第３章 緑の花火が夜空に舞い（冬原マイカ編）前編
秋。僕たちはアレンジした楽曲を練習していた。カラオケに行って以来、冬原さんは何かを考え込んでいた。練習中も上の空になることが多く、どうしたらいいのか…………。
六郭星学園 音楽室
真瀬莉緒
「冬原さん…………？」
冬原マイカ
「えっ…………ああ…………すまないねぇ。」
真瀬莉緒
「…………仕方ありませんね。今日は切り上げましょうか。」
冬原マイカ
「そうかい…………すまないねぇ。…………。」
真瀬莉緒
「何かあったんですか？…………話なら聞きますよ。」
冬原マイカ
「そうだねぇ。また今度聞いてもらおうかねぇ。」
冬原さんは話を泳がす。僕は少し、苛立ちもあるが気持ちを切り替えた。
真瀬莉緒
「わかりました。では…………。」
僕は楽器を片付けて、音楽室をあとにした。
六郭星学園寮 莉緒・カイルの部屋
部屋に戻ると、不知火さんが倒れていた。
真瀬莉緒
「不知火さん！？大丈夫ですか！？」
不知火カイル
「…………大丈夫。少し、めまいがしただけ。…………うん。」
真瀬莉緒
「ほ、本当ですか？それなら良いんですけど…………。」
不知火カイル
「最近、心配させてばかりだね。…………ごめん。」
真瀬莉緒
「謝ることはないですよ。ただ…………。」
不知火カイル
「何かあったのかい？」
真瀬莉緒
「不知火さんも冬原さんもどこか誰かを心配しているようで…………。」
不知火カイル
「…………冬原さんも？」
真瀬莉緒
「はい…………。どうしてかわからないですが…………。」
不知火カイル
「莉緒は、冬原さんにはそのことを話したのかい？」
真瀬莉緒
「いえ…………それは…………。」
不知火さんはため息を寸前で止め、こんな話をする。
不知火カイル
「莉緒。少し、勝負しないかい？」
真瀬莉緒
「勝負…………ですか？」
不知火カイル
「勝負で僕が勝ったら、冬原さんに答えを聞くこと。莉緒が勝ったら任せるよ。どうするかい？」
真瀬莉緒
「そうですね…………では…………。勝負しましょう。」
不知火カイル
「ああ、それじゃあ…………。」
僕は不知火さんと勝負する…………！
真瀬莉緒
「勝ちました。では…………どうしましょうか？」
勝負の結果は僕の勝ちだった。不知火さんとの約束はどうするか…………。
不知火カイル
「言ったでしょ？莉緒の任せるって。それに、決まっているんでしょ？莉緒がどう行動するかを。」
真瀬莉緒
「まぁ…………そうですね。なんとなくは。」
不知火カイル
「任せるよ。莉緒がどう行動するか。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
僕は部屋から出て、中庭に向かう。
六郭星学園 中庭
中庭に着いた…………。ここまで走ったせいか、疲れが出ていた。
真瀬莉緒
「はぁ…………ベンチに座ろう。」
座ろうとしたときに、辺りが一面、光に包まれた…………。
真瀬莉緒
「な、なんだ…………！？」
？？
「ふぅ…………これで何度目かしらね。」
光が消えると、見知らぬ女性がいた。
真瀬莉緒
「あ、あなたは一体…………？学校関係者じゃないですよね？」
虹谷アヤ
「真瀬莉緒…………私の名前は虹谷アヤ(にじや あや)。私はあることのためにここに来たの。」
唐突な話でついていけない…………どうして僕の名前を？それもそうだけど、あることのためとは…………？
真瀬莉緒
「あることって一体？」
虹谷アヤ
「あることって簡単に言うと、容疑者の捕獲ね。」
真瀬莉緒
「容疑者の捕獲…………？その容疑者って？」
虹谷アヤ
「決まっているわ、冬原マイカ。彼女よ。」
真瀬莉緒
「冬原さん…………！？どうしてですか！？」
僕はつい声を荒げた。
虹谷アヤ
「理由は言えない。けど…………彼女を連れて行く。それだけ。…………じゃあ、連れて行くわね。」
真瀬莉緒
「待ってください。」
僕は虹谷と言う名の人の目の前に立ちふさがる。
虹谷アヤ
「どうして彼女を守るの？」
真瀬莉緒
「僕は冬原さんを信じています。どんな罪があろうと、容疑ならば僕は止めます。」
虹谷アヤ
「……………………。」
真瀬莉緒
「証拠もないのに、犯人呼ばわりはダメです。どうかお引き取り願います。」
虹谷アヤ
「またね…………。その信じることが最大の後悔よ。」
真瀬莉緒
「……………………。」
虹谷アヤ
「まあ、良いわ。今日はこの辺で失礼するわ。またどこかで。」
すると、再び辺り一面が光に包まれる。またその光は消えると、虹谷と言う人もいなくなっていた。
真瀬莉緒
「……………………何だ一体…………？」
不思議に思うと、今度は…………。
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「えっ…………。」
ギギ……ガガ…………。
耳鳴り……？くっ……苦しい……！
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「ぐっ……ああああ…………！」
真瀬志奈
「莉緒！？」
僕は倒れる寸前に姉さんに支えられた。
真瀬志奈
「莉緒…………！しっかりして莉緒…………！」
真瀬莉緒
「ね、姉さん…………？」
真瀬志奈
「良かった…………無事で…………。」
真瀬莉緒
「迷惑…………かけちゃったね。」
僕は身体を起こした。
真瀬志奈
「大丈夫？色々と心配事が重なったの？」
真瀬莉緒
「うーん…………確かに…………。」
そう言うと、悩みの種になっていた、冬原さんも駆けつけてくれた。
冬原マイカ
「莉緒…………？何かあったのかい？」
真瀬莉緒
「いえ、大丈夫ですよ。それよりちょうど良かったです。」
冬原マイカ
「…………その様子だと、聞きたいことがあるみたいだねぇ。」
真瀬莉緒
「はい。聞かせてください。悩んでいることを。」
僕は思い切って、質問する…………。
