第3章 ジョンブリアンハッピー(伊剣タイガ編)後編
真瀬志奈
「伊剣さん…………。」
伊剣タイガ
「……………………。」
真瀬志奈
「本当は…………生徒会長じゃないんですよね。」
伊剣タイガ
「…………ああ。」
真瀬志奈
「代理の生徒会長。今は代理ではないですが、本来なら夏目さんが生徒会長になるはずだったんです。けれど、夏目さんはあの獣に恐怖を抱いていた…………恐怖のあまり、生徒会長を降りた…………そうですよね。」
伊剣タイガ
「…………私は元々は生徒会に入る気はなかった。」
崎盾ジュン
「タイガ…………。」
伊剣タイガ
「けれど、ホノカは獣を恐れた。そこで、白羽の矢が立ったのは私だった。私は…………あの獣を恐れていた。ホノカの気持ちもわかる。けれど、私が断ればまた誰かが恐怖に陥ってしまう。だから私は生徒会長になった。」
中神シンジ
「……………………。」
伊剣タイガ
「生徒会に女子がいなかったのも、元々はいたからだ。直前での変更だったからな。」
真瀬志奈
「そうだったんですね…………。」
伊剣タイガ
「私は、どんなに辛くても生徒会を守らねばならない。ホノカのためにも、後釜候補のためにも…………私で差し止めないといけない。」
真瀬志奈
「そんな…………!伊剣さん!自分を守ってください!」
伊剣タイガ
「しかし…………。」
中神シンジ
「伊剣!」
伊剣タイガ
「…………!?」
唐突に中神さんが大声を出す。
中神シンジ
「お前の気持ちは理解できる。けれど、周りのことも気づいてほしい。周りにはお前が傷ついて悲しい人がいるだろう?」
真瀬志奈
「中神さん…………!」
伊剣さんは私を見つめる…………どうやら気づいたようだ。
伊剣タイガ
「志奈…………ジュン…………シンジ。…………すまない。しばらく休む。生徒会はジュンに任せる。」
崎盾ジュン
「わかったよ。…………僕はタイガみたいなリーダーシップは取れないけれど、頑張るから。気にしないで。」
伊剣タイガ
「すまない…………。だが、作曲は引き続き任せてほしい。これだけは譲れない。」
中神シンジ
「わかっている。真瀬。伊剣を頼む。」
真瀬志奈
「はい。三蜂さんも口出ししないと言っていました。」
中神シンジ
「そうか。…………それなら安心だ。」
真瀬志奈
「では、伊剣さん。休んだら、ちょっとだけ練習しましょうか。無理しない程度にやりますよ。」
伊剣タイガ
「わかった。しばらく練習はしていなかったからな。行こうか。」
崎盾さんと中神さんに生徒会の仕事を任せて、私たちは作曲の練習を始める。
六郭星学園 音楽室
音楽室で私たちは作曲の練習を行う。ちょっとだけなはずがついつい熱中してしまい、夜になっていた。
真瀬志奈
「…………あっ。夜になってしまいましたね。すみません。ちょっとだけって言っていたのに…………。」
伊剣タイガ
「構わない。…………けれど、今日はこれで最後にしよう。あと1回だけ演奏を通しでやってみよう。」
真瀬志奈
「そうですね。わかりました…………。では…………。」
私たちは演奏を行う…………。
演奏を終える。私たちは実感した。今回の演奏が過去最高の演奏になったことを。
真瀬志奈
「やりましたね。」
伊剣タイガ
「ああ。これが私たちの曲だ。」
伊剣さんがそう言うと、2つの拍手が聞こえる。
1つは凪野先生。もう1つは…………。
真瀬志奈
「あ、あなたは!?」
もう1つの拍手は謝恩会で歌ってもらう声優さんだった。何故ここに…………!?
凪野雪緒
「たまたま声優さんがこの地域での仕事があってな。順調かどうかを見に来てくれたらしい。」
伊剣タイガ
「お会いできて光栄です。私は伊剣タイガと申します。今回、真瀬さんと楽曲の作成を行っております。」
伊剣さんは丁寧に挨拶をする。声優さんは深々とお辞儀をしていた。
真瀬志奈
「もしかして…………今の演奏を聞いていましたか?」
声優さんは頷く。そして、声優さんは伊剣さんの手を握る。
伊剣タイガ
「それって…………。もしかして…………。」
声優さんはこの楽曲をとても気に入ったようだ。そして、この楽曲を歌ってくれることになった。
真瀬志奈
「ありがとうございます!」
伊剣タイガ
「光栄です!ありがとうございます!」
伊剣さんはとても喜んだ。こんなに喜んでいるのは初めて見るかもしれない。
しばらく伊剣さんは声優さんと雑談を交わし、声優さんは音楽室をあとにした。
凪野雪緒
「良かったな、2人とも!俺も嬉しいよ!楽しみにしているからな!」
真瀬志奈
「凪野先生。ありがとうございます!」
伊剣タイガ
「ありがとうございます。さらなる高みを目指して頑張ります。」
凪野雪緒
「ああ。頑張れよ!」
凪野先生も音楽室をあとにする。
真瀬志奈
「やりましたね。伊剣さん。」
伊剣タイガ
「ああ。とても嬉しくて、心が躍る。ここまで頑張れたのは志奈のおかげだ。ありがとう。」
真瀬志奈
「ふふ…………伊剣さん。」
伊剣さんにここまで言われるのはとても嬉しい。心が明るい色に染まりそう。
真瀬志奈
「伊剣さん。これからもよろしくお願いします。」
伊剣タイガ
「ああ。もちろんだ。これからも…………な。」
そうして伊剣さんと私は寮に戻った。
六郭星学園寮 志奈・レンカの部屋
真瀬志奈
「ふう…………戻りました。」
三蜂レンカ
「お疲れ様。その様子だと…………良い方向に向かったみたいね。」
真瀬志奈
「はい。色々と…………。」
三蜂レンカ
「言っておくけど、特別だからね?」
三蜂さんにくぎを刺される。
真瀬志奈
「わかっていますよ。陰で見守っていてください。」
三蜂レンカ
「ええ。」
私はとても幸せな心で、眠りについた。




