で良い子だ。どれ?何でも相談に乗ってやるぞ」
一年前まではキス画だけで脳がパンクしていた彼女が、
俺のような純朴で清廉な少年を手玉に取るような、
挑発的な言動をとるお姉さんキャラ
に変貌したのにはちゃんとしたワケがある。
そうーーあれは..
<七ヶ月前>
「今日もサーニャさんの所に行って、<呪い>に関する知識を集めるぞい!!
メリッサの意識を取り戻すための手がかりが得られるかもしれないからな!!」
(実際に声に出したわけではない)
「サーニャさん!!居ますか〜?あれ、どこにも居ない。また奥の方で
寝ているのか..?誰も来ないからって職務放棄もーー」
俺は書庫の奥の方へ行き、彼女を起こしたかっただけ。
そして案の定、彼女はそこに寝転び、ピクリとも動いていなかった。
またいつもの惰眠ーー
いつものように、
無造作に伸びた髪を、埃まみれの床の上に散らし、手と足を丸めて
まるで子宮内の赤子のように身体を小さくして寝ながら、
両眼を閉じ、息を殺すように、イビキ一つかかずに寝ているサーニャさん。
しかしその日の彼女には、ある一点において、いつもとは異なる所があった。
「下半身、、スッポンポンやんけ。無防備にもほどがあるだろ..」
自称草食系男子の俺。目の前に寝ている、それも下半身丸出しの女性が居ても、
心の中では紳士を貫く。しかし野生的本能には抗えない。
何とは言わないが、一度モザイク無しを見たかったんだーー
どこがとは言わないが、俺のあそこも元気になってしまったようだし、、
見るだけ見るだけ見るだけ見るだけ
ー『キモい』
その時、メリッサが俺にそう言った気がした。
メリッサはもう、俺の頭の一番深い所に根付いてまるで離れようとしない。
俺が他の女性に少し邪な感情を抱いた時、頭の中のメリッサが俺に
『キモい』とそう一言呼びかけるような奇妙な錯覚に陥る。
そしてその後は、俺のあそこは急速に萎え、思考も冷静になるのだ。
「はぁ、俺、何やっとるんやろ。何で生きてはるんやろ?俺..」
「とりあえず、このままサーニャさんを起こしたとこで気まずうなるだけやし、
今日のとこはお暇させてもらいますわ。ほなまた..」
賢者タイムのまま、書庫を出ようとした。その時やったーー
「えへへへへへ..。ツルギィ....。待ってよ〜..。私を置いてどこに行くの〜?」
「すんません。生まれてきてすみません..」
「ん〜〜?私ぃ〜、今日はツルギと話したい気分なんだぁ」
「すみーーー」
ここまで話して、俺はようやくサーニャの違和感に気が付いた。
脱げた下半身の衣服、そして傍に開いた状態で置かれた、いかがわしい
イラストが描かれた書物の存在ーー
「あ....。ついにですか..。おめでとうございます....」
そうして話は、現在に戻る。
つまり、偶然そういった知識に触れ、そういう事
に目覚めてしまった彼女は、俺のような童貞を弄ぶものの、経験はない。
性知識だけを蓄えたモンスター
ー処○ビッチになってしまったのである
「それで、今日はどんな知識をお求めなのかい?」
「えっと..。ある人を過去の状態に戻せる<呪い>があればな〜って..」
♢
とまぁ、茶番はここまでにしておいてー
本題は別。実は、(メタ的な発言になってしまうが)前話の後、エルフの森で
また一人行方不明者が出たのだ。
今回突如姿を消したのは、ミートという名の女性。
先日メリッサと共に森を歩いていた時、俺に話しかけてきた娘だ。
彼女もまた、先日の行方不明者同様、最後の目撃談は、
一人で森に入っていくとこを見たーーであるらしい。
二日連続で、人がいなくなったのだ。
エルフは定住を好む習性上、縁もゆかりも無い土地に行くのはまずないらしい。
だからどこを捜索しても見つからない現状は気味が悪い。
スタンリューマはこれ以上の行方不明者を出さないために、エルフの森へ
外出禁止令を一時的に出し、捜索隊の動員も取り止め、自身の側近である
<エルフェンズ>のみによる捜索を開始するそうだ。
「で、ここからが本題。森の中から、俺が二日連続である記号を見つけた。
(紙に書きながら)それは木に彫られていて、形もほとんど変わらない..」
「......」
「でも!昨日は瞳の中に7つだった星が、今日は6つになっていたんだ!」
「なるほど..。スタンリューマは..何て?」
「....。今回の事件との関連性はないってさ....。その一点張り..」
ー「そんなはずない!!」
俺が最後まで言うのをもう待ちきれんと言わんばかりに、
俺は今までに聞いたことが無いような、彼女の咆哮を聞いた。
「..。それはね!!!!」
ー「魔女の刻印よ」
恐ろしく落ち着いた口調で、、彼女はそう言い切った。
背筋がゾッと、震える感触があった。




