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colorful〜rainbow stories〜  作者: 宮来 らいと
第2部 櫻井シオン編
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第2章 露草色の雨に濡れて(櫻井シオン編)後編

雨に濡れながら公園に行くと、屋根付きベンチの下にシオンが座っていた。


櫻井シオン

「はあ…………ずぶ濡れ。…………あ、莉緒。追いついたのね。」


真瀬莉緒

「シオン…………俺、折り畳み傘持っていたのに…………。」


櫻井シオン

「あ、そうなの!?…………早くいってよ。」


真瀬莉緒

「ごめんごめん。でもシオンも早とちりすぎ。」


櫻井シオン

「そうね…………それはこっちもごめん。」


真瀬莉緒

「うん…………。」


櫻井シオン

「それにしても私たちずぶ濡れね…………。」


真瀬莉緒

「雨が止むまで、ここに居ようか。雲の流れを見てると早々に止むだろうし。」


櫻井シオン

「そうね…………。」


僕たちは屋根付きベンチで雲の流れを見ながら、雨の様子を見た。


空の色は露草色だったが、待っても待っても雨が止まない。


待ちくたびれた僕たちは折り畳み傘1本を2人で使うことにし、学園まで歩いて帰った。


もう少しで学園に着こうとしたその時…………。


ギギ……ガガ…………。



真瀬莉緒

「えっ…………。」


ギギ……ガガ…………。


耳鳴り……?くっ……苦しい……!


ギギ……ガガ…………。


真瀬莉緒

「ぐっ……ああああ…………!」


櫻井シオン

「り…………莉緒!?大丈夫!?」


僕はそのまま意識が遠のいていく………………



六郭星学園 莉緒・ハルトの部屋



目が覚めると僕は自分の部屋に居た。


??

「おおおお!!目が覚めたようだね!!」


真瀬莉緒

「う、うわあ!?」


思わず声を出すと、身体が重たい。


??

「ノンノン!君は今熱を出しているから、動いちゃダメよん!!」


そうか…………熱でたのか…………。それにしてもこの人は一体…………?臙脂のネクタイや服装からすると同じ学生のようだけれど…………?


