第４章 黄緑色のキーホルダー (小鳥遊カルマ編) 後編
六郭星学園 大講堂
いよいよ、課題発表当日になった。課題はＫクラスから１ペアずつ発表していき、そこからＪクラス、Ｉクラスといき、Ｓクラスと回っていく。１ペアずつなので３日間に分けて発表をしていく。
そして今日はＣクラスが発表していく。
Ｃクラスのトップを飾ったのは風亥さんのペアだ。
風亥さんのペアは戦国武将の甲冑を再現した模型を作った。
霧宮ナツハ
「ふふふ……なかなかやるわね……！」
霧宮さんも少し驚いた様子が見れた。
中盤に入ると次は浅越さんのペアが発表の時間になった。
浅越さんのペアはマジックショーを披露した。
櫻井シオン
「すごーい！本当にすごいわ！」
シオンがかなり褒めている。これほど言うことはなかなかの実力なのだろう。
そして終盤に入る……そしてＣクラスのトリを飾ったのは私たちだ。
真瀬志奈
「いよいよですね。…………大丈夫ですかね？」
小鳥遊カルマ
「問題ない。デモを作った時のように演奏をすれば良いだけだ。」
真瀬志奈
「…………そうですね。小鳥遊さん。頑張りましょう！」
小鳥遊カルマ
「…………ああ！」
私たちは互いに頷き、ステージへと立った。
真瀬志奈
「それでは…………行きます！！」
そう言って私たちは演奏を始める…………！！
演奏を終える、他の人の反応は…………？
男子生徒Ａ
「…………すごいや！とても良い曲を聴いたよ！」
女子生徒Ｂ
「とても良かった……！良い曲をありがとう！」
私たちは拍手喝采に包まれる。そうか……やったんだ……！
柿本瑛久
「………………。本当に良かった。」
神谷乙音
「良かったわね。瑛久。」
柿本瑛久
「ああ……。ああ…………！誇りに思うよ…………。」
ステージに降りると私たちは互いに喜びを分かち合った。
小鳥遊カルマ
「真瀬！やったな！！」
真瀬志奈
「はい！みんな大喜びです！やりましたね！！」
小鳥遊カルマ
「この反応ならきっと声優さんも喜んでくれる！」
真瀬志奈
「ええ！きっと…………！！」
……………………そして、好評だった課題発表から日にちが経ち…………。
六郭星学園 応接室
いよいよ声優さんと曲について話す時が来た。私と小鳥遊さんは先に応接室に座っていた。
真瀬志奈
「いよいよですね…………。」
小鳥遊カルマ
「ああ…………。」
小鳥遊さんも少し緊張気味だ。そして、ドアからノックが聞こえ、ドアが開いた。
？？
「………………失礼するね。」
おとなしめな先生が入ってくる。おそらくは間宮先生だろう。
間宮舞来
「…………あの…………ごめんなさい！！」
間宮先生は開口一番に謝罪の言葉を口にした。
私たちはそれに驚いた。
小鳥遊カルマ
「何があったんですか？」
小鳥遊さんは恐る恐る話を聞いた。
間宮舞来
「………………彼に話をつけてきたんだけれど…………もうひとつの楽曲があるから難しいかもと…………。」
真瀬志奈
「そんな…………！」
間宮舞来
「………………ああ、でも今、彼が来ているから、デモを聞いてどちらかに絞るって言っていたわよ。」
小鳥遊カルマ
「なるほど…………わかりました。ではお願いいたします。」
間宮舞来
「……………………ええ…………入ってきて。」
声優さんは申し訳なさそうに応接室に入ってきた。
そして…………デモを聞いてもらった。
デモを聞いているうちに声優さんは真剣なモードに入っていった。
そして、質問を問いかけてきた。
小鳥遊カルマ
「はい。こちらはですね…………。」
小鳥遊さんは質問を淡々と答えた。
２人の話はとても真剣だった。淡々と答える小鳥遊さんも次第に熱量がこもり、どんどんと答えていく。
小鳥遊カルマ
「歌詞はこちらです。よろしくお願いいたします。」
歌詞を渡し、話が終わると、声優さんは考え込み…………立ち上がり、頭を下げて応接室から出ていった。
真瀬志奈
「大丈夫でしょうか…………？」
小鳥遊カルマ
「話を聞いた限りでは十中八九、もうひとつの楽曲が選ばれるみたいだが…………。１割２割は…………その希望に賭けるぞ！」
真瀬志奈
「小鳥遊さん！」
運命の日は卒業式の翌日。その日に声優さんのラジオが放送される。その日にもうひとつの楽曲か……私たちの楽曲か…………。
