第2章 ブラックコーヒーを飲んで(夢野マナカ編)中編
六郭星学園 音楽室
翌日、僕は音楽室にいた。夢野さんにベースを聞いてもらうためにだ。
夢野さんはじっくりと、ベースを聞いてくれた。
夢野マナカ
「なるほど…………さすがです。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。」
お礼を言うと、夢野さんは申し訳なさそうに、曲のアレンジのアドバイスをくれた。それも的確なアドバイスだった。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。ああ、そうだ。この曲なんですけれど…………。」
夢野マナカ
「……………………?」
僕はこの曲を声優さんに提供することなどを色々話した。あとは受け入れてくれるかどうかだ。
夢野さんを見ると、考え込んでいた。
夢野マナカ
「それは良いんですけれど…………ちょっと諸事情が…………。」
真瀬莉緒
「諸事情ですか?それは一体?」
夢野マナカ
「……………………それは…………言えないです。ことが来るまでは。」
真瀬莉緒
「……………………。まあ、良いです。そのときを待ちます。」
夢野マナカ
「すみません。ありがとうございます。」
真瀬莉緒
「ちなみに、練習とかは参加できますか?課題でもあるので…………。」
夢野マナカ
「ああ、それなら問題ないです。さ、早速、練習しましょう。今日は…………あ。すみません。あの…………用事を思い出しました。」
真瀬莉緒
「用事ですか?…………あ。そういえば僕も、見ないといけないものがありました。今日は切り上げましょう。」
夢野マナカ
「はい。…………今日は貴重な時間を…………ありがとうございます。」
真瀬莉緒
「いえ、こちらこそ…………ありがとうございます。」
僕たちは音楽室を綺麗にし、その場をあとにした。
六郭星学園寮 莉緒・ユウタの部屋
真瀬莉緒
「さてと…………メルマとメルマと。」
僕はイヤホンを着けて、メルマの配信を待った。
真瀬莉緒
「ドキドキするな…………この間も、登録者が80万人になったからな。」
そう思っていると、メルマの配信が始まる。
綺羅星メルマ
「星々のみんな~!!みんなのアース。綺羅星メルマで~す!」
真瀬莉緒
「メルマ…………。…………ん?」
何故だ…………?この声、どこかで聞いたことのあるような…………?
綺羅星メルマ
「質問来てま~す。メルマちゃんは素敵な人に出会えたことはありますか?…………って、もしかして、好きな人とかいるのかなって、思っているのかな~?」
真瀬莉緒
「素敵な人か…………。」
綺羅星メルマ
「うん。メルマはね~。素敵な星に出会えたよ。恋人ではないけれど。素敵な大切な人ができたよ。」
真瀬莉緒
「へぇ。メルマも素敵な出会いがあったんだな。」
コメントを見ると、普通の配信者なら否定的な意見もあるが、ここではかなりの肯定的なコメントが多い。メルマのファンは優しい人ばかりだな。
綺羅星メルマ
「それじゃあ、この辺で。みんな~!良い夢を!!」
そして、メルマの配信が終わった。
真瀬莉緒
「メルマの素敵な人か…………どんな人だろう。」
そう考えていると、根村さんがベッドルームに入って来る。何か話したいことがあるのだろう。
真瀬莉緒
「根村さん。どうかしましたか?」
根村ユウタ
「メルマ…………見てたか。」
真瀬莉緒
「はい…………。見てました。」
根村ユウタ
「そうか…………なら…………マナカのこと…………どう思う…………?」
真瀬莉緒
「夢野さんですか?とても優しい方で、素敵な方です。」
そう言うと、根村さんは安堵したかのように肩をなでおろす。
根村ユウタ
「そうか…………なら良い…………。」
そう言って、根村さんは自分のベッドルームに戻った。
根村さん…………何かあったのかな…………?
そう思うも、僕はそのまま就寝することにした。
六郭星学園寮 Jクラス教室
今日は文化祭。僕と夢野さんは特に与えられた仕事もなく、1日中、模擬店を回れる。
僕は夢野さんを誘って、模擬店を回ることにした。
夢野マナカ
「ありがとうございます。誘っていただいて…………。」
真瀬莉緒
「良いんですよ。いつもお世話になっていますし、また何か課題のアイディアが思い浮かぶ可能性もありますから。」
夢野マナカ
「それでも、嬉しいです…………。」
真瀬莉緒
「じゃあ、行きましょうか。」
僕たちは模擬店を回る。
六郭星学園 体育館
まずは体育館にやって来た。演劇を見るためだ。
Eクラスの学生が演じている。恋愛のストーリーみたいだ。なんだかドキドキする。
真瀬莉緒
「素敵だ…………。」
夢野マナカ
「はい…………。」
夢野さんも少しドキドキしている。学生とは思えない演技力だ。
僕も夢野さんも見入っている。見入りすぎてあっという間だった。
夢野マナカ
「今度は…………どこに行きましょうか?」
真瀬莉緒
「そうですね…………今度は、メイド・執事喫茶に行きましょうか。」
夢野マナカ
「面白そうな…………感じですね。行きましょう。」
僕たちはメイド・執事喫茶に向かう。
教室に入ると、水崎アサヒ(みずさき あさひ)さんが迎え入れてくれる。
水崎アサヒ
「よく来てくれた!ようこそメイド・執事喫茶に!」
真瀬莉緒
「あっ…………はい。」
水崎アサヒ
「では、そこの席へどうぞ!」
僕たちは席へと案内される。
席に座ったとたん、1人の男子生徒がやって来た。
??
「やっほー!!アサヒー!!来たよー!!」
やって来たのは土原ガク(つちはら がく)さん。学園随一のハイテンションボーイだ。
水崎アサヒ
「来たのか…………。ガク。」
土原ガク
「まあね!今日はお友達も連れてきたからね!」
??
「友達って…………さっき知り合ったばかりだろう。」
そう言ったのは浅越ハルト(あさごえ はると)さんだった。
浅越ハルト
「無理矢理、誘われてな…………。」
水崎アサヒ
「その様子…………察する。」
土原ガク
「えへへ…………。」
浅越ハルト
「…………まあ、ここまで来たんだ。紅茶の1杯もらおう。」
水崎アサヒ
「心得た。堪能してってくれ。」
真瀬莉緒
「賑やかですね。なんだかとても楽しいです。」
夢野マナカ
「はい。…………ここに来てよかったです。」
夢野さんからも微笑みが出てきた。
そんな僕たちもコーヒーを注文することにした。




