第3章 バイオレットグレープ(笹野ユリ編)前編
秋。作曲はとても順調だ。…………けれど、あの獣の騒動以来、生徒会、委員会、共にギスギスしている。僕と笹野さんの関係性は良好ではあるが、生徒会と委員会の長同士の関係は間違いなく崩壊に進んでいる。
いつものように放送委員の仕事し、僕たちは音楽室に行く。
六郭星学園 音楽室
真瀬莉緒
「よし。…………順調ですね。」
笹野ユリ
「そうね。これなら声優さんにも喜んでもらえるわ。」
僕たちの曲は段々と形になって来る。
笹野ユリ
「……………………。」
真瀬莉緒
「……………………。何か、ギスギスしてますよね。生徒会も。委員会も。」
笹野ユリ
「そうね…………。でも、怖いの。」
怖い…………?笹野さんの口から初めて聞く言葉だ。
真瀬莉緒
「それは一体、どういうことですか?」
笹野ユリ
「莉緒くん…………。私は…………。」
すると、音楽室に誰かが入って来た。
真瀬莉緒
「あなたは…………確か、Kクラスの星野さんでしたね。練習ですか?」
入って来たのは星野シキア(ほしの しきあ)さん。なかなかの楽器の演奏の技術を持っている。ここに来たということは何か用があるのだろう。
星野シキア
「別に何も…………。それよりも演奏しているのね。」
笹野ユリ
「ええ。生徒会の依頼でね…………。手伝ってくれるの?」
星野シキア
「放送委員じゃないから私は手伝えないわ。…………それよりもあなた。」
真瀬莉緒
「…………?僕ですか?」
星野シキア
「何故かしら…………はじめましてじゃない気がするの。あなたのことはもちろん知っているけれど…………。もっと親しい関係だった気が…………。気のせいかしら?」
真瀬莉緒
「多分、気のせいですよ…………きっと…………」
そのときだった。
真瀬莉緒
「えっ…………。」
ギギ……ガガ…………。
耳鳴り……?くっ……苦しい……!
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「ぐっ……ああああ…………!」
星野シキア
「えっ…………大丈夫!?」
笹野ユリ
「急いで保健室に!!」
僕はその声で、意識が遠のく…………。
六郭星学園寮 莉緒・シンジの部屋
真瀬莉緒
「うっ…………うーん…………。」
気がつくと、自分の部屋だった。
真瀬莉緒
「あれ?どうしてここに…………?」
中神シンジ
「おい。目が覚めたか?」
真瀬莉緒
「中神さん…………。」
中神シンジ
「保健室のベッドがいっぱいでな。仕方なく、ここに運んだ。」
真瀬莉緒
「そうですか…………ありがとうございます。」
中神シンジ
「構わない。」
そういえば、いつぶりだろうか、中神さんとしっかりとお話ができるのは…………。僕は思い切って、笹野さんのことを聞いてみた。
真瀬莉緒
「中神さん。教えてください。笹野さんとは何かあったんですか?」
中神シンジ
「な、何故それを聞く?」
真瀬莉緒
「どうしても気になるんです。音楽室で言っていました。その…………怖いと。」
中神シンジ
「……………………。」
真瀬莉緒
「お願いします。中神さん。」
中神シンジ
「わかった…………ただし、勝負に勝ったらだ。」
真瀬莉緒
「勝負ですか…………?」
中神シンジ
「決めるのは真瀬だ。やるのか?」
真瀬莉緒
「…………わかりました。やりましょう。」
僕たちは勝負することになった…………。この勝負、負けられない。
勝負の結果は僕の勝ちだった。
真瀬莉緒
「勝ちました。彼女は一体、何があったんですか?」
中神シンジ
「………………笹野は…………。」
僕は中神さんから、笹野さんの秘密を知ることになる…………。
六郭星学園 中庭
真瀬莉緒
「中神さんから聞いたけど…………思ったより重いな。」
僕はそう言うと、気持ちが重くなった。
その瞬間。あたりが眩い光に包まれた。
真瀬莉緒
「な、なんだ!?」
光が消えるとそこには1人の女性がいた。
真瀬莉緒
「あ、あなたは…………?」
虹谷アヤ
「あなたが真瀬莉緒ね。私は虹谷アヤ(にじや あや)。」
真瀬莉緒
「な、何故、僕の名前を…………と、とにかく一体何をしに…………?」
虹谷アヤ
「私はある人物を追っていてね…………。その人物は容疑者なの。」
真瀬莉緒
「よ…………容疑者?一体誰が…………?」
虹谷アヤ
「決まっているでしょ?笹野ユリ。彼女のことを追いかけてるわ。」
真瀬莉緒
「笹野さんが!?一体何故…………?」
虹谷アヤ
「それは…………あなたにとっては後悔するだけよ。」
真瀬莉緒
「それは一体どういうことですか!!」
虹谷アヤ
「あなたには関係ないわ。…………さ、彼女を連れて行くわよ。」
真瀬莉緒
「……………………!」
僕は虹谷という人の前に立ちふさがった。
虹谷アヤ
「一体、何の真似かしら?」
真瀬莉緒
「…………僕はあなたの言うことが信じられません。どうかお引き取り願います。」
虹谷アヤ
「しかしね…………。」
真瀬莉緒
「拒んでも無駄です。僕は信じます。」
虹谷アヤ
「…………仕方ないわね。でもこれで…………また1人…………。」
真瀬莉緒
「…………?それってどういうことですか?」
虹谷アヤ
「それはあなたが後悔をするだけのことよ。では…………またどこかでお会いしましょう。」
虹谷という人はそう言うと、再びあたり一面が真っ白に光る。そして、光が消えると虹谷という人はいなくなっていた。
真瀬莉緒
「な、なんだったんだ一体…………?…………いや、こうしてはいられない。笹野さんのところへ行こう。」
僕は笹野さんを探しに行くことにした。