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colorful〜rainbow stories〜  作者: 宮来 らいと
第1部 古金ミカ編
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第1章 みずいろの足跡 (古金ミカ編) 後編

六郭星学園 寮


寮の中はかなりの広さだ。700人前後の生徒が全員同じ屋根の下で寝るのだから当たり前なのかもしれない。


柊木アイ

「うわ……相当な広さだね……。」


柊木さんも寮の広さに驚きを隠せない。

なお、寮のルールは2人1部屋で、どんな人と同じ部屋なのかはまだわからない。


柊木アイ

「あ、莉緒くんもこっち?僕もこっちなんだ。せっかくだから一緒に見ようよ。」


真瀬莉緒

「そうですね。どんな人と一緒なのか楽しみですね。」


僕たちはそれぞれの部屋に向かうため寮の中を歩いた。


真瀬莉緒

「あっ、ここだ……。」


僕が部屋を見つけると……


柊木アイ

「えっ。莉緒くんもここの部屋なの?僕と同じ部屋?」


真瀬莉緒

「ということは柊木さんが部屋のパートナーですか?」


柊木アイ

「そうなるね……。これからよろしく!」


真瀬莉緒

「あ……はい!よろしくお願いします!」


僕たちはドアの前で改めて挨拶をして、部屋の中に入った。


部屋の中に入ると2人部屋の割にはかなりの広さだった。


真瀬莉緒

「おお……かなり広いですね。」


柊木アイ

「そうだね。……僕の部屋よりも広いや。」


真瀬莉緒

「……え?柊木さん何か言いましたか?」


柊木アイ

「いや、なんでもないよ。ごめんね。」


真瀬莉緒

「あ、はい……」


気まずい雰囲気になってしまった。何か話をしないと……


そういえば古金さんと柊木さんの関係ってなんなんだろう?聞いてみようかな?


真瀬莉緒

「あの……古金さんとはお知り合いなんですか?」


柊木アイ

「うん。そうだよ。知ってるかな?六郭七富豪って。」


六郭七富豪……聞いたことある。この近くの大金持ちが7組もいるんだっけ……でもそれと何か関係が……?


