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異世界に転移して回復能力を手に入れた俺が、老化の呪いを受けた超毒舌ヒロインを助ける羽目になった件  作者: ラストジェネレーション


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第十話 罪悪感の行方

メリッサが死んだー


その事実は、俺にとっては到底受け入れ難いものだった。


一時期は、彼女に殺意さえ抱いていたのに、、

いや、俺の殺意が彼女を殺すに至った。ーー俺のせいで彼女は死んだ。

これはある種の誤謬に過ぎないし、客観的に考えても事実とは異なるものだろう。

しかし、いくらそう思っても、いくら、自分のせいじゃない仕方ない事なのだと

割り切ったところで、それらは消えるはずがなかった。


後悔、自責、罪悪感、、俺はこれらの感情で押しつぶされそうだった、、


眠っているかのようで、一向に目覚めないメリッサーー


あの後、彼女の心臓は再び脈を打ち始めた。

だから今の彼女は肌つやも血色も良く、温もりもある。

俺の回復能力が心肺機能も回復させたーー

しかし、彼女は人形みたいに居るだけで、何をしても反応がない。


そして<老化の呪い>はもう、俺が回復能力をかけなくても発動しない。

彼女はもう、お婆ちゃんになる事もなかった。



「メリッサ、今日は良い天気だねーーー」


木漏れ日が、俺とメリッサの体を照らした。森林浴をしながら、

二人で外を歩くーー。エルフの森は、自然が豊かで、空気が美味しい。

今ではこれが、毎朝の日課になっている。


「おはよう!ツルギさんと..メリッサさん....」


「おはよう」


道ゆくエルフの女性、、彼女とも、いや、この森に住むエルフとはもう全て

顔馴染みだ。


「あのーーー」


「.....。ん?どうされましたか?」


「あの..。いつまで”そうしている”んですか....?」


「何を....ですか????」



ートン


まな板の上で、新鮮な生野菜を切る。

この、レタスによく似た葉物は、水々しく噛みごたえがあって美味しい。

包丁で切って、フライパンで少し焦げ目がつくくらいまで炒め、塩

(この世界では別の名称だが)をまぶしただけでかなり美味しい。


これを主菜に、おかずは川で採ってきた未知の魚2,3匹と、

スタンリューマさんと狩りで捕まえてきた、野ウサギ?

(頭頂部から小さな角が2本生えている)に似た何かの丸焼き。



『いただきます』


「美味いな。やはりツルギは料理の腕が人一倍ある。

もう、料理当番は毎日お前で良くないか?」


「ははっ..。そんな事言ったら、家事でスタンリューマがやる事

といえば、皿洗いくらいしか残ってないじゃないですか」


「ちっ、バレたか。良いかツルギ..。私は正直、家事をするのを

億劫に感じている。王としての職務もあるのでな。出来れば全部

お前に任せたい」


「いや..。そう言われて断れる立場ではないのは承知ですが、、

ここは、はっきり、、NOと言わせて頂きます!」


「そうか..。残念だな....。では、、今日の森の巡回は、

ツルギにも手伝って貰うからな!!」


「畏まり!!じゃあ、ご馳走様でした!一旦メリッサの様子を

見てきます!!」


「なぁ....。ツルギ....」


「何ですか??」


「その..、非常に言いにくい事ではあるのだが......」




「畜生!!!どいつもこいつも、メリッサはもう死んだだって!?

可笑しいだろなぁメリッサ!!どこからどう見てもお前はまだ生きている!

心臓だって動いてるし、身体だってこんなに温かいのに....」



「意識だって、きっとその内戻ってくるさ..。だから、、お前の意識が戻るまで、

俺はメリッサに回復能力をかけ続ける..。そうだ!今日は昼食で昨日獲ってきた

野ウサギを焼いて食べたんだ!!俺、この世界に来て初めて狩りをしたけど、

弓って弦を引くのに腕力使うから、狙い通りの場所に飛ばすのむずいんだな..」




ー”あの日”から、今日でちょうど一年


メリッサの意識は、一向に戻る素振りを見せなかった



「なぁ..、メリッサ....。なんか言ってくれよ..。

狩りだって、今までは全然だったけど、

最近はある程度当てられるようになったんだぜ..。

トラップの作り方だって覚えた..。

だから早く目ぇ覚ましてくれよ......」


置き物みたく、何も話さない彼女に、一方的に話し続けてもう1年立った。

日に日に募っていく、メリッサに対する俺の罪悪感と、このまま一生、

彼女の意識は戻らないのではないか?という果てない不安..。


エルフ達も、最初はよくメリッサの事を見舞いに来てくれていたが、最近は

もう、完全に足が途絶えた。それどころか、彼女はもう死んでいる。

だから、、早く弔ってやれなどと抜かすような輩まで現れた。


そして今日、この一年、同居というか..居候させて貰っている

スタンリューマさんにも、同じ事を言われた。


『彼女はきっと、もう目覚める事はない..。いつまでも現世に縛り続けるのは

可哀想だ..。だから来週、、』ーーこの後に続く言葉はもう、聞いていられなかった。


ー俺は食べ終わった陶器の食器を、壁に投げつけた。

きっと高い物に違いない..。

しかし、美しい紋様の持つそれらは音を立てて破壊された。


後でスタンリューマさんに謝罪しに行かないと..。それに、午後の森の巡回

だってあるんだ....。


ーピク


「メリッサ..」


彼女の手をとると、ピクッと、動くような反応があった。


「メリッサ!!!」


反応はない。まぁ、想像通りと言ったところか、、、

これは、彼女の意識が戻ったからではなく、ラザロ兆候。

と呼ばれるものであるという事は、

まだ俺が自殺する前、地球で読んだ本(確か脳死に関するものだった)

に書いてあった内容と全く同じだったから、もう既に知っている。


この世界に、、奇跡は存在しない。奇跡と呼ばれるものは、人間が

捉えきれない必然の連続でしかない。






「あ....」


この時。俺は、ある思考が頭の中をよぎってしまった

スタンリューマの、”来週”という言葉に、この生活の終着を見てしまったから。

でも、きっと俺がこの思考を他者に打ち明けたとて、非難されるどころか、

寧ろ良く決断できたと褒め称えられるだろう。


死人に口無し(無論メリッサはまだ死んだとは思っていないが)とはまさに

その通りで、死者が生前に抱いていた意思などは記録として残らない限り、

他者が都合の良い筋道を立て、自分の経験の枠からその”死者”を語る。


ーというのも十年前、

親戚のお葬式で『○○(親戚の名前)はとても優しい主人でした』と、

配偶者が語っていたのだが、

果たしてその死んだ親戚は本当に優しい人間だったのか?

それはもう、彼女の経験からしか判断し得ない。


だから人が死に、その人が誰からも忘れられれば、、その人はまた”死ぬ”。

言い返せば、生物的には死んでも、その人の生きた軌跡を誰かが

記憶の中に留めておけば、その人は死んだ事にはならない。


俺はそう、考えてしまった。

全ては、メリッサの肉体が消え土にかえっても、、

彼女の死を受け止めたくないーーそのための言い訳に過ぎない..。



「メリッサ....。ごめん......」


そして俺の”その”言い訳はいつも、俺に絶大な罪悪感を与える。


しかし、彼女にいくら謝ったところで、彼女は『どうして謝るの?』

とか、聞き返してくる事はもうない。


俺はもう、この罪悪感を誰に向けて良いのかも、分からなくなっていた。





















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