第3章 ホワイトミルクティーを(根村ユウタ編)前編
秋。根村さんとの作曲の練習は順調に進んでいる。足を引っ張ることはせずに色々と練習をできている。しかし、私は根村さんが何かを抱えていることをなんとなく感じている。けれど、根村さんにそのことを話すことができていない。モヤモヤが残る中、私は根村さんといつも通りの練習をすることにした。
六郭星学園 音楽室
真瀬志奈
「……………………。」
根村ユウタ
「…………ここをもっと…………。」
真瀬志奈
「はい。ここをですね…………。」
根村さんのアドバイスは何度も言うように、的確で素敵な楽曲になっていく。
根村ユウタ
「さすが…………。」
真瀬志奈
「はい。ありがとうございます。」
根村ユウタ
「そろそろ…………切り上げよう…………食堂に…………行こう…………。」
真瀬志奈
「そうですね。行きますか…………あっ。」
私は思い出した。莉緒から、レストランのクーポン券を貰っていたことを。
真瀬志奈
「根村さん。せっかくなので、今日はレストランでお食事をしませんか?」
そう言うと、根村さんは驚いていた。
根村ユウタ
「良いのか…………?自分で…………?」
真瀬志奈
「もちろんです。一緒に行きましょう!」
根村ユウタ
「ありがとう…………では…………行こう…………。」
レストラン
レストランに来た私たちは、ウエイトレスさんに案内された。
ウエイトレス
「いらっしゃいませ。2名様ですね。こちらの席をお使いください。」
真瀬志奈
「うわあ……!綺麗…………!」
案内された席は町並みがよく見え、色々な建物の光が輝いている。
根村ユウタ
「良い席を…………案内されたな…………。」
真瀬志奈
「そうですね。では、飲み物はどうしますか?」
根村ユウタ
「炭酸水を…………。」
真瀬志奈
「では、私も炭酸水にします。」
私たちは炭酸水を注文した。そして、炭酸水が提供された。
真瀬志奈
「では…………乾杯しましょう。」
根村ユウタ
「乾杯…………。」
炭酸水を飲むと、私たちは料理も注文した。
素敵な料理に、素敵なお店。気兼ねない人と会話できることに少し安らぎを感じていた。
この時間が長く続ければ良い、そう思った。
そして、私たちはお店を出る。すると、辺りの人たちがざわつく。
辺りの人たちをよく見ると、六郭星学園の生徒だった。
男子生徒A
「おい…………やっぱり…………。」
女子生徒B
「ええ…………そうよね。」
真瀬志奈
「…………これは、一体…………?」
あのときと一緒だ。根村さんの様子は…………。
根村ユウタ
「……………………。」
どこか悲しそうな様子で、この場を離れたがっている。
真瀬志奈
「根村さん…………離れましょう。急いで学園に戻って休みましょう。」
根村ユウタ
「…………すまない。」
根村さんは悲しみがだんだん増してきたのか、涙目になっていた。
真瀬志奈
「行きましょう。タクシー拾います。」
私はタクシーを呼んで、根村さんと学園までタクシーで戻った。
タクシーの車内では、根村さんの頬に涙の雫が流れていた。
六郭星学園寮 志奈・マナカの部屋
真瀬志奈
「戻りました…………。」
夢野マナカ
「あっ、真瀬さん!…………その…………ユウタのことですけど…………。」
真瀬志奈
「根村さん…………なんだか、みなさんに後ろめたいものがあるのか…………。わからないです。」
夢野マナカ
「後ろめたいものはないと思います…………。でも…………。」
真瀬志奈
「でも…………?」
夢野マナカ
「……………………勇気が出ないです…………。このことを伝えることを。」
真瀬志奈
「そうですか…………どうすれば…………?」
夢野マナカ
「真瀬さん。勝負しませんか?…………私を勇気づけていただけませんか?」
真瀬志奈
「勝負ですか…………?」
夢野マナカ
「勝負に勝ったら、真瀬さんにユウタのことを教えます。…………どうでしょうか?」
真瀬志奈
「…………断る理由はありません。やりましょうか。」
夢野マナカ
「ありがとうございます。…………では…………。」
私たちは、勝負をすることになった…………。
勝負の結果は、私の勝ちだった。
真瀬志奈
「勝ちました。では…………教えていただけますか?根村さんのことを。」
夢野マナカ
「わかりました…………では…………。」
私は根村さんのことを夢野さんから聞く。
真瀬志奈
「そんな…………そんなことがあるんですか…………!?」
夢野マナカ
「私も信じられませんでした…………けど…………。」
真瀬志奈
「…………信じるしかありませんね。けれど…………夢野さんも何か秘密を隠していますよね。」
夢野マナカ
「…………はい。あの…………真瀬さんの弟さんには内緒でお願いします。」
真瀬志奈
「莉緒に…………?大丈夫ですけど、何で莉緒の名前が…………?」
夢野マナカ
「それは…………私の秘密を聞けばわかります。」
真瀬志奈
「その秘密は…………一体…………?」
夢野マナカ
「私…………配信者をやっています。…………メルマと言えば…………わかりますか?」
真瀬志奈
「メルマ!?あのバーチャル配信者の、綺羅星メルマ(きらぼし めるま)の…………中の人!?」
言われてみれば、声が似ている。気づかなかった…………。
夢野マナカ
「はい。…………秘密ですよ。」
真瀬志奈
「…………はい。」
すると、ドアをノックする音が鳴る。




