第4章 赤い本を読んで(柚木アイラ編)後編
パーティー会場
パーティーには生徒会のみなさんと、姉さん。自分のクラスからは柚木さん。笹野さんと三蜂さんも参加している。
あとは…………周りを見ると、各クラスの有名な人たちがパーティーに参加していた。
でも…………何だろう…………柚木さんもいるけど、何か嫌な感じがしてならない。
真瀬志奈
「…………莉緒。」
真瀬莉緒
「姉さん…………?」
真瀬志奈
「何か…………怖いわ。」
真瀬莉緒
「うん…………実は俺も何か嫌な感じがしてならないんだ。」
真瀬志奈
「どうしよう…………。」
真瀬莉緒
「うん。一旦離れようか。」
僕たちはパーティー会場から離れることにした。
会場の外に出ると、そこには木沢さんがいた。
木沢アカリ
「あっ、真瀬姉弟だ!こんばんはー!」
真瀬志奈
「あっ…………こんばんは…………。」
木沢アカリ
「色々と頑張ったみたいだね。お疲れ様!」
真瀬莉緒
「はい。ありがとうございます。」
木沢アカリ
「私もあいつも…………頑張らないとね。」
真瀬莉緒
「あいつ…………?」
木沢アカリ
「あっ…………うん。なんでもない。とりあえずウチは会場に戻るね!」
そう言って、木沢さんはそそくさと会場に戻った。
真瀬志奈
「どうしよう…………戻る?」
真瀬莉緒
「そうだね。…………挨拶してから帰ろう。」
真瀬志奈
「そうね。じゃあ、行きましょう。」
会場に戻ると、雪谷さんも会場にいた。
雪谷マコト
「あ。お2人とも来てたんですね。」
真瀬莉緒
「雪谷さん!…………はい。ただ、もう少しで戻ろうと思っています。」
雪谷マコト
「そうですか…………柚木さんが社交ダンスの相手を探していましたよ。」
真瀬莉緒
「柚木さんがですか…………?」
雪谷マコト
「踊る相手がいないのでしたら、真瀬さんにと思いましたが…………僕が相手をしましょうか。」
真瀬莉緒
「あっ…………。」
僕は柚木さんのところへ向かおうとしている雪谷さんの腕を思わず掴んでいた。
真瀬莉緒
「す、すみません。僕が柚木さんの相手をさせていただきます。」
雪谷マコト
「あっ、本当ですか!…………柚木さんもきっと喜びますよ。」
真瀬莉緒
「はい。柚木さんのご相手をさせていただきます。」
雪谷マコト
「楽しみにしています。それでは…………僕はこの辺で…………。」
そう言うと雪谷さんは、クラスメイトのところへ戻った。
真瀬志奈
「じゃあ、莉緒。アイラのところへ行きなさい。待っているはずだから。」
真瀬莉緒
「うん。それじゃあ行くよ…………。」
僕は柚木さんのところへ向かう。
柚木さんがいた。笹野さんと三蜂さんもいる。
笹野ユリ
「あ、莉緒くん。もしかして…………?」
笹野さんは嬉しそうにはやし立てる。
三蜂レンカ
「…………アイラのことよろしくね。」
三蜂さんも嬉しそうにしている。
柚木アイラ
「莉緒さん…………お相手をしてくれるんですか?」
真瀬莉緒
「もちろんです。よろしくお願いいたします。」
僕は柚木さんの手を取る。それと同時に、音楽が鳴る。
僕たちは踊り始める。
…………どこかぎこちない。けれど、とても楽しい。
真瀬莉緒
「どうですか…………?」
柚木アイラ
「はい…………とても…………楽しいです。」
真瀬莉緒
「それなら良かったです…………。」
僕たちは楽しく踊り…………いつの間にか苦しかったパーティーは楽しく終わることになった。
そんなパーティーから数日が経ち…………
六郭星学園 大講堂
いよいよ、課題発表当日になった。課題はKクラスから1ペアずつ発表していき、そこからJクラス、Iクラスといき、Sクラスと回っていく。1ペアずつなので3日間に分けて発表をしていく。
そして今日はFクラスが発表していく。
Fクラスのトップを飾ったのは三蜂さんのペアだ。
三蜂さんのペアは戦国武将の甲冑を再現した模型を作った。
伊剣タイガ
「ほう。なかなかやるじゃないか。」
少しだけ伊剣さんから驚いた様子が見れた。
中盤に入ると次は笹野さんのペアが発表の時間になった。
笹野さんのペアはマジックショーを披露した。
中神シンジ
「……………………やるじゃないか。」
中神さんも素直に褒めている。
そして終盤に入る……そしてFクラスのトリを飾ったのは僕たちだ。
ステージ裏で僕たちは準備をする。
真瀬莉緒
「いよいよですね…………。」
柚木アイラ
「はい…………でも、これまでのことを考えればきっと上手くいくはず…………。」
真瀬莉緒
「柚木さん…………。」
柚木アイラ
「この学校を卒業して…………謝恩会で声優さんに歌ってもらったあと…………お話があります。」
真瀬莉緒
「それって一体…………?」
柚木アイラ
「今はまだ言えないです…………けど、大切なことです。…………行きましょう。」
真瀬莉緒
「…………わかりました。」
僕たちはステージに立つ。そして、楽器を持つ。
真瀬莉緒
「では…………行きましょう…………。」
柚木アイラ
「はい。」
僕たちは演奏を始める。
演奏を終える、他の人の反応は…………?