私たちはその１割２割に賭けるしかなかった。
…………そして。
六郭星学園 大講堂
ＳクラスからＫクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
柿本瑛久
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。１年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
１人１人名前が呼ばれていく。
柿本瑛久
「浅越ハルト。」
浅越ハルト
「はい。」
柿本瑛久
「風亥ノクア。」
風亥ノクア
「はい。」
柿本瑛久
「小鳥遊カルマ。」
小鳥遊カルマ
「はい。」
仲の良かったみんなが呼ばれていく。
そして私も呼ばれる。
柿本瑛久
「真瀬志奈。」
真瀬志奈
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
柿本瑛久
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
小鳥遊カルマ
「全員同じ大学に行くのか……。」
浅越ハルト
「ああ、しかもこの間のテストの上位５０人全員が同じ大学に行くからな。」
風亥ノクア
「奇跡ってあるんだな……。」
浅越ハルト
「しかし…………いよいよだな。今日で２人の結果がわかるんだろう？」
風亥ノクア
「応援しているからね。」
真瀬志奈
「はい。ありがとうございます。」
そして、日が暮れて…………
六郭星学園 Ｃクラス教室
教室には私と小鳥遊さん、風亥さんに浅越さん。そして莉緒たちもいる。
みんなでラジオで発表される楽曲の結果を知るためだ。
真瀬莉緒
「いよいよだね…………。」
真瀬志奈
「ええ…………。」
緊張で思わず唾を飲み込む。
美園エリカ
「…………あら？カルマ……そのキーホルダーは？」
小鳥遊カルマ
「ああ、これは…………。ボウリングで当たってな。」
真瀬志奈
「あ…………！」
小鳥遊さんが持っていたのは以前ボウリングで獲得したキーホルダーだ。
大切に保管して暮れていたんだ…………！
霧宮ナツハ
「あ、始まったわよ。」
ラジオパーソナリティ
「皆さんこんばんは。今回は歌からのスタートです。今回は声優さんに新曲を披露していただきます。」
私たちの心臓はドキドキしている…………。
ラジオパーソナリティ
「それではどうぞ…………！」
イントロが流れる…………そのイントロは聴き馴染みのある…………私たちの曲だ！！
真瀬志奈
「やりました！！」
男性声優
「聞いてください！僕はこの彼の思う気持ちを心から歌います…………！！」
歌の披露が終わる。教室にいるみんなが拍手をする。
すると…………小鳥遊さんが…………。
小鳥遊カルマ
「中庭に行く。待ってるぞ。」
そう言って、教室から飛び出した。
真瀬志奈
「あ、小鳥遊さん！」
私は立ったまま動かずにいると美園さんが私の肩を叩く。
美園エリカ
「行っといで。カルマが待ってる。」
真瀬志奈
「………………はい！」
私は中庭へと向かった。
六郭星学園 中庭
辺りは外灯に照らされていた。その外灯の下で小鳥遊さんは待っていた。
小鳥遊さんはその下でキーホルダーを手にして、私の方を見た。
真瀬志奈
「…………そのキーホルダー……大切に持っていたんですね。」
小鳥遊カルマ
「ああ。…………真瀬。」
真瀬志奈
「はい？」
小鳥遊さんはキーホルダーを握りしめ、私のところに来る。そして、手を差し伸べた。
小鳥遊カルマ
「あの時の言葉…………ずっと考えていた。…………そして決めた。…………どんな姿であろうとも、俺は真瀬…………いや、志奈の隣に居たい。」
真瀬志奈
「小鳥遊さん…………！！」
小鳥遊カルマ
「志奈。もし、受け入れてくれるのなら…………俺の名前を呼んでくれ！」
真瀬志奈
「……………………私は…………。」
答えはもう決まっている。
真瀬志奈
「カルマ…………！」
小鳥遊カルマ
「志奈！！」
私たちは互いに名前を呼ぶと、体を抱きしめあった。
虹谷サイ
「彼は違ったか………………。………………まだだ……他を当たろう。」
小鳥遊カルマ編 完
