第3章 ブラウンチョコケーキ(木沢アカリ編)中編
真瀬莉緒
「親に会いたい…………?今はいないんですか?」
木沢アカリ
「ううん。いるはいるの。でも帰ってきてない。」
真瀬莉緒
「どういうことですか?」
木沢アカリ
「ウチの親は仕事に行ってから帰って来てないの。警察なんだけどね。」
真瀬莉緒
「警察官ですか!?すごいですね!」
木沢アカリ
「うん。何かのチームに入っていたんだけど、いなくなったみたいで…………。殉職した話は聞いていないから、きっと戻ってきてくれると思っているの。」
真瀬莉緒
「そうだったんですね…………。」
木沢アカリ
「今は、中井って言うおじさんが親みたいな形で関わってくれてるの。中井っておじさんはウチの親の職場の人。」
真瀬莉緒
「そうですか。なんだか聞いたことのあるような…………。」
木沢アカリ
「でも、親に会いたい。行方不明になっていても、生きている気がしてならないの。ウチは…………ウチは…………。」
木沢さんは少し、涙ぐむ。
真瀬莉緒
「泣かないでください。これで…………涙を拭いてください。」
僕は桃色のハンカチを渡す。
木沢アカリ
「莉緒くん…………。」
真瀬莉緒
「確かにお父さん、お母さんはいないかもしれませんが、今は僕たちがいるじゃないですか。…………聞いているんですよね。内野さん!」
廊下にいた、内野さん。途中から聞いていたのを僕は知っていた。
木沢アカリ
「タスク…………。」
内野タスク
「自分も木沢さんも中井さんにお世話になっていますが、きっと自分の親も、木沢さんの親も戻ってきますよ。僕も信じています。」
木沢アカリ
「…………ずっと、戻って来るって思っていたから、こんな元気な様子でいないとって思っていたけど…………。そんなに元気じゃなくても良いかもね。」
木沢さんはニコリと微笑んだ。何かが吹っ切れたようだ。
内野タスク
「良かったです。色々と。」
真瀬莉緒
「さあ、次は僕の番ですね。」
木沢アカリ
「莉緒くんの隠していることって、曲のことでしょ?」
真瀬莉緒
「えっ、何でそれを?」
木沢アカリ
「表情で分かるわよ。警察官の親を舐めないでよね。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
僕は木沢さんに納得がいっていない部分を報告をした。
そして、今、思いついたことも話した。
木沢アカリ
「本当に?それなら善は急げよ!急いで、音楽室に向かいましょう!」
真瀬莉緒
「はい!」
内野タスク
「頑張ってくださいね。真瀬さん。木沢さん。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。では、行ってきます!」
僕たちは音楽室に向かうことにした。
六郭星学園 音楽室
真瀬莉緒
「では…………演奏しますか。まずは僕の新しいアレンジを聞いてください。」
木沢アカリ
「うん!楽しみにしている!聞かせて!」
僕は早速、アレンジを演奏してみた。
演奏を終えると、木沢さんは喜んでいた。
木沢アカリ
「莉緒くん…………!さすがだよ!この曲の完成形だよ!これなら、声優さんにも喜んで歌ってくれるよ!」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。おかげで、何かが吹っ切れました。このアレンジなら僕も満足できます!」
木沢アカリ
「うん!頑張ったわね、莉緒くん!本当にありがとう!」
真瀬莉緒
「はい。…………次は、木沢さんの番ですよ。このアレンジ…………演奏してみてください。」
木沢アカリ
「うん!一緒にね。」
真瀬莉緒
「はい。では…………。」
僕たちは新しいアレンジを加えた曲の演奏を行う。
演奏を終えて、僕たちは喜びを隠せなかった。
真瀬莉緒
「できた…………完璧です!」
木沢アカリ
「うん!ウチもとても嬉しい!これで、満足して演奏出来るわね!早速、オーディションに提出しましょう!」
真瀬莉緒
「あ、もう提出期限に入ってますか?…………そうですね。善は急げ…………さっきも言ってましたね。提出しましょう!」
僕たちはパソコンを持ってきて、演奏を録音し、演奏のデータを送った。
真瀬莉緒
「これで…………無事にオーディションに参加できましたね。」
木沢アカリ
「うん。良い結果になればとは思うけど…………でも、参加できたことに対して満足できているわ。」
真瀬莉緒
「…………そうですね。木沢さんも頑張りましたね。それじゃあ、そろそろ戻りましょうか。」
木沢アカリ
「…………うん!」
六郭星学園 Jクラス教室
教室に戻ると、冬原さんと夢野さんがいた。
冬原マイカ
「おやあ…………その様子だと、2人ともうまい具合に行ったのねぇ。」
木沢アカリ
「うん!マイカもマナカもお疲れ様!」
夢野マナカ
「お疲れ様です…………。」
真瀬莉緒
「元気がないですね?何かありましたか?」
夢野マナカ
「いえ…………少し体調が良くないので、少し休もうかと…………。」
真瀬莉緒
「あ、はい…………大丈夫ですか?」
夢野マナカ
「はい…………何とか。」
冬原マイカ
「マナカ。ゆっくりと休むんだよ。」
夢野マナカ
「あ、はい。…………すみません。」
夢野さんは気分が重そうな身体を踏ん張るように、寮の方へ戻った。
真瀬莉緒
「さて、僕たちも寮へ戻りましょうか。」
木沢アカリ
「そうね!ウチも眠たくなってきたし。」
冬原マイカ
「それじゃあ、戻ろうかねぇ。」
僕たちも夢野さんのあとを追うように、寮に戻ることにした。
六郭星学園 中庭
真瀬莉緒
「おお…………秋風が涼しい。」
秋か座が気持ちよく、僕はしばらく涼むことにした。
真瀬莉緒
「こんなときは展望台にも行こうかな?」
僕は展望台に行くことにした。




