表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
colorful〜rainbow stories〜  作者: 宮来 らいと
第1部 星野シキア編
22/353

第3章 紅の決意 (星野シキア編) 後編

六郭星学園寮 中庭



六郭星学園の寮には中庭があり、それなりの広さで、公園遊具などもある。夜の時間帯はあまり人が来ることはあまりないらしいためか、中庭に僕だけしかいなかった。


真瀬莉緒

「…………作曲か……。」


僕にはまだ決心はつかなかった。タクトくんはあんなことを言っていたが、それでも不安があった。どうすれはいい……そんな時に……


目の前が真っ白な光と共に爆発音が鳴る。


真瀬莉緒

「なっ……!?なんだ!?」


??

「ふう……六郭星学園ね。間違いないわ。」


白い光が消えると共に1人の女性が目の前に立っていた。


??

「あ。あなた、真瀬莉緒さんでしょう?」


状況が追いつかない中で僕の名前を目の前の女性が言った。


真瀬莉緒

「え……どうして僕の名前を?」


パニックになりながらもなんとか口を開く僕。

そんな僕をみかねたか、女性は喋り出す。


虹谷アヤ

「私は虹谷アヤ(にじや あや)。名前ぐらいしか言えないけど、目的は1つ。星野シキアさんの捕獲よ。」


真瀬莉緒

「なっ……!星野さんを!?」


何を言っているかわからない……何故、星野さんを捕まえるのか……。


虹谷アヤ

「彼女にはとある容疑がかかっているわ。そのために彼女を連れて行くわね。」


そう言うと虹谷と言う女性は星野さんのところへ行こうとした。


僕は何が何だかわからないままだけど……虹谷さんの前に立ちはだかっていた。


虹谷アヤ

「避けてください。」


真瀬莉緒

「ダメです。彼女は何もしていません。それは僕が証人になります。なので捕まえる必要はないです。」


虹谷アヤ

「…………。」


真瀬莉緒

「仮に彼女が無実な場合どうするんですか?どう責任をとるべきですか?彼女に何かあったら僕は許すわけには行きませんね。」


虹谷アヤ

「…………わかりました。今回はこちらが引きます。でもわかってますね。彼女はグレーな存在だと言うことを……!」


そう言うと白い光が再び照らされ、光が消えると虹谷さんはいなくなっていた。


真瀬莉緒

「なんだったんだ……?」


僕は訳がわからずその場で立ったまま考え込んでいた。

するとそこに……。


??

「もしもし?そこの君?」


真瀬莉緒

「えっ……ああ!柳原先生!」


目の前にいるのは柳原悠香(やなぎはら ゆうか)先生。六郭星七富豪の1つの柳谷グループの会長の娘さんであり、家にはかなりの執事やメイドがいる。この間の執事・メイド喫茶のやっていたクラスもこの先生のクラスだ。家での生活はほとんどを執事やメイドに任せているが、本人は1人でも家事全般はできるらしく、実際に家庭科を担当している。


柳原悠香

「こんなところでどうしましたか?」


真瀬莉緒

「あ、いえ……少し頭の切り替えをと……。」


柳原悠香

「……何かあったんですか?よければ私が話を聞きますよ。」


真瀬莉緒

「……いえ、大丈夫です。おかげで目が覚めました。」


柳原悠香

「そうですか。じゃあそろそろお部屋に戻りましょう。」


時計塔を見ると確かに遅い時間になっていた。何もすることがないため否定することもない。


真瀬莉緒

「はい。」


そう言って僕は戻ろうとした……その時……



ギギ……ガガ……


真瀬莉緒

「な……耳鳴り……?」


ギギ……ガガ……


真瀬莉緒

「うわあ!く、苦しい……!!」


柳原悠香

「え……大丈夫ですか!?今、医務室に連れて行きますね!」


耳鳴りが鳴る中、僕は柳原先生と近くにいた同じ生徒によって医務室に運ばれた。



六郭星学園 医務室


目が覚めると医務室のベッドに横になっていた。


??

「ずいぶんとうなされていましたね……気分の方は大丈夫ですか?」


同じ学生らしき人が声をかけてくれた。ずっと見守ってくれたのだろう。


真瀬莉緒

「あ、はい……もう耳鳴りも鳴ってないので大丈夫です。」


??

「そうですか……。体調には気をつけてくださいね。」


真瀬莉緒

「あ……はい。気をつけます。」


そう言った時に、女子生徒が急に入ってきた。


??

「君!大丈夫か?サヤに何かされてないか?!」


彼女は大声で僕にそう言った。心配されている様子だった。


??

「あの……私……。」


??

