第3章 茜色の夕焼けで(春井リカコ編)中編
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「…………ですか?…………大丈夫ですか?」
真瀬莉緒
「…………?あなたは…………?」
目が覚めると、男子生徒がいた。
どこかで見たことがある。…………そうだ。テレビ番組の…………。
真瀬莉緒
「風亥ノクア(かぜかい のくあ)さん…………。」
風亥ノクア
「僕のことを知っているのかい?…………まあ、あの番組有名だからね。」
真瀬莉緒
「はい。まさかここで有名人に会えるとは…………!」
風亥ノクア
「良いんだよ。そんなお世辞は…………。…………またどこかで、会えると良いね。」
真瀬莉緒
「はい…………そのときはよろしくお願いいたします。」
風亥さんは笑顔で頷いて、展望台をあとにした。
真瀬莉緒
「……………………。」
また1人になった。ここにいても仕方がない。僕は学園に戻ることにした。
六郭星学園 Gクラス教室
真瀬莉緒
「用もないのに教室に入ったけど…………。」
春井リカコ
「あなた…………こんなところで何を…………?」
真瀬莉緒
「春井さん…………!すみません…………用もないのに教室に入ってしまって…………。」
春井リカコ
「……………………。」
真瀬莉緒
「春井さん…………?」
春井リカコ
「いえ、何でもないわ…………。」
真瀬莉緒
「…………春井さんは僕のことをどう思っているんですか?」
春井リカコ
「別に…………それは…………。」
春井さんは珍しく、動揺をしている。
真瀬莉緒
「…………春井さん。」
春井リカコ
「わ、私は…………!」
僕は春井さんに近づく。
春井リカコ
「来ないで!!」
僕は春井さんに押し倒される。
春井リカコ
「…………あっ、その…………。」
真瀬莉緒
「……………………もういいです。」
僕は教室から出てった。
六郭星学園寮 莉緒・アイクの部屋
寮の部屋に戻ると、浦川さんの代わりに、柳原先生がいた。
真瀬莉緒
「柳原先生?」
柳原悠香
「真瀬さん。実は、今日は折り入ってお話があります。」
真瀬莉緒
「お話って?」
柳原悠香
「他の学園から、交換留学の紹介がありました。この学園なのですが…………。」
真瀬莉緒
「この学園は…………!」
この学園は吹奏楽で有名な学園だ。楽器のスキルアップにはもってこいの学園…………。
真瀬莉緒
「でも、僕は…………。」
柳原悠香
「わかっています…………。この学園に残るかどうかは任せます。決めたら、私のところに来てください。」
そう言って、柳原先生は部屋から出て行った。
真瀬莉緒
「どうしよう…………。」
考えていると、そこに浦川さんが戻って来た。
浦川アイク
「真瀬。すれ違った柳原先生に聞いたぞ。交換留学だってな。」
真瀬莉緒
「はい…………どうしようか迷っています…………。」
浦川アイク
「真瀬のやりたいようにやればいい。本当に信頼できる友人がいるなら、そっちを優先したらどうだ?」
真瀬莉緒
「……………………。時間を下さい。」
浦川アイク
「わかった。…………期待しているぞ。」
僕はひとまず寝ることにした。
翌日…………。
六郭星学園 Gクラス教室
真瀬莉緒
「…………クラスメイトとお別れするのか…………。」
クラスメイトと別れる、でも新しい友人もできる。僕は悩んでいた。
考え込んでいると、そこに駆け足の音が聞こえる。
真瀬莉緒
「な、なんだ…………?」
春井リカコ
「り…………莉緒!」
真瀬莉緒
「春井さん!?」
春井さんは僕の腕を掴み、泣きそうな声を出す。
春井リカコ
「莉緒、交換留学ってどういうこと!?私…………嫌だ…………!私は莉緒が…………いないとダメ…………!あのとき図書室で倒れそうになったときに私を守ってくれた…………。大切な人…………!」
真瀬莉緒
「春井さん…………。」
春井リカコ
「莉緒…………あのときはごめんなさい…………。私の大切な人なのに…………傷つけて…………!大切な友達も傷つけて…………!莉緒…………私は…………!」
真瀬莉緒
「…………良いんですよ。春井さん。やっと聞けましたね。その言葉を。」
春井リカコ
「莉緒…………。」
真瀬莉緒
「名前で呼んでくれた。莉緒と言う、名前が聞けて僕は幸せです。」
春井リカコ
「……………………。」
真瀬莉緒
「迷っていました。このまま学園に残るか、吹奏楽が名門の学校に留学するか。僕の中で決意が決まりました。」
春井リカコ
「それって…………?」
真瀬莉緒
「僕、ここに残ることにしました。春井さんのおかげです。」
春井リカコ
「莉緒!!」
春井さんは僕に抱きつく。
真瀬莉緒
「これからも…………よろしくお願いいたします。」
春井リカコ
「ええ…………。ええ…………。」
六郭星学園 職員室
真瀬莉緒
「と、いう訳で申し訳ありませんが交換留学はなかったことにしていただけますか?」
柳原悠香
「ええ。…………何か嬉しいことでもあったみたいですね。それがきっかけになったなら良かったです。」
真瀬莉緒
「はい。おかげさまで…………。」
柳原悠香
「じゃあ、また教室でね。」
真瀬莉緒
「はい。」
職員室のドアを開け、廊下に出ると春井さんが待っていた。
春井リカコ
「莉緒。どうだったの?」
真瀬莉緒
「交換留学はなくなりました。これからもこの学園にお世話になります。」
春井リカコ
「良かった…………。」
真瀬莉緒
「行きますか。今日は音楽室で練習しますよ。」
春井リカコ
「ええ。」
僕たちは音楽室に向かう。