第２章 露草色の雨に濡れて（櫻井シオン編）前編
夏。作曲も大事だが、学校行事も大切。
今日はクラス対抗大運動会が行われる。
神谷乙音
「みんな準備は良い？みんなで１位をとるわよ！」
もうすっかり慣れたのかクラスメイトのみんなは「はい。」と言った。
何しろこの大運動会の順位により、２ヵ月後の文化祭の出し物の選択権が変わっていく。１位はもちろん出し物が被ったとしても優先的にこちらが第１希望を通せる。なのでなるべく上位を目指さないといけない。
櫻井シオン
「よーし！！頑張るわよ！」
さすがはシオン。やる気満々だ。
霧宮ナツハ
「２人は騎馬戦に出るのよね。」
櫻井シオン
「そうよ。エリカたちは綱引きに出るのね。」
美園エリカ
「ええ、私の左腕が疼くわ……！」
真瀬莉緒
「え……？」
美園エリカ
「え、あ、いや……なんでもないわ。」
真瀬莉緒
「…………。とりあえず頑張ってください！」
美園エリカ
「ええ…………。」
綱引きの対戦相手はＣクラスだ。中でも注目しているのは２人の男子だ。
ふんわりとしたヘアスタイルなのが、風亥ノクア(かぜかい のくあ)。頭脳明晰で、運動神経も抜群。その才能があってか、学園キングと言う番組に出演する有名人だ。テレビに出る機会もあり、霧宮さんとも面識があるらしい。
髪の先端が緑に染まっているのが、小鳥遊カルマ(たかなし かるま)。以前まではいわゆる中二病と言われていたらしく、髪の毛はその名残が残っているらしい。ただあることをきっかけに中二病を辞めたとか。美園さんとも関わりが深いらしい。
霧宮ナツハ
「今日はよろしくね。」
風亥ノクア
「ああ、よろしく。勝つのはこっちだ。」
お互いに挨拶を交わす。
一方で、美園さんたちは…………
小鳥遊カルマ
「美園…………お前がやっていることは恥ずるべきものと教えてやるからな。」
美園エリカ
「ふん。なんのことかしら？私の左腕の力に圧倒されるのよ。」
話を聞いていると美園さんってやっぱり……？
その会話の後、立ち位置に移動してくださいとのアナウンスがあり、出場者は全員立ち位置に移動した。
そしてスタートのピストルが打たれ、両クラス綱を引っ張った。結果は……霧宮さんたちの勝利だった。
２人はやったぞと言わんばかり、嬉しい表情で戻ってきた。
次は僕らの番だ。負けられない……！
体育委員
「次は騎馬戦です！出場者の方は先生の指示にしたがって並んでください！」
騎馬戦には姉さんと浅越さんが参加している。姉さんだけには負けたくない！
騎馬戦の結果は…………！
体育委員
「大将が敗れました！１位はＩクラスです！」
真瀬莉緒
「シオン！勝ったぞ！！」
櫻井シオン
「やった！！嬉しいわ！！」
浅越ハルト
「負けたか…………。」
真瀬志奈
「なかなかやるわね…………。」
クラスのベンチに戻る。すると、霧宮さんたちが祝福してくれた。
霧宮ナツハ
「おめでとう。２人とも。」
美園エリカ
「ふふふ…………なかなかやるわね。」
真瀬莉緒
「霧宮さん…………美園さん…………ありがとうございます！」
そしてすぐに結果発表にうつった。
体育委員
「総合結果です。１位はＩクラスです！」
真瀬莉緒
「やった！みなさんやりましたよ！」
霧宮ナツハ
「ふう、まあこんなものよ。」
櫻井シオン
「やった！１位は嬉しいわね！」
体育委員
「なお最下位のＣクラスには罰ゲームがあります。」
美園エリカ
「罰ゲーム……？」
体育委員
「罰ゲームを喰らっていただくのはくじ引きで当たりを引いた３名に行っていただきます！」
真瀬志奈
「えぇ……嫌だわ……」
体育委員
「ではＣクラスのみなさん！くじを引いてください！」
Ｃクラスのみんなが１人ずつ引いていくそして……
小鳥遊カルマ
「ぐああ……！！これは痛い……。」
浅越ハルト
「ノクア！早く行ってくれ！」
風亥ノクア
「わかっている！けど足が……！」
罰ゲームを喰らうのは風亥さんと浅越さんと小鳥遊くんだ。
罰ゲームは足つぼマット１ｋｍだ。見るからに辛そうだ。
霧宮ナツハ
「うわぁ……これは痛いわね……。」
真瀬志奈
「当たらなくて良かった……。」
櫻井シオン
「それにしても大変だね……。」
美園エリカ
「ええ……足が悲鳴をあげるわね……。」
そうこう言っていると３人とも１ｋｍを歩ききった。歩き終えた３人はその場に倒れ込んだ。
浅越ハルト
「くそぉ…………櫻井！覚えていろよ！！」
シオンは浅越さんにそう言われると少し動揺するも、その後すぐに笑みを浮かべた。
六郭星学園寮 莉緒・ハルトの部屋
浅越ハルト
「いててて…………。」
真瀬莉緒
「本当に大丈夫ですか？」
浅越ハルト
「ああ、なんとかな…………。まだ少し痛いが歩けるくらいにはなったかな…………。」
真瀬莉緒
「そうですか…………。」
浅越ハルト
「しかし櫻井の奴に負けるとはな…………。」
真瀬莉緒
「そういえば…………シオンだけは名字で呼ぶんですね。」
そう、浅越さんは、ノクアやカルマなどクラスメイトはもちろん、他クラスの人、たとえばナツハやエリカといった僕のクラスメイトも下の名前で呼んでいる。けれどシオンだけは櫻井と呼んでいる。
真瀬莉緒
「なんで名字で呼ぶんですか？」
浅越ハルト
「櫻井は櫻井だ！！」
浅越さんは声をあげる。
浅越ハルト
「…………すまない。大きい声を出してしまって。」
真瀬莉緒
「いえ…………別に構いませんが…………。」
浅越ハルト
「ふう…………一度頭を冷やしてくるよ。じゃあな。」
真瀬莉緒
「あ…………はい。いってらっしゃい。」
僕はそういって浅越さんを見送った。
浅越さんはシオンに少し嫌悪感を抱いているのだろうか…………？
そうだとするとシオンは何をやらかしたんだろうか？
まあいい。僕はとりあえず、明日の準備をして寝ることにした。
