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colorful〜rainbow stories〜  作者: 宮来 らいと
第1部 来川ナナ編
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第2章 白い願い (来川ナナ編) 後編

六郭星学園 音楽室



翌日……昨日は色々あったが、来川さんと再び作曲の練習をしていた。


真瀬莉緒

「ここは……こうで……。」


来川ナナ

「はい……。」


真瀬莉緒

「そうです。そこをこうしてください。」


来川ナナ

「わかりました……。」


作曲作りは順調に進んでいる……恐ろしいほどに。


来川さんは相変わらず僕の言っていることに「はい。」としか言わない。


来川さんは本当に曲を作りたいのだろうか……。

本当にやりたいことはなんなのか……日に日にますばかりだった。


来川ナナ

「莉緒くん?どうかしたの?」


真瀬莉緒

「えっ……。あ、いや、なんでもないですよ。」


思わずぼーっとしていたらしい。つい来川さんのことを考えていたのだろう。


来川ナナ

「莉緒くん。何かあったら言ってね。」


真瀬莉緒

「…………はい。」


何かあれば言って欲しいのはお互いにだと言いたいが、何も言えなかった。



六郭星学園 Kクラス教室



先日の運動会で何をやるかを優先的に選べるため、今日は文化祭で何をやるかを決める日になった。


笛花奏

「みなさん、やりたいことは決まりましたか?じゃあ早速やりたいことがある人は手を上げてください!」


男子生徒A

「はいはい!おれ、演劇がやりたいです!」


女子生徒B

「私は無難にフランクフルトとか焼きそばみたいな模擬店がやりたいです!」


女子生徒A

「ええー?私はブラスバンドとかやりたいけどなー!」


クラスメイトのみんなが次々に手を上げる。一方で来川さんはと言うと……


来川ナナ

「………………。」


ただただ、見守っているだけだった。


古金ミカ

「はいはい!私は創作ダンスをやりたいです!」


星野シキア

「…………なるほど、私も創作ダンスに興味があります。」


創作ダンスと言うとクラスメイトは賛同の意見が意外にも多かった。


男子生徒B

「面白そう!やってみたいな!」


女子生徒C

「私も!ダンスをやりたい!」


笛花奏

「そうね……じゃあ、多数決をとりましょう!」


多数決をとることになった。そして……その結果は……


笛花奏

「はい。ということで、創作ダンスをやることにします!」


クラスメイトはパチパチと拍手をする。


笛花奏

「じゃあ……リーダーを決めましょうか。そうね……これは先生の独断で良いかしら?」


星野シキア

「かまいません。それでお願いします。」


クラスメイトのみんなもそれに否定する人はいなかった。


笛花奏

「そうね……じゃあ……来川さんお願いできるかしら?」


来川ナナ

「わ、私がですか!?」


笛花奏

「ええ、お願いできるかしら?」


来川ナナ

「……わかりました。……やります。」


笛花奏

「そう……じゃあお願いね。」


真瀬莉緒

「…………。」



六郭星学園 音楽室



あれから数日。僕たちは課題の練習を再開した。

来川さんはブランクを感じさせないほど、ピアノのスキルがすごい。


来川ナナ

「こんな感じでいいんでしょうか?」


真瀬莉緒

「そうです!そんな感じです!」


来川ナナ

「本当!ありがとう!」


課題制作に関してはとても順調に進んでいる。

……しかし、やっぱりモヤモヤする。


来川ナナ

「……やっぱりお父さんに何か言われたの?」


真瀬莉緒

「いえ、そんなことは……。」


来川ナナ

「そう……。」


来川さんのこととは言うに言えなかった。言うべきなのだろうか……。