「あ……その様子なら大丈夫そうね。」


1人でホッとした様子だった。この2人は一体……?


水崎アサヒ

「ああ、名前を言い忘れていたな。私は水崎アサヒ(みずさき あさひ)だ。よろしくな。その子は私と同じクラスの秋葉サヤ(あきば さや)だ。」


秋葉サヤ

「あ……よろしくお願いいたします。」


真瀬莉緒

「はぁ……よろしくお願いします。」


水崎アサヒ

「その様子なら大丈夫だろう。そろそろ部屋に戻るといい。」


秋葉サヤ

「お身体に気をつけてくださいね。」


そう言うと彼女たちは医務室から離れた。


真瀬莉緒

「……僕も部屋に戻ろう。」


独り言を呟きながら、自分の部屋に戻った。



六郭星学園 Kクラス



星野さんが部屋にこもってから3日が経った。一昨日に姉さんから連絡があった。部屋に戻ると姉さんの私物が部屋の外に置かれており、紙も置いてあった。「1人にさせて欲しい」……そう書かれていた。今は姉さんは古金さんと来川さんの部屋で寝ているそうだ。笛花先生も心配しているのか、放課後に少し話をした。


笛花奏

「星野さん……大丈夫なの?」


真瀬莉緒

「なんとも……言えないです。」


笛花奏

「……彼女ね。ずっとこもりっきりで何かをしているみたいなの。夜中もずっと……一生懸命に。」


真瀬莉緒

「一生懸命……ですか。」


笛花奏

「真瀬くんは……星野さんにどうして欲しい?」


真瀬莉緒

「僕がですか……?」


笛花奏

「星野さんのことを1番知っているのはあなたなの。彼女を悩みの呪縛を解けることができるのはあなたしかいないの。」


真瀬莉緒

「…………僕が……星野さんを……。」


笛花奏

「真瀬くんは……どう思っているの?」


僕はそれが追い詰める様な姿に見えた……星野さんのことをどう思っているか……僕にはわからない……。


何を言われるかはわからない……けど……今は正直に話そう……


真瀬莉緒

「僕は……星野さんのことは……。」


来川ナナ

「突然すみません!!」


正直に言いかけたとき、来川さんが血相を変えて教室に入ってきた。


笛花奏

「来川さん?どうかしたの?」


来川ナナ

「シキアがいないんです!!扉を開けた形跡も無くて、部屋を見たら、ベランダの窓が空いていて、窓のそばにはロープが……!!」


笛花奏

「何ですって!?急いで探さないといけないわ!!」


僕たちは古金さんとEクラスの姉さんとタクトくんたちに協力をしてもらい、星野さんを探した。

僕と来川さんはまず、星野さんの部屋の様子を見ることにした。



六郭星学園寮 志奈・シキアの部屋



真瀬莉緒

「ここが……星野さんの部屋……。」


実際には部屋の前までは行ったことはあるが、こうして部屋の中に入るのは初めてだ。


来川ナナ

「シキア……一体どこへ行ったの……?」


心配をする来川さんを尻目に僕は星野さんの机に目が入った。


真瀬莉緒

「これは……?」


机の上には1枚の手紙が書いてあった。

手紙は若竹色の用紙であり、いかにも星野さんが好んで使いそうな用紙だった。


僕は恐る恐る手紙の中を読んで見る……

…………莉緒へと書いてあった。……僕から……?


莉緒へ、こんなことをしてしまいごめんなさい。私は今回のことでタクトから言ったことで1つの決意をしました。でも私は手紙では言えない気がして……ただ、決意は話さないといけない。私はあの場所で待っています。その場所で決意を言わせてください。どうかその場所にたどり着くことを信じています。シキアより。


真瀬莉緒

「あの場所……。」


来川ナナ

「莉緒……?」


真瀬莉緒

「…………!」


来川ナナ

「ちょっと……!莉緒!?」


僕は無我夢中に走った。あの場所……。きっとあそこしかないと……!僕はそこへひたすらに走り続ける。待っている彼女のために……!



六郭星学園 裏庭



真瀬莉緒

「着いた……。」


そこは前に星野さんと作曲をした裏庭。そこに星野さんはいるとそう思った。

耳を澄ませるとエレキギターの音が聞こえる。

……ここに違いない!


