第3章 山吹色の落ち葉(夢野マナカ編)後編
六郭星学園 中庭
真瀬莉緒
「あんなことをして大丈夫なんですか?」
夢野マナカ
「大丈夫ではないです。…………自分自身、とんでもないことをしたと思います。もしかすると…………真瀬さんにもご迷惑をおかけします。」
真瀬莉緒
「もしかすると、課題も変更せざる負えないかもしれないですね…………。」
夢野マナカ
「それは…………大丈夫だと思います。実力で返せば良いだけです。」
真瀬莉緒
「おお、それは心強いですね…………!」
夢野マナカ
「ここから、私は色々と謝罪の毎日かもしれません…………。辛いかもしれませんが、私は屈しません。真瀬さんがいるから…………。」
真瀬莉緒
「僕ですか…………?」
夢野マナカ
「はい。…………私、歌詞も書いてあるんです。真瀬さんに内緒で書いていました。」
真瀬莉緒
「歌詞ですか…………?」
夢野マナカ
「はい…………。これを声優さんに渡したいです。でも、私は…………。」
夢野さんは何かを躊躇う。それに僕は少し勇気を与えることにした。
真瀬莉緒
「…………実力で返すんじゃないんですか?」
夢野マナカ
「…………そうでしたね。…………私、頑張ります。」
真瀬莉緒
「はい…………。」
すると、山吹色の落ち葉が、僕の頬に当たる。
夢野マナカ
「落ち葉…………とても黄色くて素敵です。」
真瀬莉緒
「そうですね…………。」
夢野さんは落ち葉を踏みながら、鼻歌を歌う。心が落ち着いたのだろう。
これから理不尽なことがあるかもしれない。けれど、夢野さんとならきっと大丈夫だろう。
落ち着いて、僕は眠りにつくために寮の部屋に戻った。
六郭星学園 Jクラス教室
翌日になると、クラスの話は夢野さんの話で持ちきりだった。
木沢アカリ
「まさか、マナカがメルマだったとはね…………。」
木沢さんは驚きで、いつものテンションが下がっていた。
冬原マイカ
「そうかい。私は…………なんとなくわかっていたよぉ。」
真瀬莉緒
「えっ?…………知っていたんですか?」
冬原マイカ
「ええ。色々と…………ねぇ。」
色々と…………?詳しく聞きたいが、笛花奏先生がやって来た。
笛花奏
「真瀬莉緒くんね。ちょっと、職員室に来てもらえるかしら?」
真瀬莉緒
「はい…………。」
どうやら、メルマのことだろう。僕も色々と話さないといけない。逃げるわけにはいかない。
僕は笛花先生についていき、職員室に向かう。
六郭星学園 職員室
職員室には間宮先生、成瀬先生。笛花先生がいた。
成瀬実
「来ましたね…………。夢野さんのことについて聞きたいんですが…………。」
真瀬莉緒
「はい。」
笛花奏
「夢野さんは…………あんなことをしたのはどうしてなの?」
真瀬莉緒
「それは…………夢を追いかけていました。その夢を追いかけるため、夢野さんはあんなことをしたんだと思います。」
間宮舞来
「でも、それは…………メルマをやっていてもできたんじゃ…………ないですか?」
真瀬莉緒
「それは…………。」
しどろもどろになっていると、夢野さんがやって来た。
夢野マナカ
「すみません。遅くなりました。」
真瀬莉緒
「夢野さん…………。」
成瀬実
「来ましたね。…………夢野さん。どうしてあんなことを?」
夢野マナカ
「私は…………作曲家になりたい。けれど、私は配信者になっていました。…………綺羅星メルマ。配信者として作曲家になる夢もありました。」
真瀬莉緒
「夢野さん…………。」
夢野マナカ
「けれど、それはわたしではなく…………綺羅星メルマとしてのレッテルが貼られてしまう。私は…………夢野マナカとして、作曲家になりたい。そう気づいたのは真瀬さんのおかげです。」
真瀬莉緒
「……………………。」
夢野マナカ
「夢野マナカとして、作曲家を目指すなら、綺羅星メルマの活動を終わらせたい。あそこは混沌の魔窟です。」
笛花奏
「けれど…………この状況で作曲家になっても、業界の圧力がかかるんじゃ…………。」
夢野マナカ
「確かに、そうです。けれど、私は何年経とうとも、作曲家を目指します。曲はどこでも作れる。そして、今のネットなら、必ず…………1人や2人。目に留まります。…………メルマとしてもけじめをつけます。今、引き受けている仕事だけは続けます。」
笛花奏
「決意は固そうね…………。舞来。どうするの?」
間宮舞来
「仕方ないわね…………。一緒に謝罪にも行ってあげます。」
成瀬実
「舞来だけでは不安ですので…………僕も同行させていただきます。」
夢野マナカ
「先生…………ありがとうございます!」
真瀬莉緒
「ふぅ…………。」
僕は肩の荷が下りたのか、ホッとした。
笛花奏
「でも、その課題の曲…………声優さんに歌ってもらうんでしょう?今の状況で引き受けてくれるかしら…………?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。」
夢野マナカ
「簡単です。…………課題発表の日に声優さんに聞いてもらいます。」
真瀬莉緒
「声優さんに…………なるほど。」
間宮舞来
「…………ダメもとで呼んでみます。どうなるかはわかりませんが…………。」
夢野マナカ
「それでも大丈夫です。声優さんに歌ってもらうことはできなくても…………この曲だけは完成させたいです。」
成瀬実
「…………気持ちはわかりました。その夢…………大事にしてください。」
夢野マナカ
「あ、ありがとうございます!」
僕たちは先生方にお礼をして、教室に向かった。
六郭星学園 Jクラス教室
教室に行くと、姉さんのクラスメイトや冬原さんたちがいた。
木沢アカリ
「マナカ…………頑張ったねー!」
内野タスク
「夢野さん…………辛かったでしょう。お疲れ様でした。」
不知火カイル
「良かったよ。2人とも大丈夫そうで…………。」
真瀬志奈
「莉緒もお疲れ様!これからも頑張って。」
みなさん…………心配していたんだ。
冬原マイカ
「……………………。」
冬原さんも微笑んでいる。
根村ユウタ
「良かった…………みんなも…………理解してくれて…………。」
夢野マナカ
「ユウタ…………ありがとう。」
夢野さんと根村さんは握手を交わした。
声優さんに歌ってもらえるかはわからない。けれど…………この曲は完成させる。
残りの期間で、精一杯の実力を発揮するんだ…………!
 