……そうだ夜坂くんのことはどうなったのだろうか。少し聞いてみよう。


真瀬莉緒

「そういえば……夜坂くんはどうなりましたか?」


来川ナナ

「ケント?……うん。なんとか大丈夫だけど……。」


真瀬莉緒

「……本当に?」


来川ナナ

「…………ただ……ケントはしばらくは戻って来れなさそうではあるわ。」


真瀬莉緒

「どうしてですか?」


来川ナナ

「それは……その……。」


真瀬莉緒

「来川さん……お願い。詳しいことを教えて欲しい……。」


来川ナナ

「…………。」


真瀬莉緒

「あの時、実は夜坂くんの腕を見たんです。」


来川ナナ

「…………!?」


真瀬莉緒

「あの腕は……なんなんですか?教えてください。」


僕は何か裏があると思い、夜坂くんに何があったのかお願いをした。


来川ナナ

「それは……」


伊剣タイガ

「こんなところにいたのか!……って、何をしているんだ?」


真瀬莉緒

「あ、いえ……。」


生徒会長が突然、音楽室に入ってきた。

来川さんに詰め寄る形になってしまったため、互いに少し、気まずい雰囲気が流れる。


伊剣タイガ

「真瀬くん。君に話がある。至急、来川医療センターに来て欲しいんだ。」


真瀬莉緒

「え……?医療センターに?」


伊剣タイガ

「ああ、この通りだ。頼む。」


会長は頭を下げた。こんな礼儀正しい会長の頼みだ。断るわけにもいかない。


真瀬莉緒

「わかりました。今すぐ向かいます。」


伊剣タイガ

「ああ、ありがとう。来川さん。あなたは笛花先生から古金さんと星野さんたちで、創作ダンスの打ち合わせをしてほしいとのことです。2人はKクラスにいますのでKクラスの方へ行ってください。」


来川ナナ

「わかりました……。」


僕は会長と共に、来川医療センターへ向かった。



来川医療センター



医療センターへやってきた僕たちは院長室へと案内された。そこには以前お話をした来川さんのお父さんがいた。


来川ナナの父親

「ああ……莉緒くん。すまないね。わざわざきてくれて……。」


真瀬莉緒

「いえ、大丈夫です。……もしかして、夜坂くんのことですか?」


来川ナナの父親

「ああ、その通りだ。夜坂くんだが……彼はとある研究の被験体にさせられている。」


真瀬莉緒

「被験体?」


来川ナナの父親

「その被験体の実験は人の人格を破壊する恐ろしい実験だ。」


真瀬莉緒

「…………!?」


僕は驚きを隠せなかった。夜坂くんにそんなことが……?


来川ナナの父親

「その実験はかなりの多くの人たちが被験体になっていてな……さまざまな場所で、人がとんでもないことになっている……」


真瀬莉緒

「そんなことが……!?」


来川ナナの父親

「この来川医療センターは表向きは普通の病院だけども、裏ではその被験者たちを回復できるように取り組んでいるのがこの病院の実体だ。」


真瀬莉緒

「そうなんですね……。」


来川ナナの父親

「こんなことがあってはいけない。私は研究を辞めさせて、被験者になってしまった彼らを救いたい……それが、本望なんだ。」


真瀬莉緒

「来川さんのお父さん……!」


来川ナナの父親

「君のところの生徒会のみんなには学園内にこのことを告げている。伊剣くんもこの件には協力を惜しまなく手伝ってくれている。」


真瀬莉緒

「会長が……。」


来川ナナの父親

「ああ、だから……私に夜坂くんを任せてくれ……この通りだ……。」


真瀬莉緒

「来川さんのお父さん……。わかりました。よろしくお願いします。」


僕は来川さんのお父さんに夜坂くんを託して、学園へと戻った。



六郭星学園 Kクラス教室前



学園に戻り僕も、創作ダンスの練習に加わろうとした。


真瀬莉緒

「会長、僕らは文化祭で創作ダンスをやるんですよ。」


伊剣タイガ

「そうか……では楽しみにしているからな。」


真瀬莉緒

「はい、よろしく……」


??