柊木アイ

「僕はその七富豪の1つ柊木家の1人息子で、ミカは古金グループって言う富豪の1人娘なんだ。その縁で何度か会ってはあんなことをしてるってわけ。」


真瀬莉緒

「おお……。」


なんと……あの柊木家と古金グループの御曹司とは……この2人と関わるとは……驚きを隠せず、おお……としか言えなかった。


柊木アイ

「そんなに緊張しなくていいよ!僕とかミカもあんな感じだから。それに僕のこともアイって呼んでもいいよ?」


うぅ……いきなり名前で呼ぶのは……でもこう言われたら断れないなぁ……。


真瀬莉緒

「わかったよ……アイくん。」


柊木アイ

「ありがとう!それじゃあ僕はちょっと出かけるからよろしくね!」


そう言ってアイくんは部屋から出ていった。


それにしても、今日は一段と疲れた……こんな時はあれでも見よう。


最近ハマっているVtuberの動画だ。名前は綺羅星メルマ(きらぼし めるま)。ここ最近で登録者数が60万人を超えた、今1番勢いのある女性Vtuberだ。


綺羅星メルマ

「星々のみんな〜!みんなのアース。綺羅星メルマで〜す!」


いつものかけ声にいつもの挨拶。最近の心の拠り所だ。


綺羅星メルマ……癒されるな……。


メルマの動画をひと通り見終わると僕はすぐに寝床についた……。



六郭星学園 音楽室



翌日……僕と古金さんは音楽室にいた。作曲のコンセプトを考えるためにだ。


真瀬莉緒

「……それにしても……やっぱり難しいかもしれないですね。」


古金ミカ

「まあまあ……。誰だって最初は悩むって!コツコツとやりましょー!」


古金さんはこういうが道があまりにも見えない。どうすれば……


古金ミカ

「……お悩みのようね!そしたらこのお姉さんに任せなさい!」


同い年ですけど……。


古金ミカ

「こういう時は気分転換!ではではさっそく公園へ行きましょう!」


真瀬莉緒

「えぇ……あぁ……ちょっと……。」


僕は言われるがままに公園へと連れて行かれる……その道中で……。


ポツポツ……ポツポツ…………


古金ミカ

「あ!雨ですな。」


真瀬莉緒

「まずいですね。あそこの屋根付きベンチで雨宿りしましょう。」


古金ミカ

「名案ですな……!」


本降りになる前に急いでベンチに駆け寄る。


本格的に降ってきたところでなんとかベンチにたどり着くことができた。


真瀬莉緒

「ふう……なんとかびしょ濡れになる前に座れましたね。」


古金ミカ

「そうですなぁ……でも水も滴る良い女的様子も見せたかったなあ……」


真瀬莉緒

「いえ……結構です……。」


僕が断ると、古金さんは何を思ったのか、古金さん自身が持ってきたカバンに手を入れる。

取り出したのはオレンジ色の弁当箱だった。


古金ミカ

「どう?自慢の弁当箱。中身は……おにぎりです!」


真瀬莉緒

「おお、これは美味しそうですね。1つ食べても良いんですか?」


古金ミカ

「どうぞどうぞ!美味しいよ!」


僕はおにぎりを食べる。……たしかに美味しい。あんな感じでも料理ができるってギャップがすごいな。


おにぎりを食べ終わるとふと……弁当箱に目が入り、こんなことを聞いてみた。


真瀬莉緒

「自慢の弁当箱って言ってましたけど、すごい価値のある弁当箱なんですか?」


古金ミカ

「全然!単純に色が好きなんです〜!オレンジは暖まる色で私もオレンジを見ると心が温まるんだ!」


真瀬莉緒

「オレンジ色が好きなんですね。なるほど……」


なんだろう……こんな感じでもオレンジ色のことを話している古金さんを見ると本当にオレンジ色が好きなんだなって気持ちが伝わってくる……。

古金さんは結構不思議な人かもしれない。


古金さんを見ると満面の笑みで、オレンジ色の串に刺したタコさんウインナーを差し出していた。


古金ミカ

「せっかく作ったんだもの!お姉さん食べてくれないと困っちゃうなぁ〜。」


なんだろう……慣れてきたからかとても良い人なのかもしれない。そう思ってきてしまった。


真瀬莉緒

「……いただきます。」


僕はそのままタコさんウインナーをパクりと食べた。


食べた時にふと、辺りを見ると雨がすっかりと上がっていた。


古金ミカ

「お、晴れましたな……ではでは、音楽室に戻るとしましょうか!」


真瀬莉緒

「……はい!」


最初はこの人とやっていけるか……不安しかなかった。でもオレンジ色のことを話をしていた時を見ると、説得力のある人、自分の意思を貫く人って思えた。……しばらくは古金さんと一緒にやってみよう。そう思えた日だった。


