第1章 灰色の背景に(冬原マイカ編)後編
六郭星学園 Jクラス教室
今日から寮生活。どんな生活になるかはわからないが、とても楽しみだ。
もちろん不安もあるが、まずは冬原さんに課題のコンセプトが決まったことを報告することにした。
僕は教室に入る。
冬原マイカ
「……………………。」
真瀬莉緒
「冬原さん…………?」
冬原さんは何かを携帯で見ていた。
冬原さんは気づいたのか、携帯をゆっくりしまった。
冬原マイカ
「おやあ、莉緒。おはよう。」
真瀬莉緒
「おはようございます。昨日のことですが、コンセプトがある程度ではありますが案が浮かびました。」
冬原マイカ
「そうかい。それなら…………少し、出かけようか。」
真瀬莉緒
「出かける…………?どこへですか?」
冬原マイカ
「決まっているだろう?課題のパートナーになったんだから、スキンシップを行わないとねぇ。」
真瀬莉緒
「なるほど…………一理ありますね。わかりました。どこに行きましょうか?」
僕は悩んでいると、冬原さんが行きたいところを言ってくれた。
冬原マイカ
「アウトレットモールに行かないかい?少し、見たいものがあってね。」
真瀬莉緒
「アウトレットモール…………?……………………あっ!!」
アウトレットモールで思い出した。綺羅星メルマのイベントがアウトレットモールで行われる。
メルマとは、Vtuberのことである。
名前は綺羅星メルマ(きらぼし めるま)。ここ最近で登録者数が60万人を超えた、今1番勢いのある女性Vtuberだ。
行きたいけど…………冬原さんの行きたいところを優先しよう。
真瀬莉緒
「見たいものって何ですか?」
冬原マイカ
「綺羅星メルマのねぇ…………イベントなんだけど。」
真瀬莉緒
「メルマ!?…………わかりました。行きましょう。」
同じ、イベントを見に行けるなんて良かった。それ以外にない。僕たちは放課後にメルマのイベントを見に行くために、アウトレットモールに向かった。
アウトレットモール
アウトレットモールに着いた僕たち。メルマのイベントまでまだ時間がある。少し待とうかと思っていたら、冬原さんが声をかける。
冬原マイカ
「莉緒。ちょっと、ゲームセンターに行こうじゃないか。」
真瀬莉緒
「ゲームセンターですか?…………そうですね。まだ時間もありますし、行きましょうか。」
冬原マイカ
「じゃあ…………おいで…………。」
僕は冬原さんに手を引っ張られ、ゲームセンターのあるところまで半ば強引に連れていかれる。
ゲームセンター
ゲームセンターに着くと、手を放してくれた。
真瀬莉緒
「冬原さん…………着きましたが、何をしますか?」
冬原マイカ
「そうねぇ…………写真を撮ろうじゃないか。せっかくの機会だ。」
真瀬莉緒
「写真ですか…………?構いませんけど…………。」
冬原マイカ
「それでこそ莉緒だ。早速、写真機に行こうじゃないか。」
写真機に入り、僕たちは写真を撮るために設定をする。
真瀬莉緒
「背景の色は何色にしますか?…………灰色もあるんだ。」
冬原マイカ
「灰色ねぇ。黒はないのかい?」
真瀬莉緒
「黒ですか…………?申し訳ないですけど、ないですね…………。」
冬原マイカ
「じゃあ、灰色で良いよ。さあ、撮ろうじゃないか。」
真瀬莉緒
「はい…………。」
僕たちは、写真を撮る。冬原さんはとても楽しそうだ。
写真機から出て、僕たちは写真が出来上がるのを待った。写真を出来上がるまで、気になったことを僕は話した。
真瀬莉緒
「冬原さんは灰色と黒が好きなんですか?」
冬原マイカ
「灰色はわからないけど、黒は大好きさ。」
冬原さんは悠長に黒について喋りだした。
冬原マイカ
「黒色は色の中で1番好きで、だいたいのものは黒色にしているのさ。でも、黒が好きって言うのも、あいつのおかげかもしれないねぇ。」
真瀬莉緒
「あいつのおかげ…………?それは一体、どなたのことですか?」
冬原マイカ
「いずれわかるさ…………さあ、メルマのイベントに戻ろうじゃないか。」
