第3章 純白の結晶(初杉ジロウ編)前編
秋。あれから、作曲は進んではいる。けれど、なかなか良いと言えるようなものではなかった。初杉さんは真剣に作曲に没頭はしているつもりらしいが、何かを隠していることだけはわかる。
初杉さんについて何か知っているか、莉緒に聞いてみた。
六郭星学園寮 莉緒・ジロウの部屋
真瀬莉緒
「そうか…………ジロウ…………何を隠しているんだろう…………?」
真瀬志奈
「この動画…………見たことある…………?」
私は初杉さんの演奏している動画を見せる。
真瀬莉緒
「これが…………ジロウ!?…………なんで隠しているんだろう?」
真瀬志奈
「それがわからないのよ…………素直に聞いてみた方が良いのか…………。」
真瀬莉緒
「聞いてみた方が良いかもしれないね。ジロウは今、出かけているけど…………どこに行ったのかまでは聞いていな…………。」
そのとき、ドアの開く音がする。
ドアの方向を向くと…………初杉さんがいた。
真瀬志奈
「初杉さん!」
初杉ジロウ
「ああ。志奈さん…………来ていたんだ。」
真瀬志奈
「ええ。」
初杉ジロウ
「あっ…………。」
真瀬志奈
「えっ…………?あっ。」
初杉さんの視界に自分の出ている、動画が入った。
初杉ジロウ
「……………………ごめん!」
初杉さんはどこかへ走り出した。
真瀬志奈
「ああ!待ってください!!」
真瀬莉緒
「ジロウ!!」
私たちは初杉さんを追いかける。
六郭星学園 中庭
真瀬志奈
「はぁ…………はぁ…………初杉さん…………見つからない。」
真瀬莉緒
「一体どこに…………?」
真瀬志奈
「誰か…………助けが欲しい…………。」
そう思ったとき…………また耳鳴りがする。
ギギ……ガガ……
真瀬志奈
「えっ……!?」
ギギ……ガガ……
苦しい…………!
真瀬志奈
「くっ…………!」
真瀬莉緒
「姉さん!?大丈夫!?」
真瀬志奈
「ええ…………今、この状況で苦しんでいる暇はないわ。応援を呼びましょう。」
真瀬莉緒
「そうだね。…………姉さんは夏目さんを。俺は大勢の人を呼ぶから。」
真瀬志奈
「わかったわ。夏目さんを探してくる。」
私は、夏目さんを探しに部屋に戻る。
六郭星学園寮 志奈・ホノカの部屋
部屋に戻ると、夏目さんがいた。
真瀬志奈
「ああ。夏目さん…………。」
夏目ホノカ
「真瀬さん…………。そんなに急いでどうされましたか?」
真瀬志奈
「実は、初杉さんが…………。」
私はこれまでの経緯を夏目さんに話した。
夏目ホノカ
「そうでしたか…………。探しに行きたいのはわかりますが…………。一度、勝負をしてみませんか?」
真瀬志奈
「勝負ですか…………?」
夏目ホノカ
「はい。勝負で勝ったら、探しに行きます。」
真瀬志奈
「……………………わかりました。」
私は勝負をすることになった。夏目さんとの勝負負けられない。
勝負の結果は私の勝ちだった。
真瀬志奈
「勝ちました。では…………お願いします。」
夏目ホノカ
「はい…………。私もジロウくんには色々と聞きたいことがありますので…………。」
そう言って、夏目さんと一緒に初杉さんを探す。
六郭星学園 中庭
中庭に行くと、成瀬先生がいた。
成瀬実
「ああ。2人とも。聞きました。初杉さんが行方を…………。」
真瀬志奈
「はい…………。あの動画を見て急に走り出したんです。」
そこに、遊馬先生と柳原先生が来る。
遊馬雄三
「今、防犯カメラを確認したが、学園外には出ていないようだ。」
柳原悠香
「1度、教室に戻ってみてはいかがでしょうか?真瀬さんとみなさんが待っています。」
真瀬志奈
「本当ですか?…………行ってみます。」
私はみなさんに会うために、Aクラス教室に向かった。
六郭星学園 Aクラス教室
教室に入ると、莉緒たちがいた。
夏目ホノカ
「みなさん、お揃いですね。…………話は聞いていますか?」
浦川アイク
「ああ。だいたいは聞いた。」
春井リカコ
「それにしても…………なぜこんなことに?」
名雲メイ
「ねえ、動画って何?それが気になるんだけど…………。」
真瀬志奈
「はい…………これです。」
初杉さんが色々な楽器を演奏している動画を見せる。
薮本マサキ
「これが…………ジロウの演奏!?」
浦川アイク
「あいつ…………あんなに演奏できるのか…………!?」
春井リカコ
「…………今まで、普通の人間で特徴のない人と思っていたわ…………けど違った。」
名雲メイ
「そういえば、聞いたことあるわ…………。どんな楽器も弾ける人間が、音楽学校に進学せずに、普通の高校に進学したって…………。」
真瀬莉緒
「そんな噂が…………?そういえば、忘れていたけど…………そんな話もあったな。でも、それがジロウだなんて…………。」
夏目ホノカ
「……………………。」
真瀬志奈
「夏目さん…………?」
夏目ホノカ
「いえ…………ジロウくんは…………。」
そのとき、またあのときのサイレンが鳴る。
真瀬志奈
「これは…………!あのときの…………!?」
夏目ホノカ
「みなさん!急いで屋上へ避難してください!!」
私たちは言われるがままに、学園の屋上に向かうことにした。
屋上へ向かう道中に、莉緒がこんなことを言う。
真瀬莉緒
「屋上へ避難するってことは、ジロウも屋上にくるのかな…………。」
真瀬志奈
「あっ…………そうかもしれない…………。…………行きましょう。」
私は淡い期待を抱きながら、六郭星学園の屋上へと急ぐ。




