第3章 ポピーレッドな日常へ(中神シンジ編)前編
秋。1年も後半に進んでいる。作曲は順調ではあるが、中神さんの石頭は相変わらずだ。ただ、作曲には毎日付き合ってもらっている。的確なアドバイス。的確な演奏技術。すべてがすごい。そんな日々を過ごしていた。
中神シンジ
「ふん…………上出来だ。さすが真瀬だ。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。一生懸命にやりましたからね。」
中神シンジ
「そうか。…………何か言いたげだな。」
真瀬志奈
「いえ、そんなことは…………。」
正直、色々言いたいことがある。中神さんの執着についてはかなり気になっている。
けれど、私は何も言うことなく自分の部屋に戻ろうとした。
中神シンジ
「なんだ、もう帰るのか?」
真瀬志奈
「はい。今日は切り上げようかと。」
中神シンジ
「ああ。わかった。」
部屋に戻ろうと、音楽室から出ると莉緒がやって来た。
真瀬莉緒
「ああ、姉さん。ここにいたんだね。」
真瀬志奈
「莉緒。久しぶりね。今日はどうしたの?」
真瀬莉緒
「今から、SクラスとFクラスで落ち葉の清掃をすることになって…………そのあと、焼き芋を焼こうって話になったんだ。今から来れる?」
真瀬志奈
「焼き芋!美味しそうね。行きましょう!中神さんも。」
中神シンジ
「全く…………仕方ないな。」
中神さんは嫌々ながらも来ることになった。
六郭星学園 中庭
中庭にやって来ると、SクラスとFクラスの生徒が掃除をしていた。そのほかにもお手伝いの人がいるみたいだ。
古金ミカ(こがね みか)さん。秋葉サヤ(あきば さや)さん。根村ユウタ(ねむら ゆうた)さん。この3人だ。
真瀬志奈
「今日はみなさんお手伝いありがとうございます。」
秋葉サヤ
「このくらいなら…………大丈夫ですよ。」
古金ミカ
「そうだよー!焼き芋も私のつてで仕入れてきたから!」
根村ユウタ
「任せろ…………。」
三者三様のタイプだな…………。でも協力してくれるのはありがたい。
中神シンジ
「では、手分けして作業をしよう。ここは任せろ。」
真瀬志奈
「はい。ではよろしくお願いいたします。」
私は莉緒と一緒にお手伝いの3人と近くの落ち葉を集める。
古金ミカ
「ふう…………結構集まって来たわねー。」
根村ユウタ
「ああ…………。」
真瀬志奈
「みなさん。今日はありがとうございます。でも、どうして急に?」
秋葉サヤ
「生徒会の会長に誘われて…………。楽しそうでもあったんで。」
真瀬莉緒
「そうか…………。本当にありがとうございます。…………そろそろ、集まってきましたね。タイガに報告しないと。」
莉緒は伊剣さんに落ち葉が集まったことを確認してもらう。
伊剣タイガ
「この量なら十分だな。では、焼き芋の準備をしよう。」
みなさんは落ち葉を1つに集めて、焼き芋を始めた。
火元の確認は日比谷先生と愛森先生。そして、神谷乙音先生がやってくれた。
日比谷直輝
「よし…………。できたな。乙音…………どうだ?」
神谷乙音
「……………………うん、良い感じ。みんなー!お疲れ様!好きなだけ焼き芋を食べてね!」
クラスメイト達は焼き芋を貰い、食べ始める。私も焼き芋を貰って食べる。
真瀬志奈
「うん…………。美味しい。」
味はとても美味しかった。中神さんは焼き芋に手を付けずに私を見ていた。
真瀬志奈
「あの…………食べないんですか?」
中神シンジ
「ああ…………。」
真瀬志奈
「食べかけで良いなら…………これを…………。」
中神シンジ
「いや、その…………。」
真瀬志奈
「……………………?」
中神シンジ
「さつまいもがあまり好きではなくてな…………。」
真瀬志奈
「そうなんですね。なんだ…………中神さんも嫌いなものがあるんですね?」
中神シンジ
「意外か?」
真瀬志奈
「人には好き嫌いはありますからね。否定はしませんよ。」
中神シンジ
「そうか…………ありがとう。」
真瀬志奈
「ど…………どういたしまして。」
中神さんからお礼を言われるなんて…………少し動揺した。
ああ…………動揺してなんだか…………。
ギギ……ガガ……
真瀬志奈
「えっ……!?」
何……この耳鳴りは……!?
ギギ……ガガ……
苦しい…………!
私はその場に倒れ込んだ。
中神シンジ
「お、おいっ!?」
意識が遠のいていく…………。
六郭星学園寮 志奈・ユリの部屋
真瀬志奈
「うっ…………うーん…………。」
目が覚めると、そこは寮の部屋だった。
真瀬志奈
「頭…………痛い…………。」
私はリビングルームのドアを開けると、笹野さんが写真を見ていた。
真瀬志奈
「さ、笹野さん?」
笹野ユリ
「あっ…………。」
笹野さんはポケットに写真をしまった。
真瀬志奈
「あの…………今の写真は?」
笹野ユリ
「そ、それは…………。」
私は思い切って、聞いてみることにした。
真瀬志奈
「笹野さん。教えてください。何か隠していますよね。中神さんのことも何か知っているんですよね。」
笹野ユリ
「……………………。」
真瀬志奈
「教えてください。中神さんのことを。」
笹野ユリ
「…………わかったわ。教えてあげる。ただし、勝負に勝ってからよ。」
真瀬志奈
「勝負…………ですか?」
笹野ユリ
「ええ。どうかしら?」
真瀬志奈
「構いません。笹野さん。よろしくお願いいたします。」
笹野ユリ
「了解。じゃあ…………。」
私は中神さんの秘密を知るために、笹野さんと勝負する…………!
勝負の結果は私の勝ちだった。