第2章 グレーゾーンを踏み入れて (小鳥遊カルマ編) 中編
六郭星学園 音楽室
大運動会から数日……私は美園さんに聞かせたメロディを小鳥遊さんに聞いてもらった。
小鳥遊カルマ
「なるほど……。」
小鳥遊さんは深く頷いていた。気に入ったのだろうか?
真瀬志奈
「どうですか……?」
小鳥遊カルマ
「これにドラムの音を混ぜるんだろう?」
真瀬志奈
「は、はい。そうですけど……?」
そういうと、小鳥遊さんはドラムの目の前に座った。
小鳥遊カルマ
「真瀬。今の音源をもう1度聞かせてくれ。」
真瀬志奈
「わかりました……?」
小鳥遊さんに言われるがままにメロディを流すと……
小鳥遊カルマ
「……………………!」
小鳥遊さんはメロディに合わせてドラムを叩いている。
小鳥遊さんのドラム捌きは素晴らしいが、メロディにも小鳥遊さんの叩くドラムの音が一致している。
真瀬志奈
「す…………すごい…………!」
私は思わず口にしてしまった。
小鳥遊さんはメロディが終わると、私のところに戻ってくる。
小鳥遊カルマ
「どうだ?」
私は迷いなく言った。
真瀬志奈
「完璧です。」
そういうと小鳥遊さんは笑ってくれた。
小鳥遊カルマ
「ありがとう…………。それじゃあ、この形で声優さんに聞いてみようか。」
真瀬志奈
「ということは、作曲で課題を進めるということですね!」
小鳥遊カルマ
「ああ。真瀬……よろしくな。」
真瀬志奈
「はい!よろしくお願いいたします!」
小鳥遊カルマ
「よし!じゃあ早速、神谷先生に報告をしよう。」
真瀬志奈
「了解です。では行きましょう!」
六郭星学園 職員室
私たちは柿本先生と神谷先生に課題の内容を作曲で行うことと、声優さんと知り合いの先生に話してほしいことを話した。先生方はとても喜んでいた。
柿本瑛久
「そっか……頑張ってね……。」
相変わらず、柿本先生はおどおどしていた。
神谷乙音
「いやあ、話に乗ってくれてありがたいな!」
小鳥遊カルマ
「いえ、我々が決めたことですから……。」
神谷乙音
「それじゃあ、早速……と言いたいところだけど…………。その先生、しばらく出張に行っててね…………。今すぐに話はできないのよね…………。」
真瀬志奈
「そうですか……。」
神谷乙音
「だから、今はできるところまで作ってみたらどうかしら?…………曲を。」
真瀬志奈
「わかりました。完成させてから、また来ますね。」
柿本瑛久
「頑張ってね……。」
神谷乙音
「待っているからね!」
小鳥遊カルマ
「ありがとうございます。…………では、失礼します。」
真瀬志奈
「失礼します。」
私たちは職員室を後にした。
六郭星学園 音楽室
音楽室に戻った後、私たちは早速練習を始めた。
小鳥遊カルマ
「先生方がああ言っていたんだ。頑張るしかない。」
真瀬志奈
「そうですね。やりましょうか。」
私は音源をラジカセで流すと、小鳥遊さんがドラムを叩く。
やはり見事なドラム捌きだ。
真瀬志奈
「やっぱりすごいですね。」
小鳥遊カルマ
「ありがとう。…………しかし、ドラムだけじゃ音楽にはならないな……。」
真瀬志奈
「でしたら、私が編曲しますよ。」
小鳥遊カルマ
「そうか…………ありがとうな。よし、それじゃあ練習を再開……」
そう言いかけると音楽室の外から大きな物音がした。
小鳥遊カルマ
「ん?なんだ?」
物音に気づくと、1人の女子生徒が音楽室に入ってきた。
??