男子生徒A
「とても良い曲だ…………!」
女子生徒B
「良かった……!心に響きました!」
僕たちは拍手喝采に包まれる。そうか……やったんだ……!
愛森宇蘭
「良かった…………。」
日比谷直輝
「かけがえのない教え子を手に入れたな。」
愛森宇蘭
「ええ…………本当に。」
ステージ上から僕たちはみんなにお礼をして、ステージから降りて行った。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。柚木さんのおかげでとても良い曲ができました。」
柚木アイラ
「莉緒さん…………本当にありがとうございました。そして…………これからもよろしくお願いします。」
真瀬莉緒
「…………はい!」
こうして、大切な課題発表の日は幕を閉じた。
数週間後…………学園生活最後のイベントが始まる。
六郭星学園 大講堂
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
愛森宇蘭
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
愛森宇蘭
「真瀬莉緒。」
真瀬莉緒
「はい。」
始めに男子が呼ばれる……そして、みんなの名前もそれぞれ呼ばれる。
愛森宇蘭
「笹野ユリ。」
笹野ユリ
「はい。」
愛森宇蘭
「三蜂レンカ。」
三蜂レンカ
「はい。」
愛森宇蘭
「柚木アイラ。」
柚木アイラ
「はい…………。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
愛森宇蘭
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
三蜂レンカ
「みんな同じ大学に進学するのね…………。」
笹野ユリ
「しかも期末テストの上位50人が同じ大学なんて…………。」
柚木アイラ
「不思議ですね…………。」
笹野ユリ
「さ、お待ちかねの謝恩会ね。」
柚木アイラ
「はい…………私たちの楽曲。楽しみにしていてください。」
三蜂レンカ
「ええ。待っているわ。」
僕たちは寮に戻り、謝恩会の会場に向かう。
謝恩会会場
愛森宇蘭
「それでは謝恩会を始めます。みなさん楽しんでください。」
愛森先生の挨拶で、謝恩会が始まる。
真瀬莉緒
「いよいよですね…………。」
僕は声優さんが歌う時間まで楽しく過ごしていた。
でも心のどこかで、パーティーに不安を感じていた。
柚木アイラ
「莉緒さん。」
真瀬莉緒
「柚木さん?」
不安に感じていた僕は、柚木さんに声をかけられた。
柚木アイラ
「大丈夫ですよ…………。ほら、始まりましたよ。」
真瀬莉緒
「そうですね。僕たちの曲…………楽しみです。」
声優さんがステージに上がる。そして、何かを思うように口を開く。
女性声優
「聞いてください。彼女の気持ち。彼を想う…………この歌を!」
僕たちの作った曲が流れる…………。
曲が終わり、学生たちが拍手をする。
僕はそれどころじゃなかった。…………この歌詞…………もしかして…………。
柚木アイラ
「来てください!」
真瀬莉緒
「えっ…………ああ…………ちょっと…………!」
僕は柚木さんに引っ張られながら、謝恩会会場を飛び出す。
会場の外に出ると、柚木さんの歩く足が止まる。
真瀬莉緒
「柚木さん…………?」
柚木アイラ
「莉緒…………くん。」
真瀬莉緒
「ゆ…………柚木さん?」
初めて「莉緒くん」と呼んでくれた。そして、カバンから赤い本を取り出しページをめくる、柚木さんは重い口を開く。
柚木アイラ
「少女は…………少年に恋をする。そして、その恋は恵まれる。」
真瀬莉緒
「えっ…………それって、その本の内容ですか?」
柚木アイラ
「はい。…………その…………私は…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
柚木アイラ
「莉緒くん…………恋…………しました。…………私じゃ…………ダメですか?」
真瀬莉緒
「柚木さん…………。」
柚木アイラ
「お願いします…………。どうかこの気持ち…………受け取ってください。」
真瀬莉緒
「…………僕で…………良いんだね。」
僕は…………断る理由なんてなかった。
柚木アイラ
「莉緒くん…………!」
真瀬莉緒
「よろしく…………アイラ。」
僕たちは抱きしめ合い。柚木さんは一筋の涙を流した。
虹谷アヤ
「ハズレね…………でも、今までにないことが起きたわ…………。まずいわね。急いで他を当らなくちゃ…………。」
柚木アイラ編 完