僕は星野さんに会うために森の茂みに入る。


茂みを抜けると……そこには星野さんがいた。


真瀬莉緒

「星野さん!」


星野シキア

「莉緒……!」


久しぶりに見る星野さんの姿。会えたことの幸せに少しだけウルっとしながらも僕は星野さんに思い切って聞いてみる。


真瀬莉緒

「星野さん!どうしてこんなことを……!」


星野シキア

「……ごめんなさい。でも、私は決めたの。」


真瀬莉緒

「えっ……?」


星野シキア

「私……オーディションに参加する。」


真瀬莉緒

「え……!?」


僕には衝撃だった。オーディションには参加しないと思っていた……一体どうして……?


真瀬莉緒

「オーディションに参加する……?」


星野シキア

「ええ。オーディションに参加して私は見返すことにしたの。あの梶木に対して曲で見返してやると……!」


真瀬莉緒

「星野さん……!」


星野シキア

「出来レースの件も知ってる。……でもそれくらいのことも絶対に見返してやるんだから!」


真瀬莉緒

「……そうですね!それでこそ星野さんだ!」


星野さんの様子には真っ赤に燃え上がる様な決意が見えた。僕もそれに答えないといけない……!


星野シキア

「それに……莉緒だからってのもあるかな。莉緒とならきっとできる。そうさせてくれた。あれにはちょっと傷ついたけど……。」


真瀬莉緒

「あ……。」


そうだ。少し諦めたんだっけ……星野さんには悪いことを……。逆に傷つけてしまった……。


星野シキア

「それに関しては……もういいわ。莉緒はちゃんとここに来てくれたんだから。」


真瀬莉緒

「星野さんの行く場所ならわかってましたよ。ここは僕ら2人の場所だから……。」


星野シキア

「私たちの場所……!」


真瀬莉緒

「そう!ここであったことはきっと大きな印になります!そしてこれからもここで2人だけの時間を過ごそう!」


星野シキア

「莉緒……!そうね……これからもずっと……ね!」


真瀬莉緒

「はい!」


僕たちは指切りをして誓い合った。これからも……卒業してからも……。


星野シキア

「ねえ、莉緒。私……2人で作った曲を色々と直してみたの……。聞いてもらえるかしら?」


真瀬莉緒

「もちろんです!ぜひ聞かせてください!」


星野シキア

「ええ、じゃあ……早速聞いて……!」


僕は星野さんの奏でる曲に耳を傾ける……。



曲が終わる……。僕の心はすごく……温まっていた。


真瀬莉緒

「すごい……!すごいです!これならオーディションに絶対に負けないですよ!」


星野シキア

「一生懸命に弾いたから……ね。」


真瀬莉緒

「星野さん……これからもよろしくお願いします!」


星野シキア

「…………。」


真瀬莉緒

「星野さん?」


星野シキア

「もう……私は莉緒って呼んでいるし、敬語を使ってないのに……。」


真瀬莉緒

「あ……。」


星野シキア

「ねえ、私のわがままに付き合って。」


真瀬莉緒

「……何ですか?」





星野シキア

「私のことを名前で呼んで。」




真瀬莉緒

「…………。」


星野シキア

「……ね、莉緒。」


真瀬莉緒

「わかりました。……シキアさん。」


星野シキア

「ふふ……ありがとう。」


僕たち2人はしばらくこの場所でさらに曲に手をつけ、練習をした……



六郭星学園 Kクラス教室



翌日、シキアさんは久々に教室にいた。笛花先生に謝り、今後のことや作曲のことについて色々と話し合って、笛花先生の承諾を得た。



六郭星学園付近のショッピング街


放課後……僕と来川さんと古金さん。そしてシキアさんの4人でショッピングに行くことにした。


古金ミカ

「……おお!この置き物なかなかのものですな!」


来川ナナ

「ミカ、それゴキブリの置き物。」


古金ミカ

「ええ!?いやいやそんな趣味はないですよ〜」


星野シキア

「ふふ……楽しそうね。」


あれ以来吹っ切れたのかシキアさんも楽しそうな様子が見れる。


古金ミカ

「お、あそこにいるのは……!莉緒の姉さんだ!」


え、姉さん!?


真瀬志奈

「あ、みなさんお揃いで……。あ!シキアもいるのね!良かった……。」


星野シキア

「ええ、志奈……迷惑かけてごめんなさい。」


真瀬志奈

「いいのよ。それより莉緒もよく頑張ったわね。」


真瀬莉緒

「姉さん……。」


真瀬志奈

「私は2人がオーディションに合格できると思っているからね!それじゃあ!」


姉さんは風のように去っていった。


星野シキア

「……志奈のためにも頑張らないとね。」


真瀬莉緒

「はい。もちろん僕も頑張ります!」


来川ナナ

「頑張ってね。」


古金ミカ

「ヒューヒュー!応援してるぞー!」


オーディションが始まるまであと数ヶ月……!

頑張るしかない!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