真瀬莉緒
「あっ、そうですね。そろそろイベントが始まりますね。では、向かいましょう。」
僕たちは足早にイベント会場に戻った。
イベント会場に着くと、結構な人数が集まっていた。メルマのファンの層は幅広く、男女問わず若者に人気が出ている。
真瀬莉緒
「メルマ…………こんなところまで人気になるとは…………。」
冬原マイカ
「……………………。」
真瀬莉緒
「冬原さん?どうかしましたか?」
冬原マイカ
「何でもないよ。ほら、イベントが始まったよ。」
真瀬莉緒
「あっ、本当ですね。楽しみましょう。」
広場のモニターにメルマが映る。会場は大盛り上がりだ。
綺羅星メルマ
「星々のみんな~!みんなのアース。綺羅星メルマで~す!」
メルマが一言いうと、会場のファンはさらに盛り上がる。
冬原マイカ
「……………………。」
真瀬莉緒
「…………冬原さん?」
冬原さんは声も出さず、ただ微笑みながら、メルマを見ていた。なんだか姉さんが僕を見ている顔と同じような気がする。
ただのメルマのファンではなさそうだけど…………。いや、今は気にしないでおこう。メルマのイベントに集中しないと。
それにしてもすごい人気だ。そんな時間もあっという間だった。
綺羅星メルマ
「みんな~!良い夢を~!!」
こうして、メルマのイベントが終わった。
冬原マイカ
「おわったねぇ。行こうじゃないか。」
真瀬莉緒
「そうですね…………。学園に戻りましょう。」
僕たちは学園に戻ることにした。本当はメルマファン。星々の人たちとの交流もしたいが…………。
仕方ないけど、六郭星学園に戻ろう。
六郭星学園 ロビー
学園のロビーに行くと、寮の部屋表が貼り出されていた。
冬原マイカ
「おやぁ…………?表が貼り出されてるわねぇ。」
真瀬莉緒
「僕は…………ここですね。では、今日はありがとうございました。」
冬原マイカ
「また明日。よろしくねえ。」
僕は六郭星学園の寮に向かう。
六郭星学園寮
真瀬莉緒
「ここが…………僕の部屋か…………。」
パンフレットによると、部屋は広くリビングとベッドルームが2部屋あり、両方防音になっているらしいのでベッドルームからもう一つのベッドルームからは何も聞こえない。この部屋に2人1組というのがこの寮のルールらしい。
真瀬莉緒
「部屋のパートナーはまだかな…………?」
僕は部屋のドアを開ける。
ドアを開けるとそこには男子生徒がいた。
真瀬莉緒
「あっ、どうもこんばんは…………。」
不知火カイル
「やあ、きみが部屋のパートナーなんだね。僕は不知火カイル(しらぬい かいる)。よろしくね!」
真瀬莉緒
「真瀬莉緒です。よろしくお願いいたします。」
不知火カイル
「真瀬…………?きみが双子の弟だね。きみのお姉さんの課題のパートナーになったんだ。」
真瀬莉緒
「ああ、姉さんの…………姉弟ともどもよろしくお願いいたします。」
不知火カイル
「ああ。もちろんだよ。莉緒は課題は作曲にするのかい?」
真瀬莉緒
「はい…………一応は。」
不知火カイル
「何か…………策はできているのかい?」
真瀬莉緒
「聞いてみますか?」
不知火カイル
「おっ、聞かせてくれるのかい!ぜひお願いするよ!」
真瀬莉緒
「はい。僕はこんな曲調でいこうと思います…………。」
僕は不知火さんに曲調を聞いてもらう…………。
演奏を終えると、不知火さんは喜んでいた。
不知火カイル
「すごいね!さすが真瀬姉弟だ。これを誰と演奏するんだい?」
真瀬莉緒
「はい…………冬原マイカさんです。」
不知火カイル
「そうか…………彼女か。」
不知火さんは冬原さんに対して、少しだけ眉をひそめていた。
真瀬莉緒
「あの…………何か?」
不知火カイル
「いや…………なんでもないよ。それじゃあ、僕は出かけるから、ゆっくりしていて。」
不知火さんは部屋をあとにした。
真瀬莉緒
「さて…………この曲調をインプットしてから寝よう。」
僕は音源を記録すると、布団に入った。