第3章 山吹色の夕焼けで (古金ミカ編) 前編
秋。ずっと続くはずだった、古金さんとの曲の練習。古金さんとのやりとり。楽しくなっていた……のに……。
古金ミカ
「真瀬さん。今日は曲の練習をいたしますか?」
真瀬莉緒
「……いえ、今日は……休みで。」
古金ミカ
「わかりました。ではまたの機会によろしくお願いいたします。」
淡々と言ったあと、そのまま教室から離れていった。
真瀬莉緒
「…………古金さん…………。」
あの日以来ずっとあの感じで、目の色も輝きが無くなっている。
それからか星野さんや来川さんと相談することが頻繁に多くなっている。
星野シキア
「莉緒……ミカは一体どうすれば……。」
来川ナナ
「いつも私たちはミカのはしたない様子をやめさせようとしていたけど……なんでだろう……。あの様子は……ミカなのかな……?」
真瀬莉緒
「………………。」
星野シキア
「なんとか元に戻らないのかしら……。」
真瀬莉緒
「そう……ですね……。」
来川ナナ
「難しいわね……。」
古金ミカ
「皆さんお揃いですね。」
来川ナナ
「わっ!ミカ!?」
古金ミカ
「驚かせて大変申し訳ありません。いつも皆さんと一緒にいることが多いので、ここにいることは間違いではないのかと……。」
星野シキア
「ま、まあ……そうだけど……。」
古金ミカ
「ですが……今回は皆さんだけのご相談みたいですね。大変失礼しました。それではこれで……。」
真瀬莉緒
「待ってください!古金さん……やっぱりお父さんに何かされたんじゃ……。」
古金ミカ
「しつけです。」
真瀬莉緒
「えっ……?」
古金ミカ
「お父さまにはしつけをされました。何も問題ありません。」
来川ナナ
「……でもミカ!腕を見せて……!」
来川さんが古金さんのシャツの腕部分の袖をめくると、大きなアザができていた。それも数カ所にあった。
来川ナナ
「しつけって……これはどう考えても虐……」
古金ミカ
「やめてください。皆さんにはあまり関係ないことです。失礼します。」
古金さんは教室から出てってしまった。
真瀬莉緒
「古金さん……………」
星野シキア
「あんなのどう見たって…………でも……どうすればいいのか……」
どうすればいいのか……それはもちろん前の古金さんに戻って欲しい。それだけだ。あんな古金さんは古金さんじゃない。
それに…………柊木さんはどう思っているのだろう。僕らと同じ事を思っているのだろうか……
六郭星学園寮 莉緒・アイの部屋
柊木アイ
「……正直、僕はずっとずっと真面目な様子でいて欲しいと思っていたよ……けど…………あれはミカじゃない。前のミカに戻って欲しい。」
真瀬莉緒
「僕らと同じ気持ちなんですね。」
柊木アイ
「ねぇ……僕……やっぱり間違えてたのかな……?」
真瀬莉緒
「…………それはないと思います。」
それはもちろん柊木さんもこんなことになるとは思わなかっただろう。そんな人を責めるわけにはいかない。
柊木アイ
「……ありがとう。……やっぱり僕の母さんもやっている融資を止めた方が良いかもね。」
真瀬莉緒
「融資?」
柊木アイ
「ごめん。言い忘れていたね。狼みたいな獣が学園内を暴れていた時のことを覚えてる?あの時にさ、待機することがあったじゃん。その時にミカと2人で話していたこと。狼みたいな獣の育成の融資かもしれないって……。」
真瀬莉緒
「そんなことが……!?」
柊木アイ
「最初は信じなかったけど……あの件があってから本当のことなんじゃないかって……。それにミカのあの現状……信じないわけにはいかないかもしれない。」
真瀬莉緒
「柊木さん……。」
柊木アイ
「けど……それにはまだ決心がまだ足りない。だから……莉緒くん。お願い。決心をつけさせて。」
真瀬莉緒
「……どうやってですか?」
柊木アイ
「僕と勝負してほしい。ルールは簡単。コイントスで裏か表を当てるゲーム。3回勝負で。」
真瀬莉緒
「…………。」
柊木さんは古金さんのために頑張ろうとしている。親のことを信じるか、友達を信じるか……きっと重大な決断なのだろう。
真瀬莉緒
「わかりました。やりましょう。」
柊木アイ
「ありがとう……莉緒くん。」
僕は柊木さんのコイントスに挑む……!
そして……コイントスの結果は僕の勝ちだった。
真瀬莉緒
「勝ちました。」
柊木アイ
「負けた……か。」
真瀬莉緒
「柊木さん……。」
柊木アイ
「決めた。ミカを信じるよ。」
真瀬莉緒
「……!それじゃあ!」
柊木アイ
「うん。でもその前にまずはミカを元のミカに戻さないと。」
真瀬莉緒
「そうですね。絶対に明るい古金さんにしましょう!」
柊木アイ
「うん!」
僕たちはそう決意し、お互いに何ができるのかを考えるため外に出た。
六郭星学園 中庭
助けるためにはどうすればいいか……うーん……難しいかもしれない……でも……どうすれば……。
そう悩んでいる時……大きな爆発音と共に眩い光が辺りを包み込んだ。
真瀬莉緒
「な……なんだ!?」
光がなくなるとそこには1人の女性が立っていた。
真瀬莉緒
「あ、あなたは……?」
虹谷アヤ
「どうも、真瀬莉緒さんですね。私は虹谷アヤ(にじや あや)。よろしくね。」
真瀬莉緒
「は、はあ……。」
急に現れて……一体何が目的なんだろう……?
