第3章 ブラウンチョコケーキ(木沢アカリ編)前編
秋。納得がいく、作曲ができていない。僕と木沢さんの曲は何かが足りない。その何かがわからない。僕はそれを木沢さんに伝えることができていない。僕は木沢さんと作曲の練習をそれとなくやる。
木沢アカリ
「うん!良い感じ!このまま、突っ切っちゃいましょう!」
真瀬莉緒
「は、はい。」
木沢アカリ
「でも練習のし過ぎは身体に悪いから、今日はこの辺で切り上げて、マイカたちのところへ行きましょう!」
真瀬莉緒
「はい。では教室に行きましょう。きっと冬原さんたちもそこにいますよ。」
木沢アカリ
「ええ。レッツゴー!」
僕たちは、Jクラス教室に向かう。
六郭星学園 Jクラス教室
Jクラス教室に行くと、冬原さんが案の定いた。ただ、何かを見ている。
冬原マイカ
「……………………。」
スマホで動画を見ている。…………メルマ?
冬原マイカ
「おや…………?莉緒じゃないか。気になるのかい?」
真瀬莉緒
「いえ…………ただ、少し。」
木沢アカリ
「メルマ好きだもんね!しょうがないよ。」
真瀬莉緒
「ところで夢野さんはどちらに?」
冬原マイカ
「ああ。用事があるって言って、どこかに行ったよ。」
真瀬莉緒
「そうですか…………。」
冬原マイカ
「そういえば、曲作っているんだってねぇ?楽しみにしているよぉ。」
真瀬莉緒
「はい。ありがとうございます。……………………。」
木沢アカリ
「莉緒くん…………?」
真瀬莉緒
「ああ。何でもありません。大丈夫です。」
木沢アカリ
「無理しないでね?私は待っているからね。」
冬原マイカ
「そうは言っているけれど、アカリ。あんたも大丈夫なのかい?」
木沢アカリ
「う、ウチ?ウチは…………大丈夫よ。」
冬原マイカ
「そ、そうかい?なら良いんだけど…………。」
木沢アカリ
「うん!だってこんな…………に…………も…………」
木沢さんは急に倒れた。
真瀬莉緒
「木沢さん!?」
冬原マイカ
「急いで保健室に運ぶんだよ!」
僕は間宮先生を呼んで、保健室に運んでもらった。
六郭星学園 保健室の廊下前
保健室の前で、木沢さんの意識が回復するのを待つ。姉さんも騒ぎを聞きつけ、駆けつけてくれた。
真瀬志奈
「大丈夫なの?アカリ…………やっぱり無理をしているんじゃ…………。」
真瀬莉緒
「無理を…………?それは一体?」
真瀬志奈
「うん。アカリは…………。」
すると、保健室のドアが開く。木沢さんはいつもの様子だった。
木沢アカリ
「莉緒くん!ごめんね!心配させちゃったでしょ?」
真瀬莉緒
「木沢さん…………。大丈夫なんですか?」
木沢アカリ
「大丈夫!元気だよ!」
真瀬莉緒
「……………………。」
真瀬志奈
「まあ、元気なら問題ないわね。…………でも無理しないで。」
木沢アカリ
「うん。わかっているわ。」
真瀬莉緒
「……………………。」
僕は姉さんの話を聞くことができないまま、寮の部屋に戻る。
六郭星学園寮 莉緒・タスクの部屋
真瀬莉緒
「木沢さん…………。」
木沢さんには何か裏がありそうだ。でもそれを知ることは得策ではない。木沢さんには作曲で言わないといけないことがあるのもそうだ。どうするか…………
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「えっ…………。」
ギギ……ガガ…………。
耳鳴り……?くっ……苦しい……!
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「ぐっ……ああああ…………!」
真瀬莉緒
「くっ…………。」
なんとか意識は保てたみたいだ。一体何だったんだろう…………?
僕は吹っ切れようと、頬を叩いて中庭に向かうことにした。
六郭星学園 中庭
真瀬莉緒
「秋風が涼しい…………。」
冷たくもなく、温かくもない。そんな風が良い。
僕は辺りを見回すと、内野さんを見つけた。
内野タスク
「ああ。真瀬さん。」
真瀬莉緒
「内野さん。ここで何を…………?」
内野タスク
「成瀬先生に頼まれて…………ここで落ち葉掃除をしていたんですよ。もう終わりましたが。」
真瀬莉緒
「そうですか。……………………。」
内野タスク
「もしかして、まだ木沢さんにあのことを話してないんですか?」
真瀬莉緒
「…………はい。勇気が出なくて。」
内野タスク
「でしたら…………勝負してみませんか?」
真瀬莉緒
「勝負…………ですか?」
内野タスク
「勝負に負けたら、勇気をもってください。勝ったらお任せします。」
真瀬莉緒
「なるほど…………面白いですね。では…………やりましょうか。」
僕はバスケットボールを持ってくる。
内野タスク
「では…………やりましょう。」
バスケットボールで勝負をする…………!
勝負の結果、僕の勝ちだった。そうか…………。
真瀬莉緒
「勝ちましたけれど…………。」
内野タスク
「そうですね…………。お任せします。木沢さんのことを。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
僕は中庭をあとにし、Jクラス教室に行くことにした。
六郭星学園 Jクラス教室
木沢アカリ
「あ、莉緒くん!今日も練習する?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。」
木沢アカリ
「…………ねえ。莉緒くん。何か隠してることない?」
真瀬莉緒
「隠していることですか?……………………。」
そう言うと、僕は黙ってしまう。
木沢アカリ
「そう…………やっぱり、何か隠しているのね。」
真瀬莉緒
「木沢さん…………。僕は確かに隠していることはあります。木沢さんも何かあるんじゃないですか?」
木沢アカリ
「ウチは…………。そうね。黙っているわけにもいかないわね。莉緒くんのは多分、些細なことだと思うから…………。ウチは話した方が良いわね。」
真瀬莉緒
「木沢さん、良いんですか?」
僕は改めて確認をする。木沢さんは笑顔で頷いた。
木沢アカリ
「……………………親に会いたい。」




