第3章 菜の花色の夕暮れ(夏目ホノカ編)後編
真瀬莉緒
「はぁ…………はぁ…………。」
学園の屋上に向かう途中。僕は慣れない行動をしたのか、倒れそうになる。抱きかかえた夏目さんを一旦、横にさせる。
夏目ホノカ
「真瀬さん…………。」
真瀬莉緒
「夏目さん…………大丈夫です。行きましょう。」
夏目ホノカ
「…………もう大丈夫です。真瀬さん!」
夏目さんは手を差し出す。
真瀬莉緒
「夏目さん?」
夏目さんの差し出した手は震えていた。
真瀬莉緒
「夏目さん…………。」
僕は手を握り、屋上まで一緒に走り出す。
夏目ホノカ
「真瀬さん!」
真瀬莉緒
「大丈夫です!僕がいます。屋上に行きましょう!」
夏目ホノカ
「はい!」
僕たちは走って屋上に向かう。
六郭星学園 屋上
真瀬莉緒
「はぁ…………はぁ…………。」
夏目ホノカ
「真瀬さん…………大丈夫ですか?」
真瀬莉緒
「はい…………。何とか。」
僕たちに遅れてきたのは来川さんと古金さんだった。
来川ナナ
「ああ…………真瀬さん。夏目さん。お疲れ様です。」
夏目ホノカ
「お疲れ様です。無事に避難できましたね。」
来川ナナ
「はい…………ただ、ミカが…………。」
真瀬莉緒
「古金さん?」
古金さんの顔を見ると、いつになく真剣な様子だ。いつものテンションが全くの皆無だ。
古金ミカ
「……………………。」
真瀬莉緒
「古金さん?」
古金ミカ
「えっ…………あー!ごめんごめん!ではナナ様!クラスのところに行きまっしょう!」
来川ナナ
「あっ、ミカ!」
古金さんと来川さんは自分たちのクラスのところに向かった。
ふと、屋上から校庭を見ると、鹿崎先生が指示を出して、獣のようなものを捕獲していた。
鹿崎咲也
「みんな!そこを縛って、檻の中に入れるんだ!」
獣らしきものは檻の中へ捕獲された。
真瀬莉緒
「鹿崎先生…………。大変だな…………。」
??
「2人とも…………。」
声をかけられる。その声の正体は伊剣さんだった。
夏目ホノカ
「伊剣会長…………。」
伊剣さんは夏目さんに声をかける。
伊剣タイガ
「まだ…………怖いのか?」
夏目ホノカ
「……………………。」
怖い…………?僕は何が怖いかを考える。
でも、確かに臆病者って言っていたけど…………まさか…………?
夏目ホノカ
「確かに、怖いです。あの獣は…………恐ろしい存在です。」
伊剣タイガ
「やっぱり…………。」
真瀬莉緒
「夏目さん…………あの獣に怯えて、会長の座を…………?」
夏目ホノカ
「はい…………。」
僕の言葉にただただ頷く。
伊剣タイガ
「……………………。生徒会には戻る気はないのか?」
夏目ホノカ
「…………私は…………誰もが生徒会長になるべき存在だと言ってくれました。でも…………あの獣を見たとき、私は…………恐怖が勝りました。…………怖くなり、生徒会からも退いて、ただの生徒として生活するつもりでした。」
真瀬莉緒
「そうだったんですね…………。」
夏目ホノカ
「でも、生徒会をやめてとても嬉しかったこともあります。それが…………今です。」
伊剣タイガ
「それって…………。まさか…………?」
夏目ホノカ
「はい。…………ここでは言えませんが…………。ただ、これだけは言えます。生徒会には戻りません。私はこの今の状況に幸せを感じているからです。」
伊剣タイガ
「そうか…………。」
伊剣さんは笑みを浮かべた。
伊剣タイガ
「それなら問題ない。もう誘うことはしない。」
そう言って、伊剣さんはその場をあとにした。
真瀬莉緒
「夏目さん…………良いんですか?」
夏目ホノカ
「はい。ジロウくんも聞いていたんですよね。」
真瀬莉緒
「え?…………初杉さん?」
初杉さんが僕らのところに現れる。
初杉ジロウ
「夏目さん…………。本当に良かった…………!あとは…………だね。」
夏目ホノカ
「そうですね…………。でも、まだです。今は言うべきときじゃないです。」
真瀬莉緒
「……………………?」
僕は不思議に思う。何を思っているのか…………?
避難も解除され、僕たちはそれぞれの寮に戻った。
六郭星学園 音楽室
数日後。僕と夏目さんは音楽室で楽曲の最終確認を行っていた。
真瀬莉緒
「いよいよですね。まもなく完成です。」
夏目ホノカ
「はい。…………では、参りましょう。」
合図を出して演奏を行う…………。
真瀬莉緒
「できた…………!!」
夏目ホノカ
「はい…………!これなら…………みなさん喜んでくれると思います!」
ついに楽曲が完成できた。あとは歌詞だけど…………。
夏目ホノカ
「あの…………真瀬さん。歌詞なんですけど…………こちらに書いてあります。」
真瀬莉緒
「本当ですか!?…………で、内容は…………?」
夏目ホノカ
「それは…………秘密です。楽しみにしていてください。」
真瀬莉緒
「ええ…………そんな…………。」
夏目ホノカ
「ふふ…………大丈夫です。きっと喜んでくれますから。」
真瀬莉緒
「…………わかりました。」
夏目ホノカ
「ありがとうございます。」
真瀬莉緒
「それじゃあ…………。楽曲を送るのは夏目さんにお願いいたします。」
夏目ホノカ
「はい。もちろんです。では…………今日はこの辺で。私は今から、楽曲と歌詞を送ります。お疲れ様です。」
真瀬莉緒
「はい。お疲れ様です。」
僕は音楽室をあとにした。
六郭星学園 中庭
この日は菜の花色の空模様だった。なんだか気分が良くなる。
真瀬莉緒
「ふぅ…………。」
そのとき、辺りが光に包まれる。
真瀬莉緒
「何だ…………!?」
光が消えるとそこには1人の女性がいた。
??
「ふぅ…………。彼女で違うなら…………。」
真瀬莉緒
「あなたは…………一体…………?」
虹谷アヤ
「真瀬莉緒…………ね。私は虹谷アヤ(にじや あや)。ある人物を追ってここにやって来たの。」
真瀬莉緒
「…………ある人物?…………どうしてですか?」
虹谷アヤ
「その人物は重い罪を犯した。だから私は彼女を連れて行く。」
真瀬莉緒
「彼女…………?」
虹谷アヤ
「夏目ホノカ。彼女よ。」
真瀬莉緒
「夏目さん!?」
虹谷アヤ
「という訳で私は彼女を連れて行くわ。」
真瀬莉緒
「……………………。」
僕は黙って、虹谷という人の腕を掴む。
虹谷アヤ
「何のつもりなの?」
真瀬莉緒
「僕は…………彼女のことを信じています。たとえどんな罪だろうと、僕は待ちます。けれど、こんな形で連れていかれるのはごめんです。」
虹谷アヤ
「……………………。」
真瀬莉緒
「お引き取り願います。…………すみません。」
虹谷アヤ
「……………………仕方ないわね。後悔しないことね!!」
そう言って、また眩い光に包まれる。
真瀬莉緒
「くっ…………!」
光が消え、虹谷という人も消えた。
真瀬莉緒
「何だったんだ…………?」
僕はこの秋の最後に不思議な出来事に会った。
とりあえず、この気持ちを切り替えて残りの学生生活を楽しむんだ。




