第４章 真っ赤な情熱を持って（崎盾ジュン編）前編
冬。声優さんに歌ってもらう曲はできた。あとは課題で演奏をするだけになった。私と崎盾さんは放課後になると毎日、音楽室で楽曲の練習をしている。
六郭星学園 音楽室
崎盾ジュン
「うん…………良い感じ。さすが志奈さんだよ。」
真瀬志奈
「ふふ…………ありがとうございます。」
練習とはいっても、終始和やかなムードで練習をしていた。
崎盾さんは音楽学校の生徒会長をやっていただけある。呑み込みが早い。
真瀬志奈
「覚えが早いですね。崎盾さん。もしかすると私よりも早いかもしれませんね。」
崎盾ジュン
「そんなことはないよ。ああ見えて、シンジもタイガも楽器が弾けるんだ。おまけに２人とも僕よりも記憶力がすごいんだ。楽器の演奏は２人の方が大雑把ではあるかもしれないけど早いよ。」
真瀬志奈
「そうなんですね。それでしたら今度みんなで演奏会もできたら嬉しいですね。」
崎盾ジュン
「あ、それ面白いね。いつかやろうよ。２人も仲良くできれば良いんだけど…………。」
真瀬志奈
「あれから中神さんどうなりましたか？」
崎盾ジュン
「うん。あれから騒動は落ち着いているけど、シンジは少し暗いね…………。なんとか生徒会の仕事はしているけれど、どこかぎこちないみたいだよ。」
真瀬志奈
「そうですか…………。」
生徒会の仕事は基本的に、伊剣さんと中神さんの２人でやっている。私と崎盾さんは楽曲の作成に専念をするためだ。必要なときに、私たちが駆り出される。それで成り立っていてはいたけど…………。
崎盾ジュン
「気にしないで、ぎこちなくはあるけれどなんとな成り立っているから。」
真瀬志奈
「わかっています。でも心配ですね…………。」
崎盾ジュン
「それじゃあ、生徒会の部屋に行く？タイガも何か仕事を持っているかもしれないし。」
真瀬志奈
「そうですね。最近、生徒会の仕事も疎かになっているかもしれないですし…………行きましょうか。」
崎盾ジュン
「うん。行こうか。２人も歓迎してくれるよ。」
私たちは練習を切り上げて、生徒会の部屋に行くことにした。
六郭星学園 生徒会の部屋
生徒会の部屋に着くと、中神さんと伊剣さんは勉強をしていた。
真瀬志奈
「い、伊剣さん…………？どうして勉強をしてるんですか？」
伊剣タイガ
「ああ。志奈。ジュン。忘れたのかい？期末テストの勉強だよ。」
崎盾ジュン
「あ！…………そうだった。期末テストがあるんだ…………。」
六郭星学園のテストは１年に１回しか行われない。しかもそのテストは１年間に学んだものが出題範囲になっている……つまりはかなり膨大な範囲のテストが行われる。
真瀬志奈
「私たちも勉強しましょう。テストの順位も大切ですので…………。」
崎盾ジュン
「そうだね。急いで勉強しないと…………。」
私たちは部屋にある勉強道具を生徒会の部屋に持ち出し、勉強を始めた。
中神シンジ
「……………………ふぅ。」
中神さんもあのときよりも元気が戻ったのか、勉強に熱心だ。
真瀬志奈
「それにしても…………小腹が空きましたね。」
伊剣タイガ
「そういえば…………そうだな。何か買いに行くか…………。」
そう言って、伊剣さんが立ち上がると日比谷先生が生徒会の部屋に入って来た。
真瀬志奈
「日比谷先生？」
日比谷直輝
「どうやら、私の考えが当たっていたようだな。この品物を渡しに来た。」
真瀬志奈
「これは…………！ハンバーガー？」
日比谷直輝
「小腹が空いていると思ってな…………。迷惑だったか？」
伊剣タイガ
「いえ。とても助かりました。少し息抜きをしようと思っていたので…………ありがとうございます。」
日比谷直輝
「そうか。それなら正解だったな。頑張るんだ。」
崎盾ジュン
「ありがとうございます。僕たち頑張ります。」
日比谷直輝
「何も…………生徒会の顧問だからな。では…………失礼する。」
日比谷先生は生徒会の部屋をあとにする。
真瀬志奈
「さて…………ひとまず食べましょうか。」
崎盾ジュン
「そうだね。いただきます。」
私たちはハンバーガーを食べる。日比谷先生の買ってきたハンバーガーは数量限定のハンバーガーでなかなか買えないくらい人気のあるハンバーガーだ。
真瀬志奈
「美味しい…………。」
私は思わず、呟いた。
伊剣タイガ
「これはなかなか美味しいハンバーガーだな。日比谷先生には感謝しないとな。」
中神シンジ
「ふん…………。」
中神さんは黙々とハンバーガーを食べている。
崎盾ジュン
「あっ、志奈さん。頬にソースが付いているよ。」
真瀬志奈
「本当ですか？…………崎盾さんもソースが頬に付いていますよ。」
崎盾ジュン
「うそ…………。付いていたかー…………急いで拭かないと。」
真瀬志奈
「はい。崎盾さん。」
崎盾ジュン
「あっ…………え？」
私は崎盾さんの頬をハンカチで拭いた。
真瀬志奈
「これで良しですね。」
崎盾ジュン
「……………………。」
真瀬志奈
「…………？どうかしましたか？」
伊剣タイガ
「志奈…………レンカがいたら大変なことになっていたぞ。」
中神シンジ
「全くだ。気をつけろ。崎盾もポーっとしてないで、ハンバーガーを食べろ。」
崎盾ジュン
「あっ…………うん。」
真瀬志奈
「……………………。」
私は恥ずかしくなり、急いでハンバーガーを食べた。
そんなこんなで時間は流れ…………