古金ミカ

「やや、莉緒っち。ぬかるんでいたからか、私たちの足跡に水たまりが溜まってるではないか!」


真瀬莉緒

「本当ですね。」


足跡の水たまりに快晴の空の光りが注ぎ、足跡が水色に光っている。


古金ミカ

「綺麗な色ですな。」


真瀬莉緒

「はい。……古金さん。」


古金ミカ

「ん?」


真瀬莉緒

「これからよろしくお願いします。」


古金ミカ

「…………もちろんだとも!よろしく!」


僕たちは握手を交わす。そして、曲のコンセプトなどを歩きながら話をして、音楽室に戻ろうとした……。


六郭星学園 玄関前


玄関に入ると、男の先生らしき人が僕たちを呼んだ。


鹿崎咲也

「ああ、ごめんな急に呼びかけて……俺は鹿崎咲也(しかさき さくや)だ。よろしくな。」


鹿崎先生……聞いたことがある。確か姉さんの担任をずっとしていたような……。


古金ミカ

「で、なんですか??私たちに何か??」


先生だからか少し控えめな古金さんがそう言った。


鹿崎咲也

「ああ、実は……君のお父さんからまた手紙を預かっていて……我々教師にも開けるなって言われているんだ。」


古金ミカ

「私に……?」


鹿崎先生からもらった手紙を黙々と読む。しばらく読んだところで……


ポイっ。


鹿崎咲也

「えっ、ちょっと。親からの手紙だぞ!」


古金ミカ

「大丈夫で〜す。では失礼します!」


そう言って僕を置いて部屋の方に戻っていった。


僕は何を思ったのか古金さんが捨てた紙を拾い上げる。


鹿崎咲也

「ああ……それ、古金に届けてやってくれないか?弟くん。」


真瀬莉緒

「あ、やっぱり僕のことを……?」


鹿崎咲也

「双子ってことは知ってるし、瓜二つだからな。すまんが頼んだぞ!」


そう言い、鹿崎先生も去っていく。


僕は古金さんの部屋に向かうため歩き出した。



古金さんの部屋を確認したあと、僕はすぐに古金さんの部屋に向かう。


その道中で、僕はチラッとしか見てはいないが……こう書かれてあった。



   この件で失敗したらわかっているな。


                 父より



この件とは……作曲のことだろうか?まだ結果すらできていないのに……いやそれよりもこの手紙だ。ほぼ脅迫状に近い。自分の子供に書く文章とは思えない。


本当に古金さんに渡していいのだろうか……僕がそう思っていたとき……


古金ミカ

「お!莉緒っち〜!こんなところでどうしたの〜?」


真瀬莉緒

「ああ……古金さん……。」


古金ミカ

「?」


真瀬莉緒

「鹿崎先生からさっき見た手紙を渡して欲しいって言われたけど……いります?」


古金ミカ

「……いらない。」


真瀬莉緒

「ですよね……。」


古金ミカ

「ですよね……?」


真瀬莉緒

「あ……いや……その……。」


古金ミカ

「……まあいいや。じゃ!明日も頑張ろうー!じゃあね!」


古金さんはそのまま去って行った。……古金さんの家庭事情はどうなっているんだろう……。詳しい人はいるのかな……?



六郭星学園寮 莉緒・アイの部屋



柊木アイ

「あ、おかえりー!どうだった?ミカとの作曲は?」


真瀬莉緒

「うーん……あまり進んではいないかな……?」


柊木アイ

「そっか……。」


柊木さんは自分のことのように考えてくれている。優しい人だな。


もしかすると古金さんの家庭事情とかも少しは知っているのかもしれない。ちょっと聞いてみようかな……


僕が話しかけようとすると柊木さんは唐突にこんなことを言った。


柊木アイ

「莉緒くんはさ、この声優さんならこんな曲はどうかなみたいなものはあるの?」


真瀬莉緒

「え……ああ。…………どうですかね?」


柊木アイ

「その返事ってことは、少なからずあるはあるみたいだね。」


真瀬莉緒

「まあ……あるはあります。けど、古金さんにはまだ話してはいません。」


柊木アイ

「……ちょっと弾いてみてよ。気になっちゃってさ。」


真瀬莉緒

「今ですか?……わかりました。」


僕はそう言われて弾いてみる。


この声優さんならこんな感じの曲かな……?



曲を弾き終えると柊木さんは驚いていた。


柊木アイ

「すごい……もうこんなところまで考えているんだ……!」


真瀬莉緒

「……ありがとうございます。」


僕は一応お礼を言った。


柊木アイ

「うん。ミカもこの曲を気に入るといいけど……」


そうだ。古金さんのことを聞かないといけないんだった。


真瀬莉緒

「あの……その古金さんの件で聞きたいことがあるんですけど……。」


柊木アイ

「ミカの?僕の言える範囲でなら構わないけど……。」


真瀬莉緒

「古金さんの家庭事情ってどうなっているんですか?」


柊木アイ

「…………。」


柊木さんが言葉に詰まっている。パンドラの箱だったか……。


柊木アイ

「……彼女はね。母親を早くに亡くして男手1つで育ったんだ。」


真瀬莉緒

「…………。」


柊木アイ

「ミカのお父さんはある事業に関わっているんだけど、それにミカは大反対をしていて……それで今はかなりの不仲でね……」


真瀬莉緒

「ある事業……?」


柊木アイ

「ミカはそれに反抗して、あんな態度をとっているわけ。……それでもあの行動とかはやめた方がいいけど……。」


真瀬莉緒

「そうだったんですね……。」


柊木アイ

「ミカには僕からも言っているけど……僕の親も同じ事業に関わっているらしいからあまり聞いてくれないんだ。」


真瀬莉緒

「…………。」


知らなかった……古金さんのあの行動や性格にはそんな裏があるなんて……。


柊木アイ

「僕からはここまでしか言えない……。ミカのこと……よろしくね。」


真瀬莉緒

「……わかりました。」


柊木アイ

「ごめん。じゃあ僕はちょっと購買に行って来るから、あとはゆっくりしててね。」


そう言って柊木さんは購買に行った。


真瀬莉緒

「古金さん……。」


僕はわかりましたとは言ったもののどうすればいいかわからない……僕に今できることは何かと考えていたら作曲しかなかった……


真瀬莉緒

「…………作るか……曲を……。」


僕はとにかくさっき弾いた曲をさらにアレンジを加えていく。


ひたすらに曲を弾く。ある程度弾いたところで僕は……寝床についた。

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