第1章 白群の一冊(柚木アイラ編)後編
六郭星学園 Fクラス教室
教室に入ると、柚木さんがいた。
真瀬莉緒
「おはようございます。柚木さん。」
柚木アイラ
「ああ…………真瀬さん。いえ…………莉緒さん。…………おはようございます。」
真瀬莉緒
「…………?どうかしましたか?」
柚木アイラ
「…………実は、図書委員のことで悩んでいて…………。」
真瀬莉緒
「図書委員で?」
説明を聞くと、今度、卒業式のあとに行う、謝恩会で声優さんに曲を提供して歌ってもらうことになったのだが、その担当は図書委員になったらしく、引き受けたものの柚木さんは楽器を演奏できるだけで、作曲のさの字も知らないため何から手を付けたら良いのか悩んでいたみたいだ。そういうことなら…………。
真瀬莉緒
「僕、協力しましょうか?」
柚木アイラ
「えっ…………良いんですか?」
真瀬莉緒
「はい。良いですよ。」
柚木アイラ
「そういうことなら、図書委員に入らないといけませんけど…………?」
真瀬莉緒
「…………えっ!?図書委員ですか?」
柚木アイラ
「はい…………図書委員だけの依頼ですから…………部外者がかかわるわけにもいかないんです。大丈夫ですか?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。」
僕は考え込んだが、いまさら断ることもできない。僕は引き受けることにした。
真瀬莉緒
「わかりました。よろしくお願いします。」
柚木アイラ
「ありがとうございます…………。では…………放課後、音楽室に行きましょう。」
真瀬莉緒
「はい。では、また放課後で!」
そう言って、僕は放課後を待った。
六郭星学園 音楽室
待ちに待った、放課後になった。僕は柚木さんと音楽室に来た。
真瀬莉緒
「さて…………では、柚木さんがどのくらい楽器を弾けるのか見せてください。」
柚木アイラ
「はい…………。では。」
柚木さんは楽器を手に取り、演奏を始める。
演奏を始めた瞬間、僕は衝撃が走った。
真瀬莉緒
「す…………すごい。」
柚木さんの演奏はとても素晴らしいものだった。才能があるのだろう。
柚木アイラ
「ど、どうでしょうか?」
真瀬莉緒
「す、すごいです。…………才能ありです!」
柚木アイラ
「ありがとうございます…………そう言っていただけると幸いです。」
真瀬莉緒
「これなら作曲もスムーズに進みます。…………そうですね…………この曲も課題に使いましょう!」
柚木アイラ
「課題ですか?そうですね…………良いと思います。」
真瀬莉緒
「はい!では今日は切り上げますか。」
柚木アイラ
「そうですね…………あっ、莉緒さん。…………せっかくなら図書室に行きませんか?」
真瀬莉緒
「良いですね。僕も図書室は気になりますし、今後お世話になりますので、行きましょうか。」
柚木アイラ
「ありがとうございます…………。じゃあ、行きましょう。」
僕たちは楽器を片付けて、図書室へと向かう。
六郭星学園 図書室
僕は柚木さんと初めて会ったとき以来の図書室に来た。
改めてみると、図書室も広い。音楽室もとても広いし、楽器の数も豊富だから、本の数も相当なのだろう。
柚木アイラ
「それでは、せっかくなので図書委員の仕事の説明をしますね…………。」
真瀬莉緒
「あ、はい…………。よろしくお願いします。」
僕は柚木さんに図書委員の仕事を1から10まで教えてもらった。
教えてもらったあと、柚木さんは1冊の本を開いた。
その本はとても赤い。とても鮮やかな赤色だ。
真瀬莉緒
「その本…………好きなんですか?」
柚木アイラ
「えっ…………この本ですか?…………色が好きなんです。」
真瀬莉緒
「色ですか…………?」
柚木アイラ
「はい。赤色がとても好きで…………制服のリボンも赤色にしているんですよ。それくらい赤が大好きなんです。」
真瀬莉緒
「そうなんですね。赤色は僕も好きです。気が合いますね。」
そう言うと柚木さんはとても嬉しそうな顔をしていた。
柚木アイラ
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです…………。」
真瀬莉緒
「あ、本当ですか。すみません、何か…………。」
柚木アイラ
「いえ、別に…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
柚木アイラ
「……………………。」
互いに無言が続いてしまい、僕はなんとなく薄い青い1冊の本を手に取る。
真瀬莉緒
「いやぁ…………それにしても色んな本が…………あ…………る。」
手にした1冊の本はタイトルにこう書いていた。
――月川一家交通事故事件まとめ――
柚木アイラ
「それは…………!」
真瀬莉緒
「ああ…………すみません。片付けます。」
僕は本をしまう。
柚木アイラ
「今日は切り上げましょう…………。明日また課題のやり取りをしませんか?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。では、失礼します。」
僕たちは図書室をあとにし、今日から住む寮に向かう。
六郭星学園寮
真瀬莉緒
「ここが…………僕の部屋か…………。」
パンフレットによると、部屋は広くリビングとベッドルームが2部屋あり、両方防音になっているらしいのでベッドルームからもう一つのベッドルームからは何も聞こえない。この部屋に2人1組というのがこの寮のルールらしい。
真瀬莉緒
「崎盾さんはまだかな…………?」
僕は部屋のドアを開ける。
崎盾ジュン
「ああ。莉緒くん。こんばんは。」
真瀬莉緒
「崎盾さん。こんばんは。」
僕は軽く挨拶をする。
崎盾ジュン
「日比谷先生が言っていたけど、やっぱり君が部屋のパートナーか。改めてよろしく!」
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いします。」
崎盾ジュン
「日比谷先生から聞いたよ。アイラと課題のパートナーになったんだね。」
真瀬莉緒
「あ、はい…………。おまけに図書委員会にも入りました。」
崎盾ジュン
「へぇ…………だとしたら、作曲も協力するの?」
真瀬莉緒
「はい。そのつもりです。…………それに、今日なんとなくですが声優さんに合った曲ができた気がします。…………ちょっと聞いてもらえますか?」
崎盾ジュン
「お。莉緒くんの作曲か…………聞く価値はあるね。じゃあ、早速聞かせてもらうよ。」
真瀬莉緒
「はい。では…………。」
僕は早速、楽器を取り出して演奏を始める。
演奏を終えた僕は、崎盾さんの顔を見る。すると、驚いた顔をしていた。
崎盾ジュン
「すごいや…………。さすが莉緒くんだよ。真瀬姉弟は天才だね。」
真瀬莉緒
「…………いや、そこまで言われると…………照れますね。」
崎盾ジュン
「この楽曲、アイラの得意な楽器を加えているよね。これならアイラも携われるね。」
真瀬莉緒
「はい。柚木さんのことも考えて作りました。柚木さんも声優さんの作曲に前向きですし、声優さんにも合う楽器だと思うので…………。」
崎盾ジュン
「…………そうだね。頑張って。きっとアイラも協力してくれるよ。」
真瀬莉緒
「はい!ありがとうございます。」
僕は疲れた身体を癒すため、眠りにつくことにした…………
六郭星学園寮 志奈・アイラの部屋
柚木アイラ
「ある日。若い少女は…………運命の人に会った。その少年は天才と呼ばれていた…………。こんな少女と釣り合うのかと、少女は悩み…………苦しんだ。」




