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colorful〜rainbow stories〜  作者: 宮来 らいと
第3部 土原ガク編
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第4章 臙脂色の手袋(土原ガク編)後編

六郭星学園 応接室



今日は声優さんがこちらに来てくれることになった。この応接室で音源を聞いてもらい、声優さんに判断してもらうことになる。


真瀬志奈

「いよいよですね。緊張していますか?」


土原ガク

「ええ。あの声優さんは有名ですからね。こうして会えるのが不思議でたまりません。」


真瀬志奈

「私たちの楽曲、どう受け止めてくれるでしょうか?」


土原ガク

「それは…………声優さん次第だと思います。」


緊張をほぐすために会話をしていると、応接室のドアをノックする音が鳴る。


ドアが開くと、柳原先生と声優さんが入って来た。


私たちはすかさず立ち上がる。


真瀬志奈

「本日はお越しいただきありがとうございます。私は真瀬志奈と言います。こちらにいるのは土原ガクで、共に楽曲の制作に携わっていただきました。」


土原ガク

「はじめまして。土原ガクと言います。よろしくお願いします。」


さすがにここでは真面目な性格で行くみたいだ。


声優さんも頭を下げ、椅子に座る。


そして、声優さんから予想外の言葉が出る。


真瀬志奈

「えっ…………歌詞ですか?」


しまった。歌詞のことを考えていなかった。私は思いがけず土原さんを見る。


土原ガク

「歌詞はこちらです。ご査収の程よろしくお願いいたします。」


土原さんが歌詞を書いていたようだ。歌詞の内容は私は見ていないが、声優さんが歌詞を見ている。無理に私が見ることはない。


今度は声優さんは音源を確認したいと言った。


真瀬志奈

「は、はい。音源はこちらです。こちらもご確認の程よろしくお願いいたします。」


私は音源を流す。声優さんは歌詞を見ながら音源を聞いていた。


何度も何度も繰り返して聞いている。あまりお気に召さないのだろうか…………?


声優さんは深いため息をついて…………笑ってくれた。


真瀬志奈

「それじゃあ…………!」


声優さんは頷いてくれた。


土原ガク

「ありがとうございます…………!」


そのあとは軽い雑談をし、打ち合わせが終わった。


応接室から出ると、土原さんは声優さんに話しかけられ、質問に色々と答えていた。


私は土原さんに先に戻るように言われたため、寮に戻る。


戻る際に土原さんの方を振り向くと、土原さんと声優さんはとても楽しそうな雰囲気だった。


真瀬志奈

「良かった…………。」


私は安心して寮へ戻ることにした。



六郭星学園寮 志奈・アサヒの部屋



真瀬志奈

「戻りました…………。」


水崎アサヒ

「おお、おかえり!ちょうど良い報告を言おうと思っていたんだ。」


真瀬志奈

「良い報告ですか?それってもしかして…………?」


水崎アサヒ

「ああ、声優さんに曲を歌ってもらえることになった!」


私は、拍手をした。こっちまで嬉しくなった。


真瀬志奈

「おめでとうございます!こっちまで嬉しいです!」


水崎アサヒ

「ありがとう。…………で、志奈の方はどうだったんだ?」


真瀬志奈

「はい!こちらも声優さんに歌っていただけることになりました!」


水崎アサヒ

「そうか!それなら良かった…………一時は心配も強かったが、良かった…………お互いに良かった。本当に。」


真瀬志奈

「はい。本当に…………。」


私たちは笑いあった。色々あった、1年間だったが安心して卒業できる。


私は心から安心をして、眠りについた。


そして…………かれこれ数週間が経ち、大事な行事が始まる。



六郭星学園 大講堂



SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。


凪野雪緒

「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」


卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。


1人1人名前が呼ばれていく。


凪野雪緒

「土原ガク。」


土原ガク

「はーい!!」


凪野雪緒

「雪谷マコト。」


雪谷マコト

「はい。」


凪野雪緒

「綿垣キョウゴ。」


綿垣キョウゴ

「はい。」


仲の良かったみんなが呼ばれていく。

そして私も呼ばれる。


凪野雪緒

「真瀬志奈。」


真瀬志奈

「はい。」


そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……






凪野雪緒

「以上で卒業式を終了いたします。」


そして、あっという間に卒業式が終わる。

本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。


ただ……唯一の救いは……。


綿垣キョウゴ

「みんな同じ大学に進学するのか…………。」


土原ガク

「まさかだよねー!!」


雪谷マコト

「しかも期末テストの上位50人が同じ大学とは…………。不思議なものですね。…………でも、よろしくお願いします。」


綿垣キョウゴ

「今日か…………2人の曲を声優さんが歌う日は。」


真瀬志奈

「はい。今日の番組で歌うことになっています。」


雪谷マコト

「楽しみにしています。僕たちは別の部屋で聞きますから、2人の時間を有効に使ってください。」


土原ガク

「ありがとー!楽しみにしててね!」


そして、夜が更けて…………



六郭星学園寮 莉緒・ガクの部屋



私と土原さんは莉緒の部屋にいる。声優さんの歌っているところを見るためにだ。


真瀬志奈

「…………ドキドキしますね。」


何度も楽曲を提供してきた私でも、提供した楽曲をアーティストが歌う場面は、なかなか慣れないものだ。


土原ガク

「タイムテーブルでは、次が声優さんの番になるはずですが…………。その前に、渡しておきたいものがあります。…………こちらを。」


真瀬志奈

「これは…………!」


渡されたのは臙脂色の手袋だった。


土原ガク

「雪だるまを作っていたとき、使っていた手袋…………あれは僕が編んだ手袋なんです。なので…………志奈さんの分も作りました。時期はもう過ぎていますが、受け取ってください。」


真瀬志奈

「ありがとうございます。お言葉に甘えて…………。」


私は手袋を受け取った。それと同時に、声優さんの曲が始まる。


男性声優

「大切な方へ紡ぐ音楽を…………聴いてください!!」


私たちが作った音楽が流れる…………。



音楽が終わり、観客のみなさんが拍手をする。受け入れてくれたようだが…………この歌詞…………。


真瀬志奈

「土原さん…………この歌詞…………。」


土原ガク

「志奈さん…………。」


土原さんは片膝をつき、今まで以上に真剣な眼差しで語る。


土原ガク

「あのお花見のとき、桜の木を見た僕は、変われるかと迷っていました。そこに現れたのは志奈さんでした。志奈さんは僕を変えてくれました…………。」


真瀬志奈

「土原さん…………。」


土原ガク

「僕は…………あなたの近くでいたい。あなただけは失いたくない。こんな僕を…………受け入れてくれますか?」


その答えは迷うことはなかった。


真瀬志奈

「もう…………断るわけないじゃない。」


土原ガク

「志奈さん!」


真瀬志奈

「ガク…………これからもよろしく。」


土原ガク

「はい!」


土原さんは無邪気な笑みを浮かべた。




虹谷サイ

「彼は…………ハズレか。まあ良い。まだいるはずだ…………!他をあたるだけだ…………!」


土原ガク編 完

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