第2章 黄金色のコロッケを(笹野ユリ編)後編
商店街
商店街に来た僕たちは、放送室に必要なものを手あたり次第買う。
笹野ユリ
「うん…………これで必要なものは買いそろえたわね。」
真瀬莉緒
「そうですね。それじゃあ帰りますか?」
笹野ユリ
「いえ、せっかくだから何か食べて帰りましょう。」
真瀬莉緒
「お、良いですね。何を食べますか?」
笹野ユリ
「そうね…………。この商店街は確か、コロッケが名物だったはず。コロッケを食べましょうか。」
コロッケか…………久しぶりだな。そう思うと食べたくなってきた。
真瀬莉緒
「コロッケ食べましょう!どこにありますか?」
笹野ユリ
「確か…………ここら辺に…………あった。結構並んでるわね。」
真瀬莉緒
「そうですね。並びましょうか。」
僕たちは行列に並び、コロッケを待つ。
ようやく僕たちの順番が回り、揚げたてのコロッケを手に入れた。
コロッケは黄金色した色で美味さのほかに甘みもあり、とても美味しい。
真瀬莉緒
「美味しいですね。」
笹野ユリ
「ええ…………とても美味しいわ。莉緒くんは何のコロッケにしたの?」
真瀬莉緒
「はい。僕は普通のコロッケにしました。笹野さんはカレーですか?」
笹野ユリ
「そうよ。カレーのコロッケ。結構熱いわね。…………食べる?」
真瀬莉緒
「良いんですか?」
笹野ユリ
「うん。ちょっと待ってね。熱いから冷ますわ。ふー…………ふー…………。」
笹野さんはコロッケを冷ましてくれた。
笹野ユリ
「はい。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。」
僕は笹野さんのコロッケを1口食べる。
真瀬莉緒
「うん…………なかなか美味しいです。」
笹野ユリ
「ふふ…………。それは良かった。」
真瀬莉緒
「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか。学園に。」
笹野ユリ
「待って、せっかくだからみんなにもコロッケ買っていきましょう。」
真瀬莉緒
「あ、それ良いですね。それじゃあ、また列に並びましょうか。」
僕たちは列に並び、みんなの分のコロッケを買い、学園に戻った。
六郭星学園 Fクラス教室
柚木アイラ
「ああ、とても美味しいです。」
崎盾ジュン
「うん。買ってくれてありがとう!とても美味しいよ。」
三蜂レンカ
「……………………。」
伊剣タイガ
「三蜂。デートをしてたわけではないんだ。そんなに怒るな。」
三蜂レンカ
「…………わかっているわよ。」
笹野ユリ
「シンジも来ればよかったのに。」
真瀬莉緒
「そうですね…………部屋にいるんじゃないですかね?」
笹野ユリ
「莉緒くん。もし良ければ呼んできてもらえないかしら?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。どなたか一緒についてきてくれませんか?」
伊剣タイガ
「そうか。それなら…………私が行こう。」
真瀬莉緒
「伊剣さん。ありがとうございます。」
僕と伊剣さんは中神さんがいるところへ向かうことにした。
六郭星学園寮 莉緒・シンジの部屋
部屋に入ると案の定、中神さんがいた。茶色いヘッドホンを着けて何かを聞いていた。
中神シンジ
「…………ん?ああ。お前らか。何か用があるのか?」
真瀬莉緒
「まあ…………もし良ければと思い、コロッケを買ったんです。どうですか?」
中神シンジ
「ほう…………。」
真瀬莉緒
「あの、何を聞いていたんですか?」
中神シンジ
「これか…………?別に何を聞いても良いだろ。」
真瀬莉緒
「ああ、そうですね…………。」
伊剣タイガ
「それより、行くぞ。食べるだろう?」
中神シンジ
「仕方ない…………。」