「ちょっと!しっかりしてよ!」


伊剣タイガ

「ん?騒がしいな?」


教室を覗くと、来川さんに古金さんが詰め寄っていた。


古金ミカ

「いちいち、みんなの意見にころころと乗っからないで!みんな困るんだから!!」


星野シキア

「ミ……ミカ……ちょっと言い過ぎ……。」


古金ミカ

「しっかりしてよ!笛花先生に任されたんでしょ!!」


星野さんも少し動揺している。どうすればいいのか……


すると会長が、Kクラスの教室に入ってきた。


伊剣タイガ

「騒がしいぞ。怒るのはいいが、周りのことに気をつけろ。」


古金ミカ

「あ……会長……。………………すみません。」


来川ナナ

「…………。」


すると、来川さんは教室から走りながら出ていった。


真瀬莉緒

「あ!来川さん!待ってください!」



六郭星学園 寮 志奈・ナナの部屋



僕は来川さんを追いかけると、来川さんは自分の部屋に入っていった。


真瀬莉緒

「来川さん!お願いです!話があります!」


僕はドア越しに来川さんにお願いをした。


真瀬志奈

「莉緒……?」


真瀬莉緒

「あ、姉さん……。」


僕は姉さんに来川さんとのことの経緯を話した。


真瀬志奈

「……ちょっと待ってね。今、話を聞いてみるね。」


姉さんはそう言うと合鍵を使って部屋の中に入っていった。


ドアの向こうからは話し声が聞こえる。姉さんと来川さんが話しているのだろう。


話し声が聞こえなくなると姉さんがドアを開けた。


真瀬志奈

「莉緒、入ってきて。あなたからも話した方が良いかもしれないわ。」


僕は姉さんの言った通り、部屋の中に入る。


部屋の隅で来川さんはうずくまっていた。


真瀬莉緒

「来川さん……。」


来川ナナ

「莉緒くん……私って……ダメなのかな……。」


真瀬莉緒

「来川さん……そんなことはないです。」


来川ナナ

「でも私はみんなの意見に「はい。」としか言えないの……。」


真瀬莉緒

「お友だちの件で言えなくなったんですよね……」


来川ナナ

「どうしてそれを……!」


真瀬莉緒

「来川さん……ごめんなさい。お父さんから話を聞いたんだ。」


来川ナナ

「お父さんが……?」


真瀬莉緒

「お父さんは自分の意思を貫く来川さんに戻って欲しいんだ。」


来川ナナ

「お父さん……。」


真瀬莉緒

「僕は意見を言っただけで怒ったりなんかしない。古金さんも、星野さんもみんなも来川さんのことを信じているよ。」


来川ナナ

「莉緒くん…………。」


真瀬莉緒

「まずは……僕の……いや、僕たちの作った曲に意見が欲しいな。」


来川ナナ

「…………。」


真瀬莉緒

「まずは聞いて……僕たちが作った曲を……。」


僕は来川さんと一緒に作った曲を奏でる…………。



曲を奏で終える。来川さんは…………?


来川ナナ

「…………。」


来川さんは無言だった。けれど何かを考えている様子が見れた。


僕は来川さんにあることを聞いた……


真瀬莉緒

「来川さん……僕と……曲を作りたいですか……?他にやりたいことはないですか……?」


僕は思い切って、こう言った。そして、来川さんは重い口を開ける。


来川ナナ

「私は…………この声優さんに曲を作りたい。この声優さんじゃなきゃダメなんだから!」


僕は姉さんと目が合い、互いに頷いた。


真瀬莉緒

「わかりました。じゃあ僕もこの声優さんに曲を……。」


来川ナナ

「うん、でもこの曲の状態ではダメ、もっと色々とアレンジを加えないと曲がダメになるわ。」


真瀬莉緒

「うん……うん!」


僕は来川さんから出る意見にしっかりと耳を傾ける。こうして本気で取り組める状態になったのは嬉しい。


来川ナナ

「……あ。みんな待たせているわね。そろそろ戻りましょうか。」


真瀬莉緒

「そうだね。みんなも待ってるからね。」


僕は姉さんにありがとうを伝えて、教室へと戻っていった。



六郭星学園 Kクラス教室



教室に戻ると星野さんと古金さんたちはまだ教室にいた。


星野シキア

「ナナ!良かったわ……。ミカも心配していたわよ。」


古金ミカ

「心配って……まあ……言いすぎたわよ。」


古金さんはまだ少しムスっとしている。


僕は来川さんと話したことを2人にも話をした。


古金ミカ

「それで……大丈夫なの?」


来川ナナ

「ええ、大丈夫よ。本格的に取り組むわよ。」


古金ミカ

「よろしい!ドンとこいだよ!」


来川ナナ

「ええ、もちろんよ!」


古金さんも元の様子に戻ったようだ。


これからは本当に本格的に曲作りが始まりそうだ。

あの声優さんに歌ってもらうため……全力で取り組むぞ……!

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