第1章 黒い制服 (風亥ノクア編) 後編
六郭星学園寮 莉緒・ノクアの部屋
部屋に入ると、そこには1通の手紙が置いてあった。
風亥ノクア
「手紙……?」
手紙を中身を見てみる。
午後3時、六郭星学園の理科室にて待つ。 壱木より
壱木……?
風亥ノクア
「壱木さん……?」
真瀬志奈
「壱木さんってまさか……?」
風亥ノクア
「十森さんと同じ学園キングのメンバーだよ。十森さんが大将だから壱木さんは副将的ポジションだよ。」
真瀬志奈
「そうなんですね。……行くんですか?理科室に。」
風亥ノクア
「うん……。確かめたいんだ。本当にその薬が有効なのか……。」
真瀬志奈
「風亥さん……わかりました。私も行きます。」
風亥ノクア
「それはダメだ。十森さんに襲われていたんだ。危険な目に合わせるわけにはいかない。」
真瀬志奈
「そんな……。私は大丈夫です。それに、壱木さんはどんな様子かなんてわかりません。」
風亥ノクア
「……………………。」
真瀬志奈
「黙っててもついていきますからね。」
風亥ノクア
「わかったよ。……行こう。」
私たちは理科室へと向かうことにした。
六郭星学園 理科室
風亥ノクア
「壱木さん。」
壱木
「……………………。」
理科室には十森さん同様に半分だけ獣の様な姿になっていた壱木さんがいた。
壱木
「来たな……。風亥さん……。」
風亥ノクア
「壱木さん!?大丈夫ですか?」
風亥さんは壱木さんに近づく……
壱木
「かかったな……!」
真瀬志奈
「風亥さん!」
風亥ノクア
「しまった!罠だったか!」
壱木
「くくく……!くたばれ!くたばれ!」
壱木さんは風亥さんの首を絞め出し始める。
なんとかして止めなければ……!
私は無理矢理にでも飲ませようとした薬を取り出そうとした時、スマホも同時にポケットから落ちてしまった。
真瀬志奈
「あっ……。」
スマホは誤作動が起きて音楽が鳴る。そのメロディは私が風亥さんに聞かせる予定だった音源だった。
壱木
「ああ……ああ……!」
音楽を聴いた壱木さんは首を絞めていた腕が緩くなる。
これは……チャンスだ。今なら飲ませられる。
真瀬志奈
「えい!!」
壱木
「うぐ……」
壱木さんは薬を飲んでそのまま横になった。
風亥ノクア
「ふう……なんとか無事に助けることができたね。」
真瀬志奈
「はい……。」
風亥ノクア
「ところでさ、あの曲ってもしかすると……?」
やっぱり気づいたらしい。隠すことでもないので、言うことにした。
真瀬志奈
「はい。この曲は……」
そう言いかけると、壱木さんが目を覚ました。
壱木
「あ……あれ……?ここって……?」
風亥ノクア
「壱木さん!大丈夫ですか!?」
壱木
「ああ……うん。迷惑をかけたようだね。」
真瀬志奈
「私……救急車を呼びますね。」
私は救急車を呼んで、壱木さんは運ばれていった。
風亥ノクア
「とりあえず……落ち着いたら、十森さんと壱木さんに話を聞いてみようか。」
真瀬志奈
「そうですね。一体どうしてこうなったのか……。」
風亥ノクア
「ああ、そうだね。気になるところだからね。僕のいないときに何があったんだろう……。」
風亥さんは不思議に思っている。私も少しだけ気になるところだ。
病院から連絡があり、十森さんと壱木さんの容態が落ち着いたため、面会が許可された。私たちは病院へと向かうことにした。
来川医療センター 病室
病室に入ると十森さんと壱木さんは和気藹々と喋っていた。この様子だと大丈夫そうだろう。
私たちに気づいた十森さんたちは喋るのを止めて、私たちに話しかけた。
十森
「風亥さん、真瀬さん。今回は本当にごめん。大変な思いをさせたね。」
風亥ノクア
「それは大丈夫ですけど……僕がいないときに何があったんですか?他のみんなも行方不明になっていますし……。」
十森
「……わからない。僕たちは1人ずつチーフプロデューサーに呼ばれてそこから意識がはっきりとしないんだ。」
壱木
「僕も同じだ……チーフプロデューサーに呼ばれたのは覚えているけど……ごめん、わからないよ。」
風亥ノクア
「そうですか……。他のみんなの行方もわからないんですね。」
十森
「ああ、すまない……。」
風亥ノクア
「……けれどチーフプロデューサーは怪しいですね。呼んだのはチーフプロデューサーですよね。」
壱木
「ああ。そうなるね。チーフプロデューサーに話を聞きたいけれど……。」
真瀬志奈
「けれど……?」
十森
「チーフプロデューサーも行方不明になっているんだ。さっきADさんから聞いたんだ。」
風亥ノクア
「話は聞けず……ですか。」
十森
「そうなるね……。他のみんなは無事なのかな……?」
風亥ノクア
「何かあれば僕が動きます。お2人は休んでください。」
壱木
「ごめんね。そうさせてもらうよ。」
風亥ノクア
「それじゃあ僕たちはこの辺で失礼します。」
十森
「気をつけて……。」
私たちは病院を後にした。
帰り道
風亥ノクア
「…………。」
真瀬志奈
「…………。」
お互いに沈黙が続く。すると風亥さんが口を開いた。
風亥ノクア
「ねえ。門限までまだあるし、少しだけ商店街に寄らない?」
真瀬志奈
「あ、良いですね。行きましょう!」
こんな状況だ。気分転換も必要だろう。
私たちは商店街に向かった。
商店街
商店街に着くと私たちは風亥さんがおすすめするたこ焼き店に向かうことにした。
たこ焼き店店員
「毎度!たこ焼きお待ち!」
真瀬志奈
「ありがとうございます。」
私はたこ焼きを1つ食べた。
真瀬志奈
「熱っ!」
それを見た風亥さんは少しニヤついた。
風亥ノクア
「出来立てだから熱いんだよ。はい。ふーっ。これでどうだろうか?」
風亥さんは自分のたこ焼きを私に差し出してくれた。私はそれを食べた。
真瀬志奈
「うん……。美味しい。」
風亥ノクア
「よし。良かった。こうして2人で歩くことや食べることも初めてだから……でもこうして一緒にいるのは嬉しいよ。」
風亥ノクア
「……というか、ソースが口についているよ。はい、ハンカチ。」
真瀬志奈
「あ、ありがとうございます。」
風亥さんは黄色いハンカチを渡してくれた。
真瀬志奈
「そういえば、ネクタイの色も黄色ですね。」
風亥ノクア
「まぁ……黄色が好きだからかな。黄色あったかい色でホッとするんだ。」
真瀬志奈
「そうなんですね。私も黄色は好きですね。」
風亥ノクア
「ふふ……そう言ってもらえると嬉しいよ。……っさ、たこ焼きも冷める頃だし、食べて帰ろうか。」
真瀬志奈
「そうですね。食べたら帰りましょうか。」
私たちはたこ焼きを食べて寮へと戻ることにした。
六郭星学園寮 志奈・ナツハの部屋
霧宮ナツハ
「あら、おかえり。」
真瀬志奈
「はい。……ただいま。」
霧宮ナツハ
「……ふふふ。その様子だと少しだけ作曲は進展したのね。」
霧宮さんは自信満々に言うが、聞いてもらう音源を風亥さんに聞いてもらっていない。
真瀬志奈
「いえ、音源はまだ聞いてもらってないです。」
霧宮さんはそれを聞くと驚きを隠せなかった。
霧宮ナツハ
「そうなのね……。……ねえ、その音源聞かせてよ。」
真瀬志奈
「音源ですか……?」
音源か……特に断る理由もないので聞いてもらうことにした。
真瀬志奈
「わかりました。これが音源です。」
私は音源を流した。
曲が終わる。霧宮さんの反応はとても良かった。
霧宮ナツハ
「良い曲ね。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。」
霧宮ナツハ
「それにしてもノクアはなんで聞かないのかしら……良い曲なのに……。」
真瀬志奈
「いや……それは……。」
霧宮ナツハ
「まあ、いいわ。とりあえず今日はおしまい。ノクアのことはよろしくね。」
真瀬志奈
「あ、はい。わかりました。」
私たちは色々と作業を終えて寝ることにした。
それにしても……他の学園キングのみなさんは無事なのか……。私は不安のまま深い眠りについた。