第十一話 始まり
俺は一人で、森の巡回をしているーー
スタンリューマと同行する予定だったのだが、さっきの件が気まずくて、
一人でツリーハウスを出てしまった。
所持品は、弓、矢(6本ある)、ナイフ
巡回ついでに夕食のための狩りをしよう。野兎も良いが、俺もそろそろ
猪や鹿みたいなでかい動物も捕らえたいのだ。
鬱蒼とした森の茂みの中で、俺は息を潜めつつ移動した。
「きゃあ!!」
ーすると、その時だった。
森の奥から、甲高い声の女性の悲鳴が聞こえたのはーー
まさか、野生生物にでも襲われているのか?エルフだし狩りには
熟知しているから大丈夫だと思うけど、やはり万一の事がある。
音の大きさ的に距離もそこまで離れていないしなー
俺はすぐさま、声のする方へ向かって走り出した。
時間にしておよそ1分。全力疾走だったが、<体力回復>をかけながら走った
から全然疲れていない。さて、、俺に助けを求めた(求めていない)エルフ
はどこへやら??
辺りを見回すが、そこにあるのは木、木、木ーー
木しかない。森だからそりゃあ当たり前の話だが、
肝心の声の主がどこにもいない。
俺の聞き間違いか?とも疑ったが、あれだけの音を幻聴として捉える程、
俺はまだ耄碌していない。
しかし、これは耄碌したと言わざるを得ないのかもしれん。
人がいた気配すら感じられないこの場所で、、、
ーん?
ここで俺がそれに気付いたのは、本当に単なる偶然だった。
♢♢
「先日のお昼頃から、狩りに出かけたエルフの女性が一人、
行方不明になっています。誰かと森に入っていくのを見たというのが、
彼女を見た人物の中でも、最後の目撃証言となっておりーー」
「そうかサテラスーー。報告ありがとう。
引き続き、森の捜索を頼む」
「はい」
翌日、ここエルフの森で、エルフの女性が一人行方不明になったとの情報が
スタンリューマの元に入ってきた。
行方不明になった女性の名前はエリストス。俺も幾度か関わる機会はあったが、
歌が上手い娘で、よく小鳥たちと戯れいるような温和な性格の持ち主だった。
人から恨みを買うような気質ではないから、殺された..という線は薄いだろうが、、
「あのーー」
「なんだ??」
「やはり、昨日俺が聞いた叫び声と、何か関係あるのかなと思って....」
「..。それは十分”あり得る”話だ。お前が聞いたその叫び声は、午後の巡回中の
出来事だろう?彼女が行方不明になったのも先日の午後だ。時系列的にも、
辻褄はあう。しかし、、そこには誰もいなかった..」
「....。そうです..。でも、そこにはある”もの”がありまして..」
「何だ??それは聞いていないぞ??」
「あの....。紙とかって用意して貰えますかね..」
「分かった。持ってきてやる」
そうして、彼女から手渡された一枚の紙と羽ペン。
俺はスタンリューマの机に置かれているインク入れでペン先を濡らし、
漆黒の液体を紙に押し当て、ある”記号”?のようなものを書いた。
その”記号”は、俺が昨日、あの森の中で、彼女の叫び声がした場所付近の
一つの木から見つけた”記号”だ。
鋭利なナイフで削って作ったのか?木は白い面を除かせていた。
その”記号”は何らかの意図を持って作られたのか?それとも無作為に?
俺はただ、何か今回の事件の一助になればと思い、紙にその”記号”を書いた。
丸の中に、星マークが”7つ”形取られているそれを
「このマークが木に彫られていたんです..」
この時スタンリューマさんは、
ーエルフの誰かが、遊びで彫ったのだろう。多分今回の行方不明事件
との関連性は薄いと、そう一言だけ残した。