真瀬莉緒
「あの……何をしに来たんですか……?」
虹谷アヤ
「ああ、そうね。簡単に言うと、古金ミカの捕獲よ。」
真瀬莉緒
「こ、古金さんを……!?なんでですか!」
虹谷アヤ
「彼女にはとある疑いがかけられているの。詳しくは言えないけど、彼女は連れて行くわね。」
真瀬莉緒
「な……やめてください!!」
僕はとっさに腕を掴んだ。
虹谷アヤ
「なにをするの?」
真瀬莉緒
「彼女は今、とても苦しんでいます。暴力を振るわれてもいる。おそらくは暴言も吐かれていると思います。」
虹谷アヤ
「…………。」
真瀬莉緒
「そんな状態で彼女をさらに苦しませるわけにはいきません。もしそれでも捕獲すると言うのなら……僕はあなたを許しません。」
虹谷アヤ
「そこまで言うのなら……私は身を引きましょう。……ですが……後悔しませんね……!」
そう言って再び光が照らされ虹谷という人は消えていた。
真瀬莉緒
「一体なんだったんだろう……?いや、まずは古金さんを救う方法を考えなくちゃ……!」
六郭星学園 Eクラス教室
僕はどうすれば古金さんを救えるのか、古金さんのルームメイトの姉さんに相談してみた。
真瀬志奈
「ミカを救う方法か……たしかに私もミカのことが気がかりなのよね……。」
真瀬莉緒
「姉さんは……姉さんならどうするの?」
真瀬志奈
「私は……そうね……待つしかないわね。」
真瀬莉緒
「待つしか……ない?」
真瀬志奈
「私は思うのよ……こればかりはミカ自身が乗り越えないといけないの。私たちにできることはミカを受け入れる体制を作ることだと思うの。無理矢理に元に戻そうとするとまた逆効果になりそうな気もするの。それなら体制を整えて待つしかないのかなって。」
真瀬莉緒
「体制を……受け入れる……。」
真瀬志奈
「莉緒……あなたにはあれがあるでしょう?」
真瀬莉緒
「…………!」
そうだ……あれがある……!こうしてはいられない。います……
ギギ……ガガ……
な……なんだこの耳鳴り……!?
ギギ……ガガ……
真瀬莉緒
「が……苦しい……!」
真瀬志奈
「り……莉緒!?大丈夫!?しっかりして!」
真瀬莉緒
「はっ……!姉さん!」
その声でなんとか意識を取り戻すことができた。
真瀬志奈
「莉緒?大丈夫なの?無理しないで……。」
真瀬莉緒
「う、うん……」
今のはなんだったんだのだろうか……僕にもわからないまま、僕は音楽室に向かう……。
六郭星学園 音楽室
音楽室に来た。僕は早速、作曲作りに取り掛かろうとしたが、そこには……古金さんがいた。
真瀬莉緒
「古金……さん?」
古金ミカ
「真瀬さん。お疲れ様です。作曲でしょうか?それでしたら私もご一緒させていただきます。」
真瀬莉緒
「…………。いえ、僕1人でやります。」
古金ミカ
「どういうことでしょうか?」
真瀬莉緒
「今の古金さんとはできないと思います。」
古金ミカ
「そうですか。わかりました。では、しばらくは別行動で行きましょう。」
真瀬莉緒
「はい。」
こうして僕は音楽室から離れることにした。
六郭星学園 空き教室
僕は笛花先生から許可を取り空き教室で練習をする。
古金さんが弾ける曲かつ完璧な曲を作るんだ。古金さんを待つんだ。
そう決めてから数時間経った。1人でどのくらい練習したのだろうか、外はもう真っ暗だった。部屋に戻ろう。
六郭星学園 廊下
学園の廊下はかなり暗くなっている。相当な深い時間なのだろう。門限も危ういかもしれない。
真瀬莉緒
「急いで……戻らないと……。」
僕は歩いていると空き教室から声が聞こえる気がした。
真瀬莉緒
「なんだろう……この声……?」
空き教室に近づこうとすると空き教室から1人の女子生徒が出てきた。
??
「あ、あの!私の声……聞いていましたか……?」
真瀬莉緒
「え、いや、聞いてないですよ……?あなたは……?」
夢野マナカ
「すみません……私、夢野マナカ(ゆめの まなか)です。」
真瀬莉緒
「真瀬莉緒です。あの……空き教室でなにを?」
夢野マナカ
「いえ……なんでも……ないです……では……失礼します……。」
夢野さんはそう言うと、とぼとぼと歩いて寮の方へ戻って行った。気のせいか……彼女の声はどこかで聞いたことのある声な気がした。
だけど、今はそんなことを考えている暇はない。急いで寮へ戻らないと。
真瀬莉緒
「僕も戻るか……。」
僕は急いで寮に戻った。
六郭星学園 Kクラス教室
翌日……僕が教室に入ると古金さんが声をかけてきた。
古金ミカ
「真瀬さん。今日は作曲に協力させてください。」
真瀬莉緒
「…………。」
古金ミカ
「なぜ私を拒むのですか?作曲をするだけですよ。」
真瀬莉緒
「……古金さん。今日は作曲ではなくて……ちょっとお散歩についてきてもらえますか?」
古金ミカ
「…………?構いませんが?」
真瀬莉緒
「それじゃあ、放課後に行きましょう!」
古金ミカ
「わかりました。放課後待っております。」
そして、放課後になった…………