第4章 臙脂色の手袋(土原ガク編)前編
冬。あのパーティーから数週間。私たちは声優さんのオーディションと課題を兼ねた作曲を練習している。作曲以外にも、期末テストの対策のため、勉強をしている。
今日は勉強を休み、作曲の方に取り組むことにした。
六郭星学園 音楽室
真瀬志奈
「なかなかやりますね。さすがです。土原さん。」
土原ガク
「いえ、志奈さんの演奏技術もとても素晴らしいです。さすがとしか言いようがありません。」
真瀬志奈
「そんな…………ありがとうございます。」
私とのやり取りはすっかり真面目な性格で話をしている。最初は戸惑いもあるものの最近はすっかり慣れて、話をしている。
声優さんのオーディションの楽曲の制作は間違いなく進んでいる…………。
真瀬志奈
「もうすぐですね。声優さんのオーディション。土原さんも頑張って行きましょう!」
土原ガク
「ええ。もちろんです。僕も頑張って行きますので、志奈さんも無理せずに頑張って行きましょう!」
真瀬志奈
「はい!」
その日はお互いに健闘を称えあい、部屋へと戻ることにした。
六郭星学園寮 志奈・アサヒの部屋
真瀬志奈
「戻りました。」
水崎アサヒ
「ああ、お疲れ。今日は作曲の方は順調だったのか?」
真瀬志奈
「もちろんです。でも、帰ってきたらすぐに勉強をするのでここのところ疲れがたまって来てます…………。」
水崎アサヒ
「確かに、ここ最近は疲れる機会が多いな…………。」
真瀬志奈
「はい…………テストの範囲が多くて…………。」
六郭星学園のテストは1年に1回しか行われない。しかもそのテストは1年間に学んだものが出題範囲になっている……つまりはかなり膨大な範囲のテストが行われる。
水崎アサヒ
「勉強するか…………くよくよしていちゃいかない。頑張ろうか。」
真瀬志奈
「はい…………頑張りましょうか。」
そう言って、私たちは勉強に取り組む。
そして…………数週間後。
六郭星学園 Bクラス教室
テスト当日。
凪野雪緒
「今日は期末テストだ!みんな悔いのないように勉強したよな!頑張れよ!」
クラスメイトたちが「はい。」と答える。
私も頑張らないと……!
凪野雪緒
「それでは……テスト開始!」
その言葉で私は裏返したプリントをめくる……
テスト終了のチャイムが鳴る。
私のプリントは空白欄は無く、出来る限りの答えを出した。そして全員が提出した……
テストの結果は大広間にて貼り出される。1位から最下位まで名前が載る。貼り出されるまでの間、ドキドキが止まらない。
そして……結果発表当日。
真瀬志奈
「いよいよね…………。」
土原ガク
「そうですね…………。」
そして、テストの順位が貼り出される……
生徒の人数は700人前後……私たちの結果は……。
真瀬志奈
「50位……!なかなかの順位ね……!」
700人中の50位。少なくとも低くはないはず……!私は安堵した。
土原さんの結果は…………?
土原ガク
「15位!なかなかの順位だねー!!」
土原さんは、綿垣さんや雪谷さんに声をかける。
綿垣キョウゴ
「良かったな。」
雪谷マコト
「全くです。」
土原ガク
「えへへ…………。」
一方で2人の結果は…………?
綿垣キョウゴ
「俺は…………9位か。ギリギリの1桁順位だな。」
雪谷マコト
「3位か…………!銅賞ですね。」
どうやら2人とも良い順位だったみたいだ。
真瀬志奈
「あとは、作曲だけですね。」
土原ガク
「うん!いよいよだね…………。」
あとは作曲の練習のみ…………頑張ります!
六郭星学園 音楽室
あれから数日後。私たちは作曲の練習を繰り返し、今日に至る。そして今日…………ついに…………
真瀬志奈
「完成しましたね!」
土原ガク
「ええ。これならきっと合格できますよ。」
真瀬志奈
「あの…………。そういえばなんですけど…………。」
土原ガク
「何かありましたか?答えれる範囲内なら何でもお答えしますよ。」
真瀬志奈
「どうして今回、声優さんのオーディションに応募しようとしたんですか?」
土原ガク
「ああ、それはアサヒが関係しているんですよ。」
真瀬志奈
「水崎さんがですか?どうしてですか?」
土原ガク
「梶木…………アサヒはその梶木っていう人に希望を奪われました。詳しくは言えませんが、僕はその敵討ちをしようと思って応募しようと考えました。」
真瀬志奈
「そうだったんですね…………。水崎さんにそんな過去があるなんて…………。」
土原ガク
「でもアサヒは莉緒のおかげで随分と救われたみたいですよ。」
真瀬志奈
「本当ですか!?…………そう…………莉緒が…………。」
土原ガク
「ええ。莉緒は色々と頑張ってくれて、アサヒは莉緒と作曲をすることになりました。もちろん僕たちとは別の声優さんのオーディションに応募したみたいですけど。」
真瀬志奈
「つまり、ライバルではないということですね。」
土原ガク
「はい。お互いに良い結果を報告できるように頑張りましょう。」
真瀬志奈
「はい!」
そんな話をしていると、莉緒が突然、音楽室に入って来た。それもとても勢いよく。
真瀬莉緒
「姉さん!大変だよ!」
真瀬志奈
「莉緒?どうしたの?」
真瀬莉緒
「姉さんたちが受けるはずだった、声優さんのオーディション…………。中止だって。」
真瀬志奈
「中止!?…………一体なんで…………?」
真瀬莉緒
「あのオーディションの審査員に梶木って言う人がいて、その人が…………逮捕された。」
真瀬志奈
「そんな…………!?」
土原ガク
「い、今までの努力が…………!?」
真瀬莉緒
「ガク…………。」
土原ガク
「そんな…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」