「何しているの?早く逃げなさい!」
真瀬志奈
「逃げる……って?」
私は少し疑問に思ったが、小鳥遊さんの様子がおかしかった。
小鳥遊カルマ
「まさか…………!?」
真瀬志奈
「…………?小鳥遊さん?」
私は気になり、外に出ると…………
??
「ガルルルルルル……!」
真瀬志奈
「きゃっ!?」
私は獣の姿を見て、逃げようとしたものの、足がすくんで動けなくなった。
小鳥遊カルマ
「危ない!」
小鳥遊さんは私が動けないことを知ると、私をお姫様抱っこした。
小鳥遊カルマ
「避難先は!?」
??
「屋上よ。急いで!」
その言葉を聞くと、小鳥遊さんは私を担ぎながら、走り出した。
小鳥遊カルマ
「くっ…………えっ!?」
真瀬志奈
「…………?」
小鳥遊さんは何かに疑問を抱いたのか少し驚いた表情を見せた。
真瀬志奈
「た、小鳥遊さん?」
小鳥遊カルマ
「な、なんでもない。急ぐぞ!」
小鳥遊さんは私を担いで、屋上へと向かった。
六郭星学園 屋上
屋上に着くと、たくさんの生徒たちが避難していた。
私は落ち着いたので、小鳥遊さんに降ろしてもらった。
そして、私は助けてくれた女子生徒にお礼を言った。
真瀬志奈
「ありがとうございます。助けてくれて…………。」
笹野ユリ
「いえ……私は笹野ユリ(ささの ゆり)。また何かあったらお会いしましょう。」
そういうと、笹野さんは自分のクラスのところへと向かっていった。
小鳥遊カルマ
「な、なあ……真瀬……。」
真瀬志奈
「はい?」
小鳥遊カルマ
「まさかだけど……その…………。」
真瀬志奈
「…………?」
小鳥遊カルマ
「いや、なんでもない…………。すまない。」
真瀬志奈
「…………………………?」
何を言いかけたかはわからないけど、私は追及することはやめた。
私たちは笹野さんのようにクラスメイトたちがいるところに向かうことにした。
真瀬志奈
「あ、いました。風亥さん!」
風亥ノクア
「ああ、真瀬さん…………。」
何やら元気がなさそうだけれど……?
風亥ノクア
「ハルトが…………。」
真瀬志奈
「浅越さん?」
浅越さんの様子を見てみると、顔が青ざめていた。
浅越ハルト
「あっ……いや、なんでもない……。」
とは言うものの浅越さんは様子がおかしかった。
小鳥遊カルマ
「……………………。」
小鳥遊さんは浅越さんの顔を見つめていた。
真瀬志奈
「小鳥遊さん………………?」
小鳥遊カルマ
「あ、いや……なんでもない。それより……。」
そういうと、小鳥遊さんは美園さんのところへ行くと、美園さんの腕を掴んだ。
小鳥遊さん……?
小鳥遊カルマ
「これでわかっただろ?お前の憧れは危険だってことを!」
美園エリカ
「……………………。」
風亥ノクア
「……!カルマ!お前一体……?」
小鳥遊カルマ
「引っ込んでてくれ!美園……お前……!」
美園さんは何も言わずに小鳥遊さんの腕を振り払った。
美園エリカ
「自分も同じくせに……。」
真瀬志奈
「えっ……?」
小鳥遊カルマ
「なっ……お前!?」
小鳥遊さんがひどく動揺している。
その間に美園さんは自分のクラスのところへと向かっていった。
小鳥遊カルマ
「……………………。」
真瀬志奈
「小鳥遊さん…………?」
小鳥遊カルマ
「ああ……すまない。少し疲れた…………。」
そういうと小鳥遊さんはみんなのところへと戻っていった。
小鳥遊さんと美園さん…………一体何を知っているんだろうか…………。
そう考えていると部屋に戻っていいと先生方からの指示があった。
私は不安と謎を抱いたまま、自分の部屋へと戻ることにした。