第3章 白い平穏へ(不知火カイル編)前編
秋。私は苦しんでいた。不知火さんの容態はあまり安定しておらず、まだ帰ってきていない。そして、だんだんと嫌がらせが始まった。靴を隠されたり、食堂で水をかけられたり。寮の部屋には「惨め」。「恥知らず」。などと、貼り紙が貼られていた。毎日、繰り返しでだんだん辛くなってきている。それでも、私は不知火さんとの曲を作ることに専念していた。
六郭星学園 音楽室
真瀬志奈
「ふぅ…………。」
成瀬実
「大丈夫ですか?」
私は成瀬先生に付き添ってもらい、練習をしていた。成瀬先生も私のことで真剣に考えてくれている。
真瀬志奈
「それよりも、例の件は…………?」
成瀬実
「ええ。通信制で安定で名門の大学にも入れるようにしておきました。今後の人生にも影響はないような生活を送れるようにはしています。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。少し心が落ち着きました。」
成瀬実
「通信制なので、自宅から勉強を行えますので…………でも、これで良いんですか?」
真瀬志奈
「大丈夫です。ありがとうございます。」
成瀬実
「そうですか…………彼女たちも退学にはできますけど…………。」
真瀬志奈
「そこまでしなくても大丈夫です。私が悪いんですから…………。」
成瀬実
「……………………。」
真瀬志奈
「曲もこれで良い感じです。ありがとうございます。」
成瀬実
「そうですか…………。それじゃあ、そろそろ切り上げましょうか。」
練習を切り上げる。私は成瀬先生に守られながら、寮の部屋に戻る。
六郭星学園寮 志奈・マイカの部屋
真瀬志奈
「ふぅ…………。」
冬原マイカ
「大丈夫かい?」
真瀬志奈
「冬原さん…………。すみません。こんなことになってしまって…………。」
冬原マイカ
「それはそうだけれど…………志奈。ちょっと勝負してみないかい?」
真瀬志奈
「勝負ですか?一体どうして…………?」
冬原マイカ
「正直、志奈がこんな目に遭っているのが苦しくてねぇ…………。でも志奈がそれで良いって言うものだから、迷っているんだよ。勝負に志奈が勝ったら、志奈の自由にしても良いけど、負けたら私の言うとおりにして欲しい。」
真瀬志奈
「……………………。」
勝負に出るか迷ったが、私は…………。
真瀬志奈
「わかりました。やりましょう。」
私たちは勝負することになった…………。
そして、勝負の結果は…………。
真瀬志奈
「勝った…………。」
冬原マイカ
「私の負けねぇ。自由にして良いわよ。」
真瀬志奈
「わかりました。……………………。」
冬原マイカ
「でも、これだけは言わせてねぇ。志奈はこのままで良いのかい?」
真瀬志奈
「わ、私は…………。」
冬原マイカ
「…………まあ、勝ったから志奈の言うとおりにするけれど…………。」
真瀬志奈
「……………………。」
本音を言いかけようとすると、ドアをノックする音が聞こえる。
??
「失礼します…………。」
冬原マイカ
「サヤ…………?」
秋葉サヤ(あきば さや)。緑髪の女子生徒だ。何故ここに…………?
秋葉サヤ
「あの…………大変なことになりました。」
真瀬志奈
「大変なことって…………?」
秋葉サヤ
「とにかく、生徒会室に来てください。…………お願いします。」
真瀬志奈
「わ、わかりました。」
私は秋葉さんにせかされるように、生徒会室に行くことにした。
六郭星学園 生徒会室
真瀬志奈
「失礼します…………。」
崎盾ジュン
「ああ、志奈さん。待っていたよ。」
待っていたのは副会長の崎盾さんと水族館で会った錦戸さんだった。
真瀬志奈
「崎盾さん。今日は一体、何があったんですか?」
崎盾ジュン
「錦戸さんが見つけたんだけど…………このサイト見てくれないかな…………?」
真瀬志奈
「このサイトですか…………?」
サイトの見出しはこんな内容だった。
「被検体2。K・Sの懸賞金を増額。捕獲は男性も可とする。」
真瀬志奈
「これは…………一体…………?」
錦戸アケミ
「このサイトが言っていることが正しいのなら…………。もしかすると彼のことかもしれないわ。」
真瀬志奈
「不知火さん…………K・Sのイニシャルは一致しますね。」
秋葉サヤ
「まさか…………!?今まで人気だったのは…………!?」
崎盾ジュン
「秋葉さん。やめるんだ。それ以上は言わないで。」
真瀬志奈
「確かに…………ここ最近は男子生徒も私に対しての嫌がらせに加担していると聞いています。まさかこんなことだったんですね。」
錦戸アケミ
「志奈…………。」
真瀬志奈
「安心してください。私、ここを転校することになりそうですので。もう嫌がらせには遭いません。」
秋葉サヤ
「真瀬さん…………。」
真瀬志奈
「心配していただきありがとうございます。」
崎盾ジュン
「真瀬さん…………本当にそれで良いの?」
真瀬志奈
「はい。大丈夫です。…………では、失礼します。」
私は心配しているみなさんにお礼を伝え、生徒会室をあとにした。
六郭星学園 中庭
真瀬志奈
「さて…………荷物の準備をしないと。」
そう思ったとき…………辺り一面が光に包まれた。
真瀬志奈
「な、何…………!?」
光が消えると、そこには男の人が立っていた。
??
「やれやれ…………またここか…………。」
真瀬志奈
「あなたは一体…………?」
私はつい声をかけていた。
虹谷サイ
「真瀬志奈さんだね。僕は虹谷サイ(にじや さい)。僕はここに来たのは、ある人物の捕獲をするために来たんだ。」
真瀬志奈
「ある人物の捕獲…………?」
虹谷サイ
「その人物はとても重たい罪を抱えている。逃がしてはならない。」
真瀬志奈
「その人って言うのは…………?」
虹谷サイ
「不知火カイル。彼だよ。」
真瀬志奈
「不知火さんが!?」
私はつい動揺をする。なぜ、不知火さんが…………!?
虹谷サイ
「という訳だ、彼は今、どこにいるんだい?」
真瀬志奈
「…………教えることはできません。」
虹谷サイ
「どういうことだい?」
真瀬志奈
「私は不知火さんを信じています。どんな重たい罪でも、私は不知火さんがやったとは思えません。どうかお引き取りお願いします。」
虹谷サイ
「またか…………。」
真瀬志奈
「どういうことですか…………?」
虹谷サイ
「きみには関係のないことだ。…………仕方ない。今回も見逃してあげよう。後悔することになるけどね。」
虹谷と言う人は、捨て台詞を吐くと再びあたり一面が光に包まれる。




