第3章 赤く染まったその腕に (美園エリカ編) 前編
秋。作曲はとても順調に進んでいる。
……けれど、まだ美園さんは危険な憧れを持っている。
そんな美園さんと僕は音楽室にいた。
作曲のアレンジを加えるためだ。
真瀬莉緒
「……よし!このアレンジで行きましょう!」
美園エリカ
「ふふふ……。順調に進んでいくわね……。」
真瀬莉緒
「そうですね。かなりハイペースに進んでますね。」
美園エリカ
「ええ……。」
真瀬莉緒
「……………………。」
美園エリカ
「…………?どうかしたの?」
真瀬莉緒
「あ、いえ、なんでもないです……。」
小鳥遊くんから言われたことをまだ美園さんに伝えられていない。そんなことからか、僕はついしどろもどろになってしまっている。
どうしたらいいものか……?
美園エリカ
「……ねえ、少しだけ出かけない?」
真瀬莉緒
「お出かけって、気分転換ですか?良いですね!」
美園エリカ
「たまたま福引きで水族館のチケットが当たってね。真瀬さんの言う通り、気分転換になればと思ってね。」
真瀬莉緒
「水族館……良いですね!行きましょう!」
僕はそう言って、水族館へと向かうことにした。
六郭星水族館
美園エリカ
「おお……!ここが水族館……!」
真瀬莉緒
「とても綺麗な場所ですね!」
僕自身、水族館に行くのは初めてだ。
中はとても綺麗で、魚たちも楽しそうに泳いでいる。
美園エリカ
「行きましょう。大きなサメが見たいわ。」
真瀬莉緒
「はい!」
僕たちはサメを見に行くことにした。
サメを見に行く道中も、マグロやサケ、クマノミなどが楽しく泳いでいる。
真瀬莉緒
「すごいや……!」
美園エリカ
「ええ、本当にすごいわ!見て、あそこの魚もすごい大きい!」
真瀬莉緒
「本当だ!あんな大きい魚初めてだよ!」
僕たちは無我夢中に魚を見ていた。
こんなに楽しい時間は初めてに近いかもしれない。
もうすぐサメのコーナーにたどり着く直前、ふと1つの水槽の魚が気になった。
美園エリカ
「この魚……綺麗ね。」
真瀬莉緒
「本当ですね。黄緑色の魚か……。」
その魚はとても綺麗な黄緑色の魚だ。この魚も楽しそうに泳いでいる。
美園エリカ
「ライムラスって名前なのね……。」
真瀬莉緒
「ライムラスですか……。良い名前ですね。」
美園エリカ
「ええ、とても……。」
僕たちはそのままライムラスの水槽を見つめていた。
必死に泳いでいるライムラスを見ているととても勇気が湧いてきた。
真瀬莉緒
「言うか……。」
この水族館で遊び終わったら、僕は言わなくては……小鳥遊くんに言われたことを……。
美園エリカ
「あ、サメを見ないと。ふふふ……ほら行きましょう!」
真瀬莉緒
「あ、はい。行きましょう!」
僕たちはようやくサメのいる水槽に行くことにした。
サメのいる水槽に着くと、サメはとても大きく、必死に泳いでいる。
真瀬莉緒
「おお、とても大きい……。」
美園エリカ
「すごいわね……!とても興奮するわ……!」
美園さんはとても嬉しそうに喜んでいる。
美園エリカ
「ふふふ……ふふふふ……!」
真瀬莉緒
「み、美園さん……?」
美園エリカ
「ふふ……あっ。失礼。公衆の前だったわね。…………さ、戻りましょう。」
真瀬莉緒
「そうですね。そろそろ学園に戻りましょう。」
美園エリカ
「ええ……。」
僕たちは水族館をあとにして、帰りのバスへ乗り込んだ。
水族館から学園まではバスを使って20分ほどの距離がある。
20分ほど黙って過ごすのは、さすがに美園さんに悪いだろう。
僕は何か話しかけなければと思い、美園さんを見ようとしたとき……
美園エリカ
「ん……。」
真瀬莉緒
「あっ……。」
美園さんは僕の肩に頭を乗っける。
美園エリカ
「楽しかった……。」
美園さんは僕にそうささやいた。
真瀬莉緒
「美園さん……。」
美園エリカ
「……………………。」
美園さんはすやすやと寝息を立て始めた。起こすのも悪いからこのまま寝させておこう。
僕はそのまま肩に美園さんの頭を乗せながら学園まで戻ることにした。
六郭星学園寮 ロビー
寮に戻ると人気が少ない。何かあったのだろうか?
??
「ああ!あなたたち、ここは危険よ!」
そう言ったのは夏目さんだった。また何かあったのだろうか。
真瀬莉緒
「一体何があったんですか?」
夏目ホノカ
「それが、また獣が現れたのよ。今すぐ屋上に避難しなさい!」
真瀬莉緒
「またですか!?わ、わかりました!」
僕たちは水族館から帰ってきた疲労を感じているが、それをぬぐいながら、屋上へとかけ走った。
六郭星学園 屋上
矢吹由佳里
「そこを縛っておいて!生徒のみんなを落ち着かせるの!」
あのときと同じく、矢吹先生が先生方に指示をしている。
真瀬莉緒
「………………。」
夏目ホノカ
「あのときからそこまで経ってないのに……そこまで例の研究が、進んでいるのね……。」
真瀬莉緒
「えっ……?」
研究……?この人も何かを知っているのか?
真瀬莉緒
「あの……研究って……?」
夏目ホノカ
「なんでもないわ。気にしないで。」
真瀬莉緒
「は、はぁ……。」
研究……か。
小鳥遊カルマ
「おい!これでわかっただろ!あの研究は危険だって!」
美園エリカ
「ぐっ…………。」
真瀬莉緒
「小鳥遊くん……?」
小鳥遊くんはキツく美園さんに責め立てる。
小鳥遊カルマ
「お前……。あれに憧れを持っているのか?あんな危険なものを……!」
美園エリカ
「……………………。」
真瀬莉緒
「小鳥遊くん……。」
小鳥遊カルマ
「真瀬はどうなんだ?」
真瀬莉緒
「僕は……。」
美園さんは僕を見つめる……。
真瀬莉緒
「正直に言って……怖い。」
美園エリカ
「そんな……!」
美園さんはそのまま項垂れた……美園さん……。
夜坂ケント
「おい。何をしている。」
騒ぎを聞いたのか、夜坂さんが近づいてきた。
美園エリカ
「…………わからずや!!」
美園さんはどこかへ行ってしまった。
真瀬莉緒
「美園さん!」
小鳥遊カルマ
「追いかけるな。放っておけ。」
真瀬莉緒
「でも……!」
小鳥遊カルマ
「美園にもお灸を据えておかないといけない。本当のことを知っておかないとダメだ。」
真瀬莉緒
「………………。」
夜坂ケント
「何があった?説明してくれ。」
小鳥遊カルマ
「ああ、それだが……。」
小鳥遊くんは夜坂さんにありのままのことを話した。
夜坂ケント
「そうか……憧れをか。」
小鳥遊カルマ
「ああ、危険すぎる。だから俺は美園を止めた。」
夜坂ケント
「それが賢明な判断だ。自分のことしか知らないからこうなるんだ。」
真瀬莉緒
「夜坂さん……?夜坂さんも何か知っているんですか?」
夜坂ケント
「君は……知らない方が良いかもしれない……。」
そう言って夜坂さんは自分のクラスメイトたちのところへ行った。