僕らはみんなのいるところへと戻る。
六郭星学園 Fクラス教室
教室に戻ると、姉さんもいた。コロッケを食べている。
真瀬志奈
「ああ。莉緒。コロッケありがとう。」
真瀬莉緒
「うん。みんなに買ってきたからね。姉さんも食べなよ。」
真瀬志奈
「もういただいてるわ。シンジも食べに来たの?」
中神シンジ
「ああ。仕方なくな。」
真瀬志奈
「相変わらずね。」
中神シンジ
「まあ…………な。」
そう言って、中神さんはコロッケを1口かじる。
中神シンジ
「悪くない。」
真瀬莉緒
「良かったです。また買いに行きますね。」
中神シンジ
「ああ…………そのときは。」
真瀬莉緒
「はい。では…………。」
そのとき、学校内のサイレンが鳴る。
真瀬莉緒
「こ、これは…………!」
サイレンに気づいた伊剣さんは真面目な様子になり、全員に指示をする。
伊剣タイガ
「全員!屋上に生徒を避難だ!他の委員会の委員長にも避難誘導を頼む!」
崎盾ジュン
「あ…………了解!」
僕たちは他の生徒を避難誘導をし、屋上へ向かう。
六郭星学園 屋上
屋上に避難した僕たちは、屋上から校庭を見る。
校庭では先生方が、獣のようなものと戦っていた。
あの頼りなさそうな、柿本瑛久先生も戦っている。
柿本瑛久
「うわあああ!こっちにくるなー!!」
真瀬志奈
「柿本先生は相変わらずね…………。」
姉さんがそう言った瞬間、中神さんの怒号が聞こえた。
中神シンジ
「これでわかっただろ!!あの獣を野放しにはできないってことを!!」
伊剣タイガ
「……………………。」
伊剣さんは表情を変えず、無言を貫く。
周りにいた笹野さんが声をかける。
笹野ユリ
「シンジ。やめて。周りに迷惑かかるからそのことは避難解除されたときにして。」
笹野さんがそう言った。
中神シンジ
「ふん…………自分は怖いくせに。」
笹野ユリ
「なっ…………。」
中神シンジ
「どうした?怖気づいてしまったのか?」
笹野ユリ
「くっ…………。」
笹野さんはうなだれてしまう。それを見かねた周りの生徒が中神さんの胸ぐらを掴む。
??
「おい…………。」
中神シンジ
「なっ…………浦川!」
胸ぐらを掴むのはAクラスの浦川アイク(うらかわ あいく)さんだ。中神さんとは知り合いなのだろうか。
浦川アイク
「これ以上、詰問をするのなら今すぐ教員を呼ぶぞ。」
中神シンジ
「ふん…………。仕方あるまい。」
浦川さんは手を放す。中神さんは奥の方へと行った。
笹野ユリ
「アイク…………。」
浦川アイク
「気にするな。あいつはいずれ痛い目に遭う。それよりも大丈夫か?」
笹野ユリ
「ええ。何とか…………。」
浦川アイク
「そうか…………。」
真瀬莉緒
「あの…………笹野さん?浦川さんとはお知り合いで…………?」
僕がそう言うと、浦川さんは僕の目を見てこう言う。
浦川アイク
「そうか…………ユリには今は、君がいるのか。彼女を頼む。」
真瀬莉緒
「えっ…………?」
浦川さんはそう言うとAクラスのところへ戻った。
笹野ユリ
「ごめんなさい。変なところ見せちゃって。」
真瀬莉緒
「いえ、気にしてませんから。」
三蜂レンカ
「……………………。」
三蜂さんは浦川さんを睨むように見ている。
崎盾ジュン
「……………………。」
柚木アイラ
「ジュンくん…………。」
崎盾さんと柚木さんは戸惑っている。
そんな状態で、避難解除された。僕たちは何も言わずに、寮へと戻った。
六郭星学園 音楽室
あれから数日。僕たちは音楽室で1度通しで演奏を始める。
笹野ユリ
「温まるこの曲…………。声優さんにもピッタリ。それに私にも…………。」
演奏が終わると、笹野さんはそう呟いた。
真瀬莉緒
「笹野さん…………。」
僕たちは練習を切り上げて、音楽室をあとにした。