真瀬莉緒

「あの…………あなたは?」


土原ガク

「自己紹介は必要だねぇ!僕は土原ガク(つちはら がく)!よろよろ!!」


真瀬莉緒

「はあ…………どうも。」


土原ガク

「シオンちゃんって言ったかな?彼女が助けを求めてきてさ、駆けつけると君が倒れていたわけ!」


真瀬莉緒

「そうだったんですか…………。」


土原ガク

「そんな感じ!じゃあ僕はそろそろ帰るからまた会ったらねぇ!バイバーイ!」


土原さんは風のように去っていった。


真瀬莉緒

「なんだったんだ一体…………?」


不思議に思っていると、そこにシオンがやってきた。


櫻井シオン

「莉緒。お粥持ってきたわよ。」


真瀬莉緒

「ああ、シオン。ありがとう。」


櫻井シオン

「うん。その様子だと明日までには治ってそうね。でもまだ動いちゃダメ!ゆっくり治していきましょう。」


真瀬莉緒

「わかったよ…………。」


櫻井シオン

「はい。あーん。」


真瀬莉緒

「え!?シオン?」


櫻井シオン

「動いちゃダメなんだから。食事くらいなら介抱してあげる。はい。」


真瀬莉緒

「えっと…………じゃあ…………。」


僕はシオンに言われるがままにお粥を食べさせてもらった。


シオンが作ったお粥だろうか?とてもしょっぱい味がするが今はそれがとても美味しく感じる。


櫻井シオン

「はい。いっぱい食べよう。どんどん食べて元気を出そう。」


真瀬莉緒

「はいはい。」


僕はシオンが作ったお粥を残すことなく食べ切った。


櫻井シオン

「はい。残さずに食べたね。じゃあ、ゆっくり休んでね。」


真瀬莉緒

「うん。シオン…………ありがとう。」


櫻井シオン

「どういたしまして。」


シオンが部屋から出ていくと、僕は明日に備えて、眠りについた。



翌朝…………


僕は起き上がると身体がとても軽かった。体の火照りもなく、すっかりと熱は下がったようだ。


窓の方を見ると浅越さんがコーヒーを飲みながら佇んでいた。


浅越ハルト

「おう、おはよう。志奈から聞いたぞ。その様子だとだいぶ調子は良くなったんだな。」


真瀬莉緒

「浅越さん…………。すみません。迷惑かけちゃいましたよね。」


浅越ハルト

「いや、熱は出ていないから大丈夫だ。それよりも病院の件はすまなかったな。」


真瀬莉緒

「あ、いえ…………。」


浅越ハルト

「櫻井とは色々あるんだ…………色々と…………な。」


真瀬莉緒

「……………………。」


浅越ハルト

「さ、お互い、自分の教室に行こうか。みんなも待っている。」


真瀬莉緒

「そうですね。行きましょうか。」


僕たちはそれぞれ朝食を終えた後、自分の教室へと向かった。



六郭星学園 Iクラス教室



真瀬莉緒

「おはようございます。」


そう言って教室のドアを開けると、シオンたちがいた。


櫻井シオン

「あ、莉緒!おはよう。治ったんだね。」


霧宮ナツハ

「良かったわね。お粥。食べさせてもらって。」


真瀬莉緒

「あ…………いや。」


美園エリカ

「ふふふ…………そんなに嫌がらなくても良いじゃない。」


真瀬莉緒

「それは…………まぁ…………。」


櫻井シオン

「それよりも莉緒。治ったなら、作曲の練習をしないとね。最高の曲を作らないと!」


真瀬莉緒

「ああ、そうだね。それじゃあ授業が終わったら、早速音楽室に行こうか。」


櫻井シオン

「ええ!頑張っていくわよ!」


真瀬莉緒

「ああ!」



六郭星学園 音楽室



授業が終わり、音楽室に行くと、僕たちは早速練習に取り掛かった。


やはりシオンも音楽経験者。曲調の飲み込みペースが早い。


そう思った僕は…………


真瀬莉緒

「シオン。今度は全体を通して演奏してみよう。」


櫻井シオン

「初めての全体通しね!良いわ、やってみましょう!!」


僕たちは全体を通して演奏を始める…………



演奏を終える…………結果は言わずもがなだった。


櫻井シオン

「莉緒。」


真瀬莉緒

「シオン。」


僕たちはハイタッチした。最高の作品を作り上げたからだ。


櫻井シオン

「やったわね!これなら声優さんに…………!!」


真瀬莉緒

「ああ!きっと…………!!」


お互いにとても満足できた。あとは音楽の笛花先生に聞いてもらうことにした。


今日はもう切り上げるために後片付けをしていると、シオンのスマホが鳴る。


櫻井シオン

「はい…………もしもし…………えっ!?」


シオンは電話に出ると驚きの表情を出していた。


櫻井シオン

「はい…………今すぐ行きます!」


シオンは慌てて電話を切った。


櫻井シオン

「莉緒!!かいやが…………かいやの容態が急変したって!!」


真瀬莉緒

「かいやが!?…………急いで行かないと!!」


櫻井シオン

「ええ!行きましょう!!」


僕たちは急いで来川医療センターに向かった。



来川医療センター



医療センターに着き、僕たちはかいやのいる病室に入る。


真瀬莉緒

「かいや…………?」


そこには昏睡状態のかいやがベッドに横になっていた。


櫻井シオン

「かいや!!」


シオンはかいやに近づく。声をかけてもかいやは返事をしない。


櫻井シオン

「かいや…………。うぅ…………。」


シオンは涙を堪えていた。


??

「こうなるんだったら、俺の方を優先してほしかったな!!」


そんな心無い言葉が後ろから聞こえる。


僕たちが後ろを振り向くと、そこには親しい人がいた。


真瀬莉緒

「浅越さん…………?」


櫻井シオン

「ハルト!!私は…………!!」


浅越ハルト

「ふん…………言い訳なんて聞きたくもない。あれがなければ妹は…………!!」


真瀬莉緒

「妹…………?妹さんが関係しているんですか?」


浅越ハルト

「莉緒…………すまないが今は答えることはできない。…………失礼する。」


浅越さんは僕に気づくと申し訳なさそうになり、病室をあとにした。


そのあとすぐに来川さんが入ってきた。


来川ナナ

「大丈夫ですか?何かありましたか?」


櫻井シオン

「………………なんでもないです。すみません。」


シオンがそう呟くと来川さんは仕方ないと思ったのかため息をついた。


来川ナナ

「浅越さんのことですよね?やっぱりあのことが…………。」


真瀬莉緒

「あのこと…………?」


来川ナナ

「…………いえ、なんでもないです。では失礼します。」


そう言うと来川さんも病室をあとにする。


病室では今にも泣きそうなシオンがかいやのベッドの隣の椅子に座っていた。


僕はただそれを見守ることしかできなかった…………。

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