第3章 純白の結晶(初杉ジロウ編)中編
六郭星学園 屋上
屋上に行くと、大勢の学生が避難していた。
初杉さんは…………いない。どこに行ったのか…………。
真瀬莉緒
「ジロウ…………。」
莉緒も心配をしている。あの初杉さんが避難をしないわけがない。
そう思ったとき、屋上のドアが開く。
ドアの方にいたのは、みなさんも、私も探していた人だった。その人は得意の楽器を持っていた。
真瀬志奈
「初杉さん!」
初杉ジロウ
「…………志奈さん。…………みんな…………ごめん。」
浦川アイク
「何を謝る必要がある?…………まあ、探したけどな。」
初杉ジロウ
「……………………。」
真瀬志奈
「初杉さん…………本当は楽器演奏が得意なんですよね。」
初杉ジロウ
「……………………。うん。」
初杉さんは頷いた。
真瀬志奈
「どうして、黙っていたんですか?」
初杉ジロウ
「…………僕は、ストリートミュージシャンをしていた時期があった。演奏ができる。それを生きがいとして頑張っていた。けれど…………。」
真瀬志奈
「けれど…………?」
初杉ジロウ
「中学を卒業前、僕は2人の存在を知った。そう…………きみたちだよ。」
真瀬志奈
「私たち…………?」
真瀬莉緒
「……………………。」
初杉ジロウ
「きみたちの演奏を聞いたとき、僕は挫折した。こんな演奏ができるのかって…………。驚いたよ。そこからだよ。僕が……演奏をできるのを隠すようになったのは。」
真瀬志奈
「そうだったんですね…………。」
初杉ジロウ
「でも…………この楽器だけは演奏したい気持ちは隠せなかった。志奈さんに見せた、得意楽器だよ。」
真瀬莉緒
「だけど…………あんまり得意ではないように見えるけど…………?」
初杉ジロウ
「ああ。この楽器かい…………。」
初杉さんは演奏をする。今までとは比べるまでもない、高度な演奏テクニックだ。
春井リカコ
「これは…………!?」
名雲メイ
「す…………すごい…………!」
初杉ジロウ
「これが、僕の本当の演奏技術だよ。…………披露するのは久しぶりだ。」
真瀬志奈
「初杉さん…………。すごいです!」
初杉ジロウ
「…………正直、志奈さんとペアになったとき、こうなるとは思っていた。こんな演奏は演奏じゃないって、そう思った。」
真瀬志奈
「…………確かに、不審には思いました。」
初杉ジロウ
「直すところは色々ある。ここも…………ここも…………こうして…………。」
初杉さんはアレンジを演奏する。
真瀬莉緒
「すごい…………。」
真瀬志奈
「今まで以上の曲になりました…………!すごいです!早速、取り掛かりましょう!」
初杉ジロウ
「でも…………今からじゃ…………間に合わないんじゃ…………。」
真瀬志奈
「間に合わないじゃないです。…………間に合わせるんです!」
初杉ジロウ
「志奈さん…………!」
薮本マサキ
「今、先生方が来て、避難解除が宣告されたよ。音楽室に行って、アレンジを加えてきたら?」
真瀬志奈
「はい!行きましょう!初杉さん!」
初杉ジロウ
「…………うん!」
私たちは音楽室へと向かった。
六郭星学園 音楽室
音楽室に来た私たちは、アレンジを加えるため、演奏を始める。
まずは、アレンジ部分を上手く演奏できるように重点的に演奏を繰り返す。
初杉ジロウ
「ここは…………こうで…………ここはこうして!」
初杉さんは今まで気になっていたところを指摘をする。
真瀬志奈
「的確ですね…………。」
初杉ジロウ
「…………ありがとう。」
くまなく練習した私たちは、全体を通して演奏を始めることにした。
初杉ジロウ
「行くよ…………。」
真瀬志奈
「はい。」
私たちは演奏をする…………。
演奏を終える。私たちはとても嬉しくなった。
真瀬志奈
「やった…………!やりました!!この曲なら…………声優さんにも…………この曲を聞くみなさんも喜んでいただけます!」
初杉ジロウ
「うん!これなら…………!志奈さん…………ごめん。迷惑かけたけど…………ありがとう。」
真瀬志奈
「良いんです。…………本当のことを知れただけでも…………私は嬉しいです。」
初杉ジロウ
「…………ありがとう。こんなことなら、早く言えば良かった…………。」
夏目ホノカ
「本当です。でも…………良かったです。」
真瀬志奈
「夏目さん!」
初杉ジロウ
「夏目さん…………。」
夏目ホノカ
「ジロウくんのこと…………動画を撮っていました。ピアノの映像も、ストリートミュージシャンをやっているときも。」
真瀬志奈
「えっ!?あれ、夏目さんの撮った映像なんですか?」
初杉ジロウ
「そうだったのか…………初めて会ったときも初めて会った感じがしなくて…………。どうしてだろうと思っていたけど、そうだったんだね。」
夏目ホノカ
「ずっと、見守っていました。けど…………今は、もう見守る側ですね。」
初杉ジロウ
「…………うん。」
真瀬志奈
「えっ?どういうことですか?」
初杉ジロウ
「志奈さん。僕、今度の声優さんの曲…………歌詞を担当しても良いですか?」
真瀬志奈
「歌詞ですか…………?もちろん構いませんが…………。」
初杉ジロウ
「ありがとう。…………絶対に良い歌詞にするから。」
真瀬志奈
「期待しています。」
夏目ホノカ
「では…………そろそろ夜も更けましたし、寮に戻りましょう。」
真瀬志奈
「そうですね。では…………。」
私たちは寮の方へ戻ることにした。